報告
監査会計委員会報告
〜日本監査研究学会全国大会〜

監査会計委員会委員長 北山 久恵

 平成16年9月18日(土)及び19日(日)、関西学院大学において、開催されました日本監査研究学会第27回全国大会に参加いたしました。事前申し込み187名のうち、公認会計士が60名と、3分の1を占めており、監査学界と実務界との交流を積極的に図ろうという意気込みを感じました。以下、その概要を紹介します。
T. 協会本部の奥山章雄前会長により、「公認会計士・監査審査会の使命と監査研究への期待」をテーマとして、特別講演がありました。

1.

監査環境の変化
(1) 透明性のある財務情報は何故必要か。
(2) 透明性ある財務情報は如何に確保できるか。
  @ 経営者の自覚(米国SO法、コーポレートガバナンス、日本においても内部統制の整備・運用の評価を積極的に行い、充実させたい。)
A 公正な会計基準の確立
B 厳正な監査の実施

(3)

監査人としての責任の自覚
@ アーサー・アンダーセンの崩壊
A 金融システム安定化における監査の立場
B 将来予測情報への対応(監査人として厳しい判断を行うべき)
C 監査契約の解除、監査の辞退
D 監査法人にける審査機能の強化

(4)

監査実施状況のチェック
@ 品質管理レビューの実施
A 公認会計士・監査審査会の活動

2.

監査研究への期待
(1) 学界・実務界の交流強化
(2) 社会的事件への発言強化(監査人の民事上の責任のあり方、監査時間・報酬の増加)
(3) 監査手法の開発(リスクアプローチでは、粉飾決算を発見するのに必ずしも万全ではない。)
(4) 監査規範の研究強化
(5) 経済社会におけるインフラとしての認識(会計学を大学教育の一般教養とし、重要性を高める。)
U. 統一論題「財務会計の質的変革と監査意見―2005年問題を見据えてー」
座長:友杉芳正氏(名古屋大学)
報告:蟹江 章氏(北海道大学)、山添 清昭氏(公認会計士)、斎藤 真哉氏(青山学院大学)  朴 大栄氏(桃山学院大学)
近畿会監査会計委員会からは、代表して、山添清昭委員が、「将来予測情報をベースにした会計処理への監査面からの対応や問題点」について、発表しました。
(1) 新会計基準における財務会計の質的変質について

@

 将来予測情報をベースにした会計処理(退職給付会計の退職給付債務の算定、税効果会計における将来年度の会社の収益力に基づく課税所得の見積、継続企業の前提の評価における経営計画等、固定資産の減損会計による回収可能価額の計算における使用価値の計算)

A

取得原価による評価から時価による評価(時価による評価には、見積りの要素が多く含まれる。)

B

オフバランス情報からオンバランス情報に

C

 経営者の主観的判断の行使(税効果会計の繰延税金資産の回収可能性の判断、継続企業の前提の評価、固定資産の減損における「減損の兆候」の判定、減損損失の認識の判定、割引率の適用等、会計上の見積りの要素が多く含まれ、経営者の主観的判断の行使が要求されることとなり、監査人に実質的判断が求められている。)
(2) 監査実務において実際に直面している問題点

@

 会計上の見積りの監査(十分な情報が入手できているか。監査人による独自の会計上の見積りの実施。経営者の過去の実績や経営者の意図の実行可能性の吟味。・・・非常に難しい。)

A

 実質的判断の行使(会計基準が明確でない、詳細な定めがない、実務指針・Q&A設定等が遅延する場合、ある幅をもった解釈・適用は避けられない。)
(3) 監査面からの今後の対応

@

会計上の見積りの監査(見積りの妥当性に関する検討過程及びその結果のドキュメンテーション化の徹底。経営者との十分なディスカッションの実施。)
A 専門家の業務の利用
B  品質管理の強化(監査法人の審査機能のさらなる充実、協会の品質管理レビュー、公認会計士・監査審査会)
C 監査時間・監査報酬の増加
V. 課題別研究部会
 東 誠一郎副会長を部会長として、監査会計委員会のメンバーに、盛田良久氏(愛知大学)、蟹江章氏(北海道大学)に加わって頂いて、「将来予測情報の監査―ゴーイング・コンサーン情報等の分析―」について研究することとなり、今回、中間報告を行いました。
(1) 研究目的
 「継続企業の前提」(以下、GCという。)への対処が平成15年3月期よりスタートしたが、監査の実務面では種々の問題点が生じている。すなわち、
@ 制度がスタートする前の「特記事項」の開示との関連性
A 制度スタート後の注記(重要な疑義の存在、今後の利益計画等)の開示の十分性
B GC注記の記載開始あるいは記載の取りやめのタイミングと当該企業の財務状況の推移の整合性
  しかし、監査上の最も重要なポイントは、「継続企業の前提の重要な疑義」の解消のための今後の経営計画等の検討の問題である。この将来予測情報の監査は、順次導入された新会計基準である税効果会計、退職給付会計、固定資産の減損会計等においても、同様の問題を内包している。
  今回、「将来予測情報の監査―ゴーイング・コンサーン情報等の分析―」として、平成15年3月期以降のGC注記と監査報告書の時系列的な分析をすると同時に、継続企業の前提の検討に重要な経営計画等の将来予測情報の監査にかかる諸問題を研究テ−マとする。
(2) 中間報告の内容
  GC導入初年度の平成15年3月期決算の公開会社を対象に、GC注記が記載されている会社について、GC注記の開示状況並びに監査報告書の監査意見及び追記情報の記載状況について、分析を実施した。
@ 業種別分析
A 株式市場別分析
B 「重要な疑義を抱かせる事象又は状況」の分析(事象または状況の類型化)
C その後の破綻の状況(その後、民事再生法適用申請等、破綻をした会社の有無について調査し、注記と破綻の相関関係を検討)
D 平成15年9月中間期と16年3月期の時系列分析
E 制度導入前の「特記事項」との関連の分析
(3) 今後の研究予定
@ 平成16年9月中間期と17年3月期の分析
A 業績・財務数値の推移との相関関係の分析
B  「継続企業の開示」とその他の開示との整合性の分析 (「リスク情報」「対処すべき課題」等の開示との関連)
C 将来予測情報の監査上の課題の検討
 
来年秋までに、最終報告をまとめ、日本監査研究学会全国大会において発表する予定です。

以上