報 告

公認会計士第二次試験合格者の就職問題

厚生部 岡本 善英

(1) 平成16年の就職状況
 
 平成16年11月8日に第二次試験の論文式の合格発表がありました。前年より1ヶ月遅い発表でした。合格者は全国では1,378人(前年 1,262人)、近畿財務局管内では276人(前年 239人)であり、合格率は全国で8.4%(前年 8.4%)でした。平成16年の第2次試験では、短答式合格率が20.0% (前年 22.7%)、論文式合格率が42.0%(前年 37.1%)であり、短答式合格率が低いわりに、論文式合格率が高いという状況でした。
 合格発表直前の近畿公認会計士無料職業紹介所における求人数は約100人でした。その内、大手四法人(あずさ・新日本・中央青山・トーマツ)の求人数は85人であり、各法人とも求人数の2倍程度の内定を出していました。ところが、論文式合格率が高かったため、予想よりも内定者の合格が多く、大手四法人で133人の採用と予定求人数を大幅に上回る結果となりました。大手四法人以外の採用は8人で、平成16年11月16日現在で合計141人が採用となっています。大手四法人の予定求人数を大幅に上回る採用にもかかわらず、合格者の半数近くが未採用となっています。
 今後、近畿公認会計士無料職業紹介所といたしまして、合同面接会の開催や、中小法人及び個人事務所等への未就職者の採用案内等を実施していく予定です。第1回目の合同面接会は11月25日に開催しました。この面接会で30人程度の求人がありますが、事務所の希望に合致する人材があれば採用したいという事務所が多く、30人の数字は流動的です。この面接会で30人が採用となっても累計で171人の採用にしかならず、近畿地区では合格者の内100人程度が未就職のまま年の瀬を越すことになると思われます。
   
(2) 公認会計士業界のビジョン
 
 平成14年12月に金融庁が「平成30年ごろまでに公認会計士総数5万人規模になることを見込む」という構想を発表しました。平成16年4月現在、全国で公認会計士が約1万5千人、会計士補が約5千人、合計2万人ですから、単純に考えて15年間で3万人増加ということになり、年間2千人の増加と計算されます。しかし、現状の公認会計士業界では1年間1千人程度の収容能力しかないように思われます。金融庁の公認会計士5万人構想は監査人としての公認会計士だけではなく、企業内の公認会計士の存在を念頭においています。
 株主への説明責任や企業統治の透明性の確立、国際会計
基準への対応などの課題を考えると、一般企業でも、公認会計士レベルの専門知識を持った人間が必要とされてくるのは明らかです。これまで監査法人に取り込まれていた公認会計士が一般企業にも就職して、わが国の会計システムのレベルがアップすることは、望ましい方向性であることは間違いありません。「会計のビッグ・バン」に引続き「監査のビッグ・バン」が起ころうとしています。現状では、公認会計士が一般企業に就職するための環境整備が遅れています。公認会計士が監査法人から一般企業へ、また、一般企業から監査法人へという流動化をスムースに行える環境整備を早急にする必要があります。
   
(3) 具体的処方箋
 
 上記のように公認会計士の流動化のための環境整備には時間がかかると思われますが一般企業への啓発はもとより、我々公認会計士自身自己啓発が必要であると思います。
 具体的処方箋について思いつくまま列挙してみます。
   

@

 最近、公認会計士試験の専門学校が一般企業に対して公認会計士の人材紹介をするという動きがありますが、方向性としては良いと思いますので、その専門学校と一度意見交換等を行い協力できることは協力し、民活を利用する。
   

A

 二次試験合格者は大手法人志向が強いのは事実です。その理由はブランド志向もありますが、研修や教育が充実しており監査能力をつけやすいという面もあります。そこで、大手法人に行かなくても実務補修所で監査能力が十分につくようにすることによって、中小法人にも就職しやすくする。
   

B

公認会計士協会には厚生労働省の許可を得た無料職業紹介所が東京地区と近畿地区にしかなく、また、東京地区と近畿地区との連携は多少あるものの十分とは言えません。すべての地区に無料職業紹介所を設置するのが望ましいですが、とりあえず、合格者の多い東海地区や福岡地区に無料職業紹介所を設置し、各紹介所の情報をネットワークで結び、求職者・求人者に情報を提供する。
   

C

 二次試験合格者が一般企業に就職した際、公認会計士になるための要件として2年間の実務従事があります。実務従事として、「原価計算その他財務分析に関する事務」と規定されていますが、今まで実務従事の件数が少なく実務従事の事例集のようなものが完備されていません。今後、実務従事の件数が増加すると思われますので、実務従事の事例集等の完備をすべきです。また、過去に公認会計士協会側から実務従事の要件を厳しくするような要請をした経緯から、要件の緩和を言いにくいかもわかりませんが、その時とは環境が変化していますので、要件の緩和を金融庁に提言すべきです。
   
D 昨年、二次試験合格者の未就職問題が発生した時から、3年間の有期雇用やパート採用ということが言われてきました。大手法人では、職員全員にパソコンを貸与し研修に時間をかけてやっているので、これらの勤務形態は、監査の品質管理上問題があるとして、難色を示しています。しかし、近畿地区で100人の未就職者を目前にして、今一度、一考の余地があるのではないかと思います。
   
E 十数年前のバブル期の極端な求人難の時からでしょうか、青田刈りの採用が始まりました。合格発表までに、受験生に対して面接をして内定を出すという採用方法が大手法人では、その後現在まで続いています。優秀な人材を早く確保したいというのは景気・不景気にかかわらず変わらないでしょう。しかし、昨今の求職難の時では、受験生も就職に不安を抱いているため、面接の予約を闇雲に入れ、すぐに予約が一杯になり、その結果要領の悪い真面目な受験生は面接が受けられないという事態が発生しました。面接をする法人の方もその対応で大変だったと思います。今後青田刈りの採用は止めて、合格発表後に面接し採用する方式に変更することにより求職者の混乱もなくなり、採用する法人にとっても採用予定人員を的確に採用でき(今年のように内定者の合格が多いと採用計画が狂う)リクルートコストも低減できると思います。
   
F 近畿会に限って言えば、厚生部が無料職業紹介所を主に運営しているので、その担当副会長・厚生部長・厚生副部長がその任に当たっています。無料職業紹介所には求職者が色々と相談に来ますので、色々な角度からアドバイス出来るようにその任に当たる者の構成は、大手法人・中小法人・個人事務所という組合せがベストと思います。来年は役員改選がありますが、担当の振当ての際に参考にして頂ければ幸いです。
 

 以上、処方箋ということで書きましたが、処方箋になっているか、単に私の個人的な感想になってしまっているような気もします。いずれにせよ、この未就職問題は公認会計士業界だけでなく、経済界を巻き込んだ社会問題であり、会員の皆様も他人事とは思わず関心をもって臨んで頂きたいと思います。