シリーズ女性リーダーに聞く 第4回

 

「バイアウトファンドのABC」について八木香女史に聞く

女性会計士委員会 片岡 万枝

 
日 時 2006年8月4日(金)18:00〜20:00
場 所 日本公認会計士協会近畿会 大会議室
 
 今回は、昨今のM&Aの主役となりつつあるファンドに注目し、ポラリス・プリンシパル・ファイナンス・のマネージング・ディレクターとしてご活躍中の八木香女史に「バイアウトファンドのABC」というテーマでお話を頂きました。ポラリス・プリンシパル・ファイナンス・は、みずほ証券系のファンドで在阪本社のアパレルメーカー“フーセンウサギ”にも最近出資され、関西にもなじみのあるファンドです。当日の参加者は30名超、男性も多数と夏休み前にもかかわらずかなり活況を呈するものでした。
 八木女史は、1985年にソニー・に入社後、Sony of Canada Ltd.、ニューB&Iマーケティング本部、経営戦略部、グローバルアライアンスオフィスダイレクターと、ソニー・を舞台に国際的なビジネス経験を経られた後、2005年にポラリス・プリンシパル・ファイナンス・にご転身されました。
 当日は、38頁にわたるレジュメをご準備いただき、バイアウトファンドのABCについて非常に判りやすくご講義いただきました。
 ポラリス・プリンシパル・ファイナンス・は、原則未公開株式を投資対象とするプライベートエクィティ(PE)ファンドです。ファンドとしてどのようなものに投資するか、たとえば、非公開株式・公開株式のバランス、議決権の取得方針、業種アロケーションはあらかじめ資金集めの際に明らかにされており、そのガイドラインに従って日々の投資活動を行っているとのことです。PEファンドは、投資先の企業価値を高めるために積極的に経営に参画し、株主価値の拡大を図ります。この中でも、特に、すでに確立された事業基盤をもっている企業、あるいは事業部門の切り出しに対する投資は、「バイアウト」と呼ばれ、狭義のPEファンド(バイアウトファンド)とされます。
 ファンド投資は、@Finding(案件開拓/案件紹介)、ADue Diligence/投資意思決定プロセス(業界・企業分析調査、企業価値評価)、投資実行の後、BValue-Up(企業価値向上のための施策遂行)、CExit(IPOあるいはトレードセールによる投資回収)というプロセスを経ます。
 実際のところどの程度の確率で案件が投資対象になるのかというと、ほぼ毎日1件、多い場合で1日2、3件の案件がもちこまれますが、実際の投資に至るのは年間3、4件と、かなりの案件がふるいにかけられているのが実態とのことで案件成立の難しさを垣間見た次第です。ファンドマネージャーとして候補企業を選定する際、現株主が株式を譲渡したい理由、具体的な資金需要の有無、事業の成長性、ファンドが企業価値向上に積極的な役割を果たせるかというところが投資家としての目線になるようです。
 安定的なキャッシュフローが見込める事業(ボラティリティが高くない事業)、親会社の傘下でその本来の事業価値が埋没している子会社や事業部門、親会社の自前主義的な政策によりグループ内で内製的な事業を担う子会社/事業部門は、Value-Upの可能性が高くバイアウトファンドに適しているということでした。
 ポラリスの投資案件は、3〜4年のValue-Up期間をへてExitをめざします。この間、非常勤取締役等の派遣によるコーポレートガバナンスの強化、財務リストラ、業務提携先の紹介なども含めた事業支援などによる企業価値の向上を図ります。比較的男性的と考えられがちなファンド業界ですが、案件を獲得してくるハンターとしての狩猟的な側面がある一方で、Value-Upのための孵化期間は保育期間にも似ていて母性的な側面も必要とされるというお話も印象的でした。さまざまな障壁を取り除き、風通しをよくして、従業員の意見を吸い上げ企業価値向上のための施策をおこなっていくValue-Up期間は、我々会計士も公開支援業務などを通じて接点を持つ機会ですが、根気強さが必要ということでは同感でしょうか。八木女史自身はExitのプロセスはまだ経験しておられないということですが、“IPO時の値付けの前の晩は興奮して眠れない”という先輩の言葉を今から楽しみにされているようです。

 非常に限られたお時間の中で、バイアウトファンドの概要を判りやすく説明いただく一方で、活発な質問も飛び交い、とても充実した2時間となりました。
 “シリーズ女性リーダーに聞く”では、今後もトピックなテーマを提供していきながら、各界で活躍されるリーダーとの交流を深めたいと思いますので、男性、女性を問わずご参加いただければと思います。