投 稿

「バイオサポーターズ三会協議会」に寄せて

 
あずさ監査法人
産学官連携推進室マネジャー
 浅野 豊
 
 汗ばむような暑さの残る8月28日、大阪科学技術センターにて「バイオサポーターズ三会協議会 事例研究発表会」が開催されました。
 会計士協会近畿会副会長の佐伯剛先生の威勢の良い司会で始まり、バイオサポーターズの各チームの代表からそれぞれの事業プランについての発表があり、その後、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス科教授の新名先生、NPO近畿バイオインダストリー振興会議の阿部様、近畿経済産業局バイオインダストリー振興室の伊藤様から、それぞれ発表に対する感想、助言等を頂き、会場は拍手のうちに閉幕となりました。
 組織の運営にご尽力いただいた方々も、私のようにサポーターズとして実際の作業に携わったメンバーも、どうにか期日までにやり終えたという安堵感と満足感で満たされた瞬間でした。
 しかし、お金や時間、公的な立場といった様々な制約がなければ、もっとやれたのではないか、もっと視聴者を惹きつけるようなプレゼンが出来たのではないか、という気持ちをもったのは、私だけではなかったのではないでしょうか。実際、発表会終了後の懇親会でも、そういった感想をもっておられた方が数多くいらっしゃいました。
 振り返れば、大阪弁護士会、日本弁理士会近畿支部、日本公認会計士協会近畿会の三会の連携により、「バイオサポーターズ三会協議会」なるものが発足したのは、去年の10月30日のことでした。発足の目的は、「事業を側面からサポートする専門家のネットワークを強化することによって、関西のバイオ産業の活性化に貢献すること」だと私は理解しています。
 私は典型的な文科系人間で、生物科学の世界には直接の接点はなかったのですが、たまたま国立大学の仕事に携わっていて大学の役割について興味をもっていたことと、高校時代の同級生にバイオを専門にしている弁理士がいて   時々情報交換をしていたこと、それから、同じ監査法人内の佐伯先生から強く勧めていただいたこともあり、軽い気持ちで参加してみようと思ったのがバイオサポーターズ第1期生になったきっかけです。
 会が発足し、まずは、参加メンバーのバイオに関する知識を高めることを目的に、「基礎知識コース」と「専門知識コース」に分かれ、様々な分野の先生方の講習会が開かれました。私は当然「基礎知識コース」を選択しましたが、どれもこれも興味深く受講することができました。
 初めは、バイオと聞けば、ゲノム創薬や再生医療等、医療の現場に関るものだとばかり思っていましたが、「バイオ」と一口に言ってもその範囲はとてつもなく広く、我々人類の存在そのものに関る分野であるとともに、地球を含めた生態系すべてを含む壮大なスケールの学術分野であることを知り、非常に感銘を受けました。誰もが、もし今から学生時代に戻れるなら、基礎からバイオの世界を勉強し直したいと思ったことでしょう。
 個人的には、私自身が一卵性の双子であることから、クローン人間の話には一番興味を惹かれました。最も、胎内での記憶はありませんが。
 さて、約2ヶ月間にわたる受講カリキュラムが終了したのち、今度は、三会の横断的なチームを編成し、同じ研究シーズをもとにそれぞれが事業化プランを作成することになりました。第1チームは会計士が、第2チームは弁理士が、第3チームは弁護士がチームリーダーとなりました。私が所属したのは第2チームです。
 研究シーズは「セリシン・アパタイト複合体」でした。
 何しろ三会が集まって作業をするというのは始めての試みですので、初めはどうなることかと思いましたが、さすが皆さんそれぞれの分野でご活躍の方々ばかりですので、いざ始まってしまえば、その協力体制と推進力は私の予想を越え、初めの心配など吹き飛んでしまいました。
 我々第2チームは、弁理士がリーダーであったこともあり、与えられたシーズをいかに効果的にビジネスに活用するかという点を最優先に考え、シーズの分析に時間と労力をかけました。
 作業は、シーズの分析は弁理士が、事業化のプランニングと数字の落とし込みは会計士が、それぞれの局面におけるリーガル面のチェックは弁護士が中心となって担当し、マーケット情報の収集等のその他の作業は、皆が協力することによって進めました。
 チームの全体ミーティングは、平日の夜7時から10時過ぎまで、場所が便利だという理由で私が所属するあずさ監査法人の会議室を使い、全部で8回開きました。毎回積極的な議論が交わされましたが、驚くべきことに、皆さんお忙しい方ばかりなのに、ほとんど全員が皆勤でした。チームリーダーの室田さんのとても温厚な人柄が、チーム全体をそうさせたのかも知れません。
 しかし、悔しい思いもありました。研究機関が使えないので、アイディアの検証ができなかったこと、ビジネスに近くなればなるほど情報の壁が厚く、例えば企業へのヒアリングについても先方の協力が得られなかったこと等です。そのため、ビジネスのプランニングについては大雑把なものに終始せざるを得ず、その分野担当の会計士として十分に力を発揮できなかったことが心残りでした。また同時に、事業化の難しさの一端を垣間見たようにも感じました。
 さて、とにもかくにも我第2チームは、「マイクロキャリア開発プロジェクト」を考案し、8月28日の発表会で公表するに至りました。そして、特筆すべきことは、その発表前に、実際に二つのアイディアについて特許を出願したことです。これは、弁理士の室田さん、加藤さんのご尽力により実現したのですが、事例研究の枠を超えて現実問題としてこのテーマに取り組めたことは、非常に私にとって貴重な体験となりました。
 チーム別の発表会はこれをもって終了しましたが、バイオサポーターズ第一期生の活動は、さらに「バイオビジネス研究会」という次のステージへと進みつつあります。前回はあくまでも事例を使った研修でしたが、当研究会では、まさに実践事例を扱うことになるようです。私は、少し消化不良に感じたあの8月の発表会の時の気持ちを、次の研究会にぶつけたいと考えています。
 もし、この記事を読んでいる若い方がいらっしゃいましたら、是非、第2期、第3期と継続されるであろうこの会に参加されることをお勧めします。バイオという普段の仕事と違った視点で世の中を見る機会が開けるだけでなく、弁護士、弁理士との共同作業によって得がたい経験ができました。ただ、この会の行く末は、我々第一期生の今後の活動にかかっているのかも知れません。
 最後に、私たちにこのような機会を与えていただいた、三会の代表の先生方、アドバイサリーとしてご助力いただいている近畿経済産業局バイオインダストリー振興会の大平様、近畿バイオインダストリー振興会議の遠山様、事務局の方々、講師の先生方はじめこの会を支えていただいている皆様に感謝いたします。

司会を務められる佐伯副会長 講評をくださっている奈良先端科学技術大学院大学教授の新名先生 発表を見守る日本弁理士会近畿支部の柴田先生