特集:公認会計士からみたアカウンティングスクール
 

あるアカウンティングスクール教師のお話

 
休日にかかってきた突然の電話
   土日に自宅でゆっくりとテレビを見ながら居眠りをするのは至極の楽しみです。しかし、そうしている時に限って、不動産や塾のセールスの電話が架かってきます。これは腹立ちますよね。その日も、炬燵に入ってウトウトとしている時でした。電話が鳴ったので、中学生の息子に取らせました。
 息子「平松という人から電話だよ」
 私 「どうせセールスの電話だから、すぐに切れ!」
 息子「関学の平松….って、言ってるけど……」
 私 「関学の平松??? 同級生にそんなやつ居たかな? エエッ、もしかして学長?」
 慌てて飛び起きて電話に出ました。要件は新しく開校するアカウンティングスクールの教員就任の要請です。そういえばその話は、先輩の林恭造先生から聞いてはいましたが、誰か定年で退職された会計士さんが引き受けるものと思っていました。その旨、学長に申し上げると、「一番忙しい現役バリバリの会計士に来て欲しいのに何を言っとるのか!」と、叱責されました。結局、この日から私とアカウンティングスクールの関係が始まったのです。
 
アカウンティングスクールと私(井上浩一)の関係
   昨年4月に関西で最初のアカウンティングスクールとして関西学院大学専門職大学院が開校しました。私は、そこで新米の実務家教員として財務分析と企業評価論を担当しています。この大学院は、キャンパスが上ヶ原(西宮)と梅田(阪急インターナショナルホテルのあるビルの14階)の2箇所にあり、学生は自分の都合に合わせて両方を利用できます。授業は、昼間だけでなく夜間も行っています。社会人学生が修士の単位を取得しやすくするため、平日の夜間や土曜日の授業だけ選択しても卒業単位が取れるカリキュラムとしている点に特徴があります。
 私は監査法人勤務の現役会計士のため、大学にはわがままを聞き入れてもらい、場所と時間帯を限定することを条件に引き受けました。実際には、場所は梅田キャンパス、時間帯は金曜日の夜の授業だけに限定しました。文部科学省による専門職大学院の設置認可の条件として、私のような実務家教員を何割か任用することが求められているそうです。 監査法人に勤務しながら大学教授を兼務するということは、かなりのハードワークになるので、お断りしようかと考えました。しかし、私は中学から大学まで関西学院にお世話になりましたし、父も同窓生で息子や甥も関学ということもあり、これも何かのご縁と考えお引き受けしました。所属するあずさ監査法人にも了承を得、教員としての私の試行錯誤が始まりました。
 
新公認会計士試験との関係は?
   アカウンティングスクールは、多様化する職業会計人を育成することを目的としてカリキュラムが組まれています。公認会計士を養成することだけが目的の教育機関ではありませんが、新公認会計士試験との関係では、アカウンティングスクールで一定の教育内容を履修した場合は、4科目ある短答式試験のうち「財務会計論、管理会計論、監査論」の3科目が免除されます。
 
多様な学生が在籍
   私の授業はアカウンティングスクールの学生だけでなく、ビジネススクールの学生も選択できるので、22歳から50歳以上まで非常に幅広い年齢層の人たちが受講します。学卒の若い学生の他にも色々な職業の人がいます。大手メーカーや金融機関に勤めているサラリーマン、外資系コンサルテイング会社の部長さん、オーナー会社の社長さん、税理士資格保持者もいます。中国人留学生も3名教えました。
 遠路はるばる私の授業を受けるために岡山から新幹線で通ってくれているおじさんもいます。従って、ある分野では私より詳しい学生もいます。ある日、授業でXBRLの説明をしたとき、なんの頭文字だったか忘れてしまったことがあります。その時、コンサル会社勤務の学生が、「それは、Extensible Business Reporting Language です!」と即座に教えてくれました。これは助かります。
 
どんな授業をやっているのか?
   他の先生方がどんな授業をしているのかよく知りませんので、自分の体験談のみ申し上げます。ほとんどの大学院生たちは、一般の大学生と違って親に頼らず身銭を切って学習に来ていますので、学習態度は大変熱心です。居眠りする学生は少ないので、教えやすいといえば教えやすいですが、その分手抜きをするわけにいきません。当たり前のことかもしれませんが、いつも真剣勝負の授業になります。
授業が分かりやすく、且つ、面白くなるよう、できるだけ1ヶ月以内に新聞や雑誌に掲載された話題を取り入れて解説することを心がけています。幸い、最近は大銀行の合併や会社更生事件、村上ファンドやホリエモンのTOBなど話題には事欠きません。その点では、私自身、結構エンジョイしながら講義をさせてもらっています。企業再生や新規株式公開、企業の海外進出の支援など、自分の得意とする分野の経験談も交えて講義します。ただし、社会人の学生は結構面白そうに聞いてくれるのですが、若い学卒者はそうでもないらしく、客受けする、、、じゃなかった。学生受けするしゃべりをどうすべきか悩むところです。まだまだ修行が足りません。
 たまに居眠りをしている学生(なぜかこの場合、若くてかわいい女子学生が多い)がいますが、それに気がついたときは即座に期末試験の出題の解説をアドリブで言うことにしています。その学生が目を覚ました頃に、「今さっき、期末テストの出題について大事なヒントを説明したとこだから、それをお友達によーく教えてもらわないと、あとでタイヘンなことになるかも。」といってあげます。ちょっと意地悪な教師(オッサン)と思われるかもしれませんが、居眠り防止効果はてきめんです。
 大学院ですので、一方的な解説は出来るだけ少なくし、事例演習を通じて双方向のコミュニケーションをとりながら授業を進めることを目標にしています。しかし、受講者が30名を超えるクラスなどでは、なかなかその運営が難しく、これが今の最大の悩みです。 毎期、教師が学生から評価を受けるシステムなので、これはいい制度だと思います。評価書(匿名)には学生の知識レベルの差への考慮や授業のテンポの速さ、後ろの方の席への声の届き方など、結構色々な注文や苦情が記載されており、これをどう改善するかが今後の課題です。なお、資料の配布や学生からの質問の受付などは、関学のWebシステムを利用していつでも行うことが出来るので、その点は24時間休日なしというIT利用のメリットを最大限享受しています。