特別投稿

 

「会計プロフェッションのあるべき姿と今後の対応(中間報告)」をどう受け止めるか

本部副会長 澤田 眞史

 
1. はじめに
 平成16年1月15日付けで公認会計士制度(会計専門職)プロジェクトチームは、「会計プロフェッションのあるべき姿と今後の対応」と題した中間報告を提出し、理事会の承認を得ました。この報告書は、JICPAニュースレター2月号に掲載するとともに、協会のホームページのニュースフラッシュに掲載し、会員だけではなく、一般社会に向け公表しています。
 この報告書の前文に、この報告書の狙いや意味するところを記述しましたが、近畿会会報部から、「今なぜ、この報告書が出されたのか。」、さらに「協会本部は何を期待しているのか。」について、その背景を踏まえて説明して欲しいという依頼がありました。この報告書を熟読していただければ、協会本部が抱いている危機感や使命感がお判りいただけるとは思いますが、この問題は我々公認会計士の将来像に直結する問題であり、近未来に議論が表面化することは必至であることから、重複を恐れず補足的なメッセージを送りたいと思います。
2. 公認会計士の使命規定を巡って
 昨年6月6日に改正公認会計士法が公布されましたが、今回の法改正はあくまで公認会計士監査制度の充実・強化に主眼が置かれました。すなわち、米国におけるサーベンス・オックスリー法の影響を受け、監査人の独立性の強化と協会及び監査事務所に対する監視・監督体制の整備が緊急に求められたものです。本来であれば、会計領域における監査と税務の位置づけ、監査の本質論、公認会計士の業務範囲の見直しなど、根本的な事項の検討を先行させるべきでした。しかし、これらの事項はどうしても公認会計士と税理士の職域問題に発展するため、今回の法改正の議論においては一切触れないという基本的合意の下、法改正の議論が進められました。協会は、国際的な監査制度の充実・強化の潮流を無視することはできず、一旦、わが国の会計プロフェッション制度の人的な側面は切り離し、基本的な合意を遵守し、法改正に真摯に対応してきました。
 ところで、今回の法改正において、改正法第1条に「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資家及び債権者の保護等を図り、もって国民経済の発展に寄与する。」という崇高な公認会計士の使命が明記されました。公認会計士法改正案は、国会において衆・参両院の委員会で審議されましたが、この使命規定についての質疑が全体の3分の2を占めました。特に、「会社等の公正な事業活動」という表現に質疑が集中しました。この表現に関して、この法案に影響を与えた自由民主党・金融調査会「企業会計に関する小委員会」(小委員長:塩崎恭久議員)における議論を少し紹介します。まず、会社等の等ですが、公認会計士に対する公的分野での貢献が期待されたもので、すべての事業体を対象とした公認会計士の活動が念頭にあります。一方、「公正な事業活動を図る」という表現を捉えて、公認会計士は会社の味方なのかという指摘がなされましたが、財務情報の信頼性を確保することによって、事業活動の公正化を支援することが、投資家及び債権者の保護等の前提として重要であるとの認識がそこにあります。
 ところが、衆・参両院の委員会での質問の趣旨は、そのような認識を無視し、「会社等の公正な事業活動」という表現をもって、公認会計士の業務範囲の拡大を意図したものかというものであり、この表現を削除すべきという修正案が民主党から出されました。この修正案は否決されましたが、このような圧力は相当なもので、ほとんど与野党に共通するものであり、一筋縄ではいかない政治圧力を感じました。
3. 会計プロフェッションの制度論はすでに火が点いている
 協会には、ここ十年来猛烈な勢いで変化する経済環境の下、我が国における会計・監査制度の環境整備のため、その全精力を尽くして社会に貢献してきたという自負があります。しかし、いわゆる会計プロフェッションの制度論については、目の前の課題を優先するため、明確な対外的な意思表示や具体的な行動は控えてきたことも事実で、一般会員の中から、不満の声が聞かれることもあります。ただ、上述からお気づきのように、今回の法改正の議論から切り離されたはずの「会計プロフェッション制度の人的な側面」の議論にはすでに火が点いています。
 その背景には、(イ)今回の法改正に基づく公認会計士試験制度の改革と(ロ)会社法制の現代化への動向があります。
 まず、(イ)に関して、今回の法改正における衆議院財務金融委員会において、「公認会計士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」が提出され、次の3点について「十分配慮すべきである」という附帯決議が採択されています。
「一 公認会計士試験の見直しの趣旨に鑑み、行政として、公認会計士の規模について一定の目標と見通しをもった上で、同試験制度の管理・運営に当たるよう努めていくこと。」
「一 公認会計士試験における「租税法」科目に関し、その出題については、公認会計士となる資質を検証するための試験の一部であることを踏まえ、適切に対応されるよう留意すること。」
「一 公認会計士と税理士に関して、その試験制度における取扱いについては、規制緩和の観点をも踏まえ、引き続き検討すること。」
 この附帯決議が、どのような目的をもって、どのような背景をもつ団体からの要求によるものかは、懸命な会員諸兄には十分推測が付くものと思います。
 次に(ロ)に関して、日本税理士会連合会は法制審議会会社法部会から公表された「会社法制の現代化に関する要綱試案」に対し、「小会社における計算書類の適正担保制度のスキーム」を作成し、多くの税理士の署名を添付し、法務省へ提出しています。この内容は、とても納得できるようなものではありませんが、多数の署名の圧力は相当なものと推察されます。
 このような状況の下、協会がこれらの動きを放置することは我々に課された社会的使命から許されず、「会計プロフェッションの制度論」に正面から取り組むべき時期が来たという認識を深めています。その議論の前提となる会員の意識を確認するためのレポートがこの「中間報告」です。
4. 協会のスタンス
 この中間報告では、「会計プロフェッションのあり方」に関連し、現在我々が置かれている状況と将来への危惧される方向性を明らかにし、「公認会計士が当然のこととして税務業務を行える制度を整備すること及び国際的な信認が得られない保証業務の制度化は認められないこと」を明確に主張しています。そして、この主張の前提となるべき論拠について、会員の共通認識を確認し、醸成することをこの「中間報告」の目的としています。
 我々は、会計プロフェッションの自己責任社会における国民経済への貢献及び財務情報の保証制度の国際的な信認確保という観点から、本来あるべき制度論を展開しようとしています。しかし、社会制度を変更しようという試みは、必ずしも理論的なアプローチで完結することはなく、今後協会が明確な意思表示を行うことによって、我々が望まなくても公認会計士と税理士の職域問題に発展することは必至で、外部的な圧力が必然的に強くなることが予想されます。したがって、この問題に協会が真正面から取り組むためには、明確な会員の支持が不可欠となります。そして、この議論を深めていく場合には、業界内部だけの議論だけではなく、広く経済界や学会を巻き込んで議論する必要があり、我々はそれに耐えるだけの理論的根拠を持たなければならず、また実効性のある創造的な提案をできる体制を作っておく必要があります。
 さらにこの問題は監査法人勤務か独立会計士かという問題ではなく、公認会計士業界の将来に係わる重要な問題であり、協会は今後の最重要課題の一つと考えています。そして、この問題に対処するためには会員一人一人の腰の座った対応が必要で、会員の皆様の忌憚のない意見や提案がぜひとも必要です。また、近畿会には地域会のリーダーとしての明確な意思表示を期待しています。

以上