本部委員だより

知的財産専門部会活動報告

経営研究調査会知的財産専門部 部会長 夷谷 信行

 
1. はじめに
 協会本部知的財産専門部会で部会長をしています夷谷と申します。当部会が活動を始めたのは2004年9月からであり、現在で1年半程度の活動をしています。早稲田大学花堂教授、経済産業省、日本弁理士会からのオブザーバを含め、20名ほどの大所帯となっています。
 折りしも、活動を始めた2004年9月から経産省にて「知的資産経営情報の開示ガイドライン」の策定作業が開始されました。そこで当部会からも委員を派遣し、意見の具申や情報の収集を図ってきました(ガイドラインは2005年10月に公表されました)。我々はガイドライン策定過程に関与するとともに、海外の事例研究等を行い、この領域で公認会計士がどの様な役割を果たせるかについて研究を行ってきました。
 
2. 海外の事例
  「知的資産経営報告」と同様な開示として、北欧を中心に欧州で行われている「知的資本報告書(Intellectual Capital Statement)」の開示があります。これは、スウェーデンのスカンディア社の開示(1995年)を初めとし、北欧を中心に発達してきました。また、ドイツにおいても2004年に開示ガイドラインが公表され、30社程度が開示を行いつつあります。その他、EU6カ国のMERITUMガイドライン(2002)やオーストリア等でも同様の動きがあります。
 一方、財務情報を補足・補完する形で非財務情報を開示する試みが世界的に行われつつあります。この様な例として、イギリスのOFR(Operating and Financial Review)、米国のEBR(Enhanced Business Reporting)等があります。
 
「知的資産経営の開示ガイドライン」
 「知的資産経営の開示ガイドライン」では、広く経営活動全般に関わる知的資産を活用した知的資産経営を価値創造ストーリーとしてステークホルダーに開示するものとなっています。
 このガイドラインにもとづく開示事例としては、・オールアバウト、日本政策投資銀行、ネオケミア・、・ニーモニックセキュリティがあり、さらに増加しつつあります。
 
4. 公認会計士の役割
 ガイドラインにもとづく開示に対し、公認会計士がどのような役割を果たすことが可能かについて検討を行いました。

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作成指導
  知的資産経営情報の開示は始まったばかりであり、開示を希望する企業にとってもまだまだ敷居が高い状況にあります。このため、例えば中小企業基盤整備機構「知的資産経営研究会」において、中小企業向けの開示促進を検討されています。その報告書の中においても、弁理士・弁護士等と並んで公認会計士への期待が表明されています。作成指導は知的資産経営情報の開示を円滑に行ってゆくうえで重要な機能であり、公認会計士は財務や開示についての専門家ですから、開示企業に対する助言業務により貢献できるところ大であると考えられます。

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保証業務
  開示が高度に普及し、開示内容がステークホルダーの意思決定に重要な影響を及ぼす段階に至った場合、開示情報の信頼性が重要となり、今後ステークホルダー・開示企業の双方から保証業務への期待が高まってゆくものと考えられます。しかし、「知的資産経営報告」では将来情報や定性情報(経営哲学・方針・戦略等)が重要な位置を占めており、また、開示の普及を図る趣旨からガイドラインも任意性が高い状況にあり、保証業務の導入には困難な事情があります。しかし、ガイドラインの改定動向や関係者のニーズを睨みつつ、今後も継続的に研究してゆくべき分野かと思います。
 
5. 最後に
 以上、知的財産専門部会の活動内容を見てきましたが、知的資産経営情報の開示は、今後ますます重要性を高めてゆくものと思われます。今までこの分野にあまりご興味をお持ちでなかった方も、少しでもご関心をお持ちいただけると幸いと考えます。