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恥と外聞

谷口 弘一

 
   「道路関係四公団の民営化に伴う資産評価及び会計基準作成に関する検討業務」について、平成16年1月30日に競争入札が行われ、C法人が26千円で落札し業務を引き受けることになった。その他の大法人の入札価格は、A法人が450千円、T法人が770千円、S法人が5,000千円であった。常識的には15,000千円以下では引き受けられない業務だと思われるが、国土交通省の道路局公団管理室長の説明によれば、C法人に入札について錯誤がないかどうかを問い合わせたところ、「業務遂行の体制はしっかりと組む」というC法人の確認を得て契約を締結したそうである(3月4日週刊文春、猪瀬直樹ニュースの考古学より)。2月19日の各新聞紙上でこの入札の結果が暴露され、猪瀬氏に、監査法人まで「一円入札」の弛んだ世界、と厳しく批判されて、長い年月をかけて培われてきたわが国の公認会計士の社会的信用は、奈落の底に突き落とされるほど失墜したに違いない。
 公認会計士は、高度な専門的知識と独立性を有し、営利主義に走らず経済社会に貢献することを誇りにする職業であると思っていた。また特にわが国では、他人に迷惑をかけない、うしろ指を指されない、というような「恥の文化」が潜在しているので、倫理性という面では、米国よりもわが国の公認会計士のほうが高水準だと自負していた。それがいまや、米国の公認会計士が歩んできた轍を急追し、あくどいまでの営業と競争を行って利潤の追求を行う一産業になってしまおうとしている。このたびの競争入札は、この「恥も外聞もない」現状を如実に示したものであるといえよう。
 奥山会長は「内容を把握して厳しく対処する」と言明されているが、果たしていまの協会に再発を防止するだけの自浄機能が傭わっているのだろうか?この恥も外聞もない安値競争を企んだ監査法人の幹部も、個人的には概ね常識があって善良な一市民であると推察されるが、寡占状態である集団の間で発生する狂気が過当競争に駆り立てることになるのだろう。自分達の手に余るのであれば他人の手を借りてでも、この構造的欠陥にメスを入れて粛清しなげれば、公認会計士業界の将来はない。