本部委員だより

排出量取引等専門部会とCSR保証専門部会について

                                                                    排出量取引等専門部会 部会長

CSR保証専門部会 副部会長 魚住 隆太
 
 現在、環境・CSRに関わる部会は、経営研究調査会の中に、排出量取引等専門部会、環境会計専門部会、CSR情報専門部会、CSR保証専門部会があります。その中で、排出量取引等専門部会は、平成17年秋に「排出権取引保証業務に関する実務指針(中間報告)」を作成し、答申として提出しました。しかし、その答申の基礎となる監査・保証実務委員会の「財務諸表監査以外の保証業務等に関する実務指針」が、公開草案のまま最終公表がなされていないため、答申も公表が保留された状態にあります。現在、排出量取引等専門部会は休部中であり、公表されると同時に部会は解散となります。従って、現在協会では、実質的に環境・CSRに関わる部会は、環境会計、CSR情報、CSR保証の3つの専門部会となります。
 排出量取引等専門部会の答申内容は、二酸化炭素(CO2)の排出権取引の基礎となる二酸化炭素排出量について保証を行う場合の実務指針です。また、CSR保証専門部会では、CSR情報の信頼性についての保証の実務指針の作成を進めています。いずれも、非財務情報の保証業務実務指針となるものです。
 これら2つの答申は、来年には公表されると思っています。興味のおありの方は、それらを見ていただければと思います。
 ここから簡単に私のバックグラウンドと部会の状況を報告します。私は、理科系出身で通信機メーカーの開発室と石油製品の販売会社を経て、36歳で2次試験に合格し、監査法人に入社しました。石油製品の販売会社にいたときに、甲種危険物取扱者、公害防止管理者、環境計量士など多くの環境の資格を取得しましたが、ほとんどそれらの資格は活かされていませんでした。監査法人に入社後、数年間は通常の会計監査を実施し、その後、情報管理部で、さらに10年近く前から環境に関する業務を始め、一昨年に法人の子会社を設立し、出向して、現在は環境関連の業務ばかりをしています。
 従って、監査論などは専門学校での受験知識しかなく、専門部会でも監査や保証についての理論的な面では、色々と教わることばかりで、議論についていくのがやっとの状況です。環境・CSRの3つの専門部会では、甲南大学の内藤文雄教授と上智大学の上妻義直教授に顧問として参加していただき、色々とご指導をしていただくだけでなく、実際に作業も率先してされるので部会員一同恐縮し、また、それが部会員にとってもやらなければとの励みにもなっています。
 私は、二酸化炭素排出量や削減量の保証の実務に携わっており、また、環境報告書やCSR報告書の記載情報の信頼性についての保証業務を行っている関係で、部会の議論の実務的な面では、色々と経験から意見が言えることが沢山あり、理論を気にせずに発言して、議論が活発化し、私自身の理論理解にも役立ったりしています。
 部会の雰囲気は、CSR保証専門部会の渡邊泰宏部会長はじめ、特に担当専務理事である佐伯剛近畿会会長が、ざっくばらん(過ぎるところもありますが)であることより、ほとんど本音で楽しく、また、白熱することもあり、大変面白く勉強になります。
CSR保証専門部会としては、従来もそうでありましたが、CSR情報やCSR報告書の算定、作成基準が明確でなく、保証する側の判断規準(クライテリア)として必要十分であるのかとの議論があります。時代の変化とともに利害関係者に有用と考えられる新たな情報を任意で発信を始めつつある状況では、会計基準のような一般に公正妥当と認められた基準を前提とすることには、無理があります。それをもって適切な判断規準(クライテリア)が存在しない、従って保証業務はできない、というのでは、発信する情報について信頼性を付与したいと考える情報発信者や情報の受け手の要望に対して、自らのリスクのみを考えて折角の公認会計士の資質や技能を活用して社会的要請にこたえるという使命を忘れているように思われます。
 もちろんリスクは十分に検討して対処する必要はありますが、基本的に社会の変化とともに、組織の発信情報は多種多様となり、それら情報の信頼性付与のための保証業務を遂行できる能力保有者として、現在のところ公認会計士が一番近い存在と考えます。非財務情報も重要な意義を持つ時代となった現在、公認会計士は、財務情報の監査だけでなく、非財務情報の保証業務についても、前向きに取組んでいくことが社会全体の発展にも貢献し、公認会計士への社会的役割の増大にも繋がるものと考えます。
 なお、個人的意見として、発信する非財務情報にはすべて信頼性付与の審査・監査が必要と考えていません。信頼性を付与することによって、経済的行為の拡大があり、その増差額が信頼性付与のコストを上回るならば、社会的に信頼性付与の行為は、経済原理上も有効であると考えます。