特集

公認会計士からみたアカウンティングスクール

アカウンティングスクールは何をする所?

木村 安寿

1. アカウンティングスクールの苦悩
 私は、1年半前に関西学院のアカウンティングスクールの教授に就任しました。アカウンティングスクールの生徒は大別して2分類されます。

 @まず第1グループは、社会人のままで、スキルアップのためにアカウンティングスクールに通学している人達です。皆さん本職をもちながら夜学又は土曜学校に通っている方々ですから、志も高く、熱心です。世の中にこんなに勉強好きな人達がいたのかと驚かされる位です。年齢職業も多種多様です。税理士の方が1学年で4〜5人おられたのにも驚きました。
 私はもともとビジネスマン対象のセミナー屋のようなこともしていましたので、社会人には話し易く、先方からの評判も良い(?)と思っています。
 A次に第2グループは、公認会計士試験を目指す人達です。この人達は、多くの場合別の受験校に行きながら当校にも在籍しています。一般的に20歳代と若く勉強熱心で知識レベルや理解力も高いと思います。一方で短時間で多くのことを学び理解し記憶しようという勉学姿勢も見られます。
 私は3科目を担当しており、その科目の特徴は以下のとおりです。
 
科 目 特  徴
会計情報システム
・CPA試験に無関係
・ある程度の実務知識を前提
システム監査

監査役監査
CPA試験に関係
監査役監査の実務説明理解のため
にはある程度の実務経験が必要
 上記Aの受講生は大半が上記@の人達ですが、まれにAの人達が混入することがあります。一方上記Bの受講生はまさに@とAの混在となっています。
 このように@とAで目的や基盤の異なる人達に同じ授業をして、双方から満足されるようなことがあるのでしょうか。@の人達には実務的な裏話が受けるでしょうし、Aの人達には短時間に知識を教えることが好まれるように思われます。このように考えてくるとアカウンティングスクールの科目は@用とA用に明確に区分し、決して混在させないことが一つの方法になります。ところがこの考え方ではCPA受験校と大学院が単に併設されているにすぎず、アカウンティングスクール設立の意義がなくなってしまいます。
 では、我々教師はこの問題についてどう対処すればいいのでしょうか。
 
2. 学校とは? 受験とは?
 私は門真市立第一中学校(ごく普通の?どちらかというと余り良くない学校)を卒業していますが、中学2年の英語の最初の授業のときに、先生が「学校は何をする所か」と生徒に問いかけられました。各生徒はおそらく心の中で「勉強するところ」「教えてもらう所」とつぶやいたと思います。
 先生は「学校は教える所ではない。各自が家で予習し勉強してきた事柄について訓練する所だ。」と説明され、予習は必須であるとおっしゃいました。それを聞いて私は、「それなら先生も楽なもんだ」と思いましたが、その先生は強烈にこわい先生でしたので、反論するそぶりさえみせずに従順に従ったものでした。
 この話を私は今思い出し、「アカウンティングスクールは何をする所?」「先生は何を教える(訓練する)のか」と考えて見ました。即ち、「CPA受験校とは何が違うのか?」ということです。関西の某大学ではCPA受験生用に簿記や財務諸表論の講座を設け、某有名受験校の先生を招いて授業をしているそうです。これがはたして大学でしょうか。それなら大学を閉校し受験校にしたほうがいいのではないでしょうか。
 
3. アカウンティングスクールの意義
 受験校とは、次回出題範囲について1から10まで丁寧に教え、答案作成訓練をする所と思われます。従って実務的裏話や、その周辺知識などについては触れないと思われます。私自身24歳から26歳の3年間某受験校の講師をしましたが、事実上学生と同様に実務や世間を知らずに、ひたすら合格のみを目指して教えていました。
 では、アカウンティングスクールの使命は一体何でしょうか。まず会計及びその周辺での必要知識を広く「教え」、本当に優秀な会計士やビジネスマンを育成することが目的と思われます。ここで「教える」ということを考えてみたいと思います。アカウンティングスクールでは、受験校のように1から10までの知識を全て教えるのではなく、その科目やテーマの面白さ、基盤、他のテーマへの展開の仕方
などを教えるべきだと思います。従って授業中は当然にワクワクする位に楽しく知識欲がどんどん湧き上がる様なものでなくてはなりません。このように楽しい気分で新しい科目の面白さを学べば、法規や社会環境が変化しても、その本質を理解しているために改正点を直ちに吸収できるし、おどおどせずについていけると思います。もし、このような授業ができたならば、受験生にとって一見無関係な科目であっても、将来のために無駄どころか、充分に有意義な講義になると思います。
 では、このような授業ができる実務家教員の条件は何でしょうか。それはその科目やテーマの本質的理解であり、実務への適応力という「実力」があるかどうかだと思います。この実力があればその講義は誰が聞いても楽しく、又参考になるものと思われます。こんなことを言っている私にはこの実力が備わっている訳ではありません。このような教員になれるように日々努力あるのみです。