特集

公認会計士からみたアカウンティングスクール
「まだ、始まったばかりです」

松本 稔

(立命館大学大学院・経営管理研究科教員)

 
 あずさの松本と申します。入学者選抜に始まり、4月から正式スタートした立命館大学大学院経営管理研究科は今前期第2セッションの最中です。前期での私の担当科目は「監査基準論」、「会計職業倫理」と「内部監査論」、後期には別の科目が待ち受けています。
 監査法人での仕事との両立の中で学生を指導するのは、予想通りしんどいものですが、先日、コンパをするから是非とお誘いを受けたことで、単純ながら今は疲れが飛んだ気分になっています。
 さて、前置きはこれくらいにして次に、「アカウンティングスクール(以下スクール)」についての若干の感想を述べさせていただきます。
 設置目的、必要性、は周知のことですからここでの言及は省略いたします。先ずは、教室に私を待っている学生がいる、という現場真っ只中に身を置いてみて初めて分かったことについて触れさせて頂きます。
 将来の目標に向けて、勉強したいと思う青年たちの熱気が教室を活気付けており、受講者は誰一人欠席しない。大部分は学部卒業と同時に入学した人たちであるが、飛び級生、社会人、留学生も混じり、出身学部は経済・経営だけでなく工学系、文学系等多様である。
 当然ながら学生達からは専門学校で得るものとは違うものを得たいとの要望が強い。スクールを終了しても会計士試験は受験しなければならないことから、スクールへの在籍は隠れ蓑で、心は専門学校にあるのかと思いきや、どうもそれは当っていないようでなんとなく嬉しく感じています。ディスカッションやらせても中々の雰囲気です。
 また、課題研究で修士論文を書き上げねばならないのですが、受験を前提にするとこれは大変な障害物だな、とのこちらの心配は外れて、研究目標をもっていない学生が例外といった感じである。ついつい昔の自分を思い出しますが、彼らのほうがきちんとした問題意識を持っていることに教師として頼もしさを感じています。
 このように学生側は条件を整えているとして、教師側はどうなのだと、その辺からヤジが飛んで来そうですが、懐の大きな学科長の千代田邦夫先生の統率の下、手前味噌ながら教師側にも今のところなかなかの纏まり具合を感じています。
 事務局も充実していて、学生への連絡など驚くほどのスピードと木目こまやかさでこなしていただけるので、想定以上だとの印象を受けています。
 次に私が考える、スクールの課題面をとりあげてみたいと思います。
第一に、学生はスクールを終了しても試験合格は保証されていない。時間がかかっても将来全員が受かれば問題ないのであるが、リスクが現実化し針路変更に直面するとき、受験失敗者と知ったうえで受け入れてくれる企業等があるのだろうか。この点に関しての企業に対する啓蒙活動が必要かと思うのです。
 第二に、教育効果面からの提起として、資格試験に受かる前に実務的教育が本当に必要なのかという難問もあるのですが、それは一応おくとして、料理教室とか、ゴルフ教室のように、会計・監査実務を教室で教えることは可能なのだろうかという疑問である。
 これに対しては監査現場の臨場感が体感できる教育方法を開発すること。たとえば、守秘義務の問題が調整出来れば、大手監査法人に学生の体験の場を提供してもらうなどの方法を開発すれば、かなり教育効果も高まるのではないかと思うのです。学生も実務には興味深々で大きな刺激を受けるようです。
 第三はスクールの卒業生の試験受験への参戦が始まると、マスコミは競ってスクール別合格者数を比較報道するであろう。そこでは専門的教育をまともに教育したスクールではなく、専門学校的戦略で受験合格を達成目標にしたスクールに高い評価が与えられることになり、やがては横並びですべてが専門学校化を余儀なくされ、実質は大学院ではなくなるのではないかという懸念です。
 最後に、専門職大学院はその本来的使命達成と学生の期待への対応、をバランスよくやることが課題であることを、スクール関係者の1人として再確認し、学生が業界のひいては社会の役に立つ職業専門家の卵に育つように、微力ながらお手伝いを続けたいと思っています。
 今後とも皆様よりご指導賜りますようよろしくお願い申し上げます。