グローバルスタンダード

近畿財務局長 大村 雅基

 
  新年おめでとうございます。一言年頭のご挨拶をさせて頂きます。タイトルを「グローバルスタンダード」としましたが、直接会計基準に関係する話ではありません。より幅広く、日本社会・経済の改革と国際社会の問題を考えてみたいと思います。

 「グローバルスタンダードが全てではない」という意見がよくあります。確かに、「グローバルスタンダード」とは何かが明確でない場合も多く、「日本には日本のやり方がある」という面もあります。しかし、これは「日本が独りよがり」であってよいという事を意味するものではありません。以下の三つの点が重要だと思います。
 第一は、現在の改革は、これまで閉鎖的な社会の下で成り立っていた系列や終身雇用制等に象徴される日本型システムを、国境を越えた経済活動が拡大する中で、より開放的なものに変えていく側面があるという事です。従って、従来のシステムを全面的に否定するものではありませんが、日本以外の様々なプレーヤーにも納得できる、透明性・柔軟性の高いものにしていく必要性は高まっています。これはまた、日本経済の国際的な競争力を高めていく上でも必要です。企業の財務内容についても、国内外に分り易く、信頼性の高いものとしていく事が重要です。
 第二に、日本の独自性を維持する事が望ましい場合があるとしても、国際的な係わりが大きい場合には、その合理性を明確に説明する必要があります。もとより、政府がこういった役割りを果たす面が大きいのですが、民間企業・金融機関、公認会計士等のプロフェッショナルが参加してのシンポジュウム等も少なくありません。国際的な流れと異なった考え方をとる場合ほど、その説明の必要性は高いと言えます。しかし、現下の経済困難もあり、日本の民間セクターからの発信は低下しているのが現状ではないでしょうか。勿論、日本の主張の説得性を高める為には、現実の結果が重要です。
 第三に、日本社会・経済が「変わるリスク」と「変わらないリスク」を考える必要があります。「グローバルスタンダード」批判の多くは「アングロサクソンスタンダード」批判です。しかし、事の当否は別にして、日本がアメリ カのように非常に競争的な社会にまで変化する可能性は小さいと思えます。現実には、日本社会が現状から殆ど変化しないリスクの方が高いのではないでしょうか。確かに、改革の行く先やスケジュールは慎重に考えねばなりませんが、改革を行わないで「沈没する船に止まってしまう」リスクも考慮されねばならないと思います。
 日本の改革は正念場を迎えています。この壁を乗り越えるキーワードは「信頼」でしょう。ビジョンへの「信頼」、その実現の仕方への「信頼」。グローバルスタンダードへの疑問も、これが単に改革への抵抗に堕してしまうのでは、問題の解決になり得ません。
現状を如何に打破するか、その為の合理的解決方法があってこそ、これがグローバルスタンダードであろうとなかろうと、建設的な答えとして広く受け入れられていくのではないでしょうか。社会の様々な分野で政府が「信頼」出来る明確なビジョンを打ち出していく事が強く求められています。同時に、ビジョンの実現に向けてルールの適用への「信頼」の重要性も高まっています。とりわけ企業会計の分野では、公認会計士の皆様方が社会の「信頼」向上のために担われる役割が飛躍的に増大しております。会員の皆様方の益々のご活躍を祈念して私の新年の御挨拶とさせて頂きます。