シリーズ女性リーダーに聞く 第1回

 

世の中にこんなことを実現したい

(株)マザーネット 上田 理恵子氏に聞く

女性会計士委員会 玉置 寿子

 
   女性リーダーに聞く」と題して各界で活躍する女性にお話を聞き、仕事に追われる日常に刺激を受け、勉強しようという趣旨で講演会を企画しました。今回はその第1回目です。
 今回の講師は大阪市立大学生活科学部(理系)を卒業し、潟_イキン工業に入社後、業務用空調機などの設計を担当し、結婚、新規商品の企画(社内ベンチャー起業)、出産・子育て、社内の人材を取引先等へ派遣する仕事(社内人材派遣業)を経て2年半前に(株)マザーネットを立ち上げた上田理恵子氏。
(株)マザーネットは、キャリアとファミリーの両立支援という観点から、子供の一時保育、家事支援、病児保育や、建築士とタイアップした「片づけやすい部屋」へのリフォーム、夏休みや冬休みなどの長期休暇に子供を1週間信州や白浜に連れて行く自然体験スクール、音大の学生によるピアノ教授+家事など、「他社ではやっていないことをする」をモットーに多くの需要にこたえておられる会社です。
 他社でも供給されているサービスと同じことをやっても消費者の問題は解決しない。こういうときに困るのだけれど、他にそういうサービスはないという分野に自分は力を入れよう。他社とは違うマザーネットだからある、というサービスを消費者に提供すれば十分ビジネスになると見込んでの起業でした。目の付け所が良かったのか、需要は順調に増加し、今期は東京支社を立ち上げ、他でも供給しているサービスは他社を紹介するほどだそうです。
 起業のきっかけは、ご本人の子育てと企業勤務の両立の難しさからでした。まず豊中市の保育行政の壁に当たり(保育所への入りやすさは市によって違います。上田さんの住
んでいらっしゃる豊中市では第一子は4〜7月までに、第二子はそれから3年以上空けて4〜7月までに出産しなければ、保育所にはほとんど入れないそうです。)、重要な仕事のアポイントが入っている日に限って子供が朝急に熱を出す、保育所は預ってくれない、両方の実家は遠いし、ベビーシッター会社は急な要求に対応してくれない・・・。上田さんは豊中市の保育所事情を知らずに「子供は天からの授かりもの」として出産したがために受けた不利益、インターネットがこれだけ発達した現代においても子育てしようとする女性に情報が得られなかったことから、同じような悩みを持っている女性が多いに違いないと思い、悩みを話し合い、何とか解決できないかと会を呼びかけました。それが今から10年ほど前のこと。
 男性と同じように勉強して大学を卒業し、同じように職業についてきた。ところが子供ができると同じように責任を持つべき夫の人生は何も替わらないのに、自分だけが大きく人生の方向転換をしなければならない。子供は二人の子供なのに・・・。仕事と家庭の両立は考えていたより困難だ。・・・やはりというか意外というか、かなりのキャリア&ファミリー両立の悩みが寄せられました。しかしそれだけでは何の具体的な手助けも出来ない。なんとかできないか。それが上田さんに起業を決心させました。
 起業にもっとも大切なのは情熱と理想だといいます。100億円の売上の会社を作りたいといった数字の目標は達成してしまえば夢を見失ってしまうが、世の中にこんなことを実現したいという自分の理想は、尽きることがない。目標を見失うこともなく、達成過程での困難を越えていける原動力になる。世の中に出て行って何かをしようとすればいろいろ言う人は必ず出てくるし、大きくでようとすればするほど抵抗の声も多くなるけれど、理想を持っていれば、抵抗する声の上をスイーと飛んでいける、と上田さんはいいます。
 上田さんご自身の一番身近な需要(起業するまでに2万件以上の需要データをキャリア&ファミリーの会から得ていたそうです)を切実に感じていたからこそ、情熱を持ちつづける自信になり、それを実現することが困っている人たちを助けることになるという理想になり、多少の雑音や困難があってもビジネスを続けられる原動力になるのだと思います。
 使う人、使われる人にリーダーとしてのアドバイスは?とお聞きしたところ、企業に勤めていたときから心がけていたのは、どんな仕事にも学ぶことはあるという心構えで、ちょっとした気使いや工夫を加えることだそうです。例えば電話を受けて目当ての人が不在だったとき、コールバックする電話番号を必ず伝言メモに書き加えるとか。リーダーとして心がけていることは、手書きの手紙をとにかくたくさん書くこと、講演会には身近な人を呼ぶこと(出来すぎる人は普通の人の参考にならないのだそうです)、自分のロールモデル(こんな人になりたい)を持つ、人には持たせること。
 上田さんのお話を伺って思ったのは、伸びる人はとても素直で、周りで起こることをどんどん自分にいいかたちで吸収していくものだということです。
 いろいろ勉強になった講演会でした。これからも企画する予定ですので、興味がおありの方、何のことか分からないけど、暇な土曜日を送っている方は男性でも女性でも、この講演会に参加して得るものがきっとあると思いますので、ぜひ参加してみてはいかがでしょう。