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《韓国について》

 今月は、3月号(中国)に続き、CAPA大阪大会の主要参加国であり、協会の会長にパネルディスカッションに参加して頂く予定でもある韓国について、制度的・会計的バックグラウンドのご紹介をしたいと思います。
 韓国は、財閥体制を経済構造全体を貫く最も大きな特徴としながらも、商法ほかの法制度並びに社会的基盤、米国型企業統治への移行への取り組みにおいて日本と多くの類似性・共通性を有していることがわかりますので、是非ご一読下さい。
 
●大まかなバックグラウンド
 1960年代以降の「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれる驚異的な経済成長を経て、1997年に深刻な通貨危機に陥った韓国では、IMF主導の金融サポートと圧力を受け、金大中政権による4大改革(金融、企業、労働、公共部門)が推し進められました。
 企業部門における改革の一環として、財閥の財務構造の改善及び過剰多角化の解消、経営監視を強化するためのコーポレートガバナンスの強化が進められました。
 コーポレートガバナンス改革においては、大株主・総帥の独占的決定権を牽制し透明な企業経営を実現するため、上場企業における少数株主の権利の強化、取締役会の権限強化や社外取締役制度の導入・拡大、30大財閥による「企業集団結合財務諸表 1 」の作成・公表などに見られるような経営透明性の向上と情報開示の強化が図られました。
 また、1999年の大宇グループ(財閥)の破綻などもあり、経営透明性の向上と関連して、会計監査制度の強化と不正監査への厳罰も重要課題となりました。
 このように、IMF管理体制以降「市場経済システムの定着」として、米国型経営システムの導入が推進していく中で、旧来からの総帥中心の経営慣行の排除、財閥から独立的な機関投資家の育成などの資本市場インフラの整備等への取り組みが行われてきたのです。
 2002年11月7日に金融監督院が企業の透明性向上のための「会計制度改革案 」を発表し、2004年4月1日に会計制度先進化法案を盛り込んだ「証券取引法、株式会社の外部監査に関する法律」(「外監法」)、公認会計士法などの施行令改正案が閣僚会議議決を経て公布され、会計制度改革法案が法制化されることによって、韓国の会計制度は国際的な水準に接近しつつあります。
 
●韓国公認会計士会
 韓国公認会計士会(Korea Institute of Certified Public Accountants, KICPA)は、1945年に12名の発起人で「朝鮮計理士会」の名称で設立され、その後「大韓計理士会」「韓国計理士会」と名称を変更し、1966年に現在の名称となりました。当初の会計士(計理士)の役割は、主に法人設立、清算等の法的手続きと会計監査、決算記帳等が中心でしたが、1963年の証券取引法施行により、その業務は会計監査が中心となりました。
 KICPAは証券先物委員会及び税務関連政府機関の諮問活動を行って、様々な法制化活動をサポートしており、その影響力や役割は次第に大きくなっています。例えば、1994年には非上場会社の監査結果のレビュー2 を、さらに2001年には監査基準制定業務を、それぞれ証券先物委員会から委任されました。 
 KICPAの登録会員数も、1997年の3,896名から2006年には9,285名と、この10年間で倍以上の増加となっており、会計監査の重要性が増したことがわかります。
 
●会計士・会計事務所等
 監査を実施する監査人は、大きく以下の2つに区分されます。
@ 会計法人:公認会計士法第23条の規定による法人。公認会計士10人以上を職員とし、資本金5億ウオン以上で設立されます(上場企業の監査は会計法人のみが担当できます)。会計法人の組織形態は有限会社であり、会計法人の社員は損害賠償請求などに対して資本金の出資範囲内でのみ有限責任を負担しています。
A 監査班:韓国独自の制度で、3人以上の公認会計士が組織する法人格を持たない集団であり、韓国公認会計士会に登録されています。
実質的に支配する企業集団を全て結合して作成する財務諸表。
監査人は監査業務の質的管理のために監査業務に対して金融監督院(上場会社の監査)及び韓国公認会計士会(非上場会社の監査)により監理を受けています。
 
KICPAに登録する会員10,137名(2007年2月28日現在)の内訳区分は以下のようになっており、会計法人への所属が監査人の約8割となっています。
 
区分 監査人 開業一般 休業 総計
会計法人 監査斑
人数 5,783名  1,274名 353名  2,727名 10,137名
 
  さらに、韓国のBig4会計法人 ( 三逸、ハナ安進、韓英、三晸 ) の会計法人全体に対する比率は、所属登録会計士の数及び売上高のいずれも約6割を占めており、韓国内での Big4会計法人の存在は独歩的であると言えます。
 
  三逸  ハナ安進  韓英  三晸
Big4との関係  Pricewaterhouse Coopers DeloitteTouche Tohmatsu  Ernst & Young KPMG
設立年度        1971年   1986年   1982年 1993年
所属会計士の数     2,304名  1,260名  925名   689名
売上高(百万ウオン) 296,265 85,862 60,691 81,751

(データについては、2005年度現在)

●会計制度等
 韓国の会計・開示制度に関わる主な法律として、商法、外監法、証券取引法があります。「企業会計基準」は、外監法第13条の中でその利用が規定されており、また、商法の規定と補完関係にあります。
 「企業会計基準」は、1981年に初めて設定されて以来、1997年までに計9回の改正が行われた後、1998年1月の外監法改正により、会計基準設定権限が金融監督委員会に委譲されたのを機に、同年12月に国際会計基準と合致させる方向で全面改定が行われました。その後2000年7月に、会計基準設定権限が民間独立の会計基準設定主体である韓国会計研究院/韓国会計基準委員会に委譲され、「企業会計基準書」として順次制定されています。
 さらに、2007年3月には、金融監督委員会と韓国会計基準院(2006年に韓国会計研究院から改称)/韓国会計基準委員会が2011年までに国際会計基準を受け入れる作業工程表を公表し、(韓国は自国基準を国際会計基準に統合する方針だったが)資本市場の国際化を推進する政府の方針を受けて、上場企業を対象に国際会計基準を適用する方針を発表しています。
 
●会社区分
 商法上に規定される会社は、適用される開示法令の観点から、以下の3つに区分されます。
@証券取引法対象会社:
  上場・協会登録会社は、証券取引法第186条の2及び3に基づき、年次報告書を年度終了後90日以内に、半期報告書と四半期報告書は各々期間経過後45日以内に金融監督委員会と証券取引所または証券業協会に提出します。これらの報告書はいずれも外監法に基づく外部監査を義務付けられています(四半期報告書は監査人によるレビューのみ)。KSE及びKOSDAQには、それぞれ735社及び974社(2007年3月末現在)の企業が上場しています。
A外監法対象会社:
    資産総額70億ウォン以上の外監法対象会社は、商法上の開示義務以外に、財務諸表(連結または結合財務諸表を含む)を定められた期限内に外部監査人に提出し、監査を受ける義務があります。
  これらの会社は、2004年度で約13,000社あり、その大半が資産区分101-300億ウオンとなっています。また、連結財務諸表を作成している会社は601社となっています。
B外監法対象外会社:
   上記@及びA以外の商法上の会社であり、商法上の開示義務が適用されます。
 
●会計制度改革法案とコーポレートガバナンス
2004年の会計制度改革法案により、外監法・証券取引法・公認会計士法などの法案が改正されました。
 これらは米国SOX法の流れを受けており、主要な内容は以下のとおりです。
 
  新設及び改正の主な内容
外監法
内部会計管理制度(*)の恒久法制化
外部監査人のパートナーローテーションの義務化(上場企業は4事業年度、その他は6事業年度)、監査補助者の交代の義務化(連続する3事業年度以降、3分の2以上の交代)
証券取引法
事業報告書などに対するCEF/CFOの認証義務化
監査委員会に会計または財務専門家を1名以上含める
公認会計士法

独立性強化(**)
(*)  会社が企業会計基準に基づき財務諸表を作成して報告する財務報告体系の信頼性を確保するために、企業内部に設置する会計統制システム
(**) 監査対象会社に対し、会計記録と財務諸表の作成、内部監査業務の代行、財務情報体系の構築または運営、財務調査や価値評価等の妥当性に対する意見の提示等の業務を提供することが制限されました。
 内部会計管理制度に対する支援業務が、独立性に抵触するか否かについては、韓国においても(日本と同様に)問題になっています。
 
<参考>関連する監督・管掌機関等
@金融監督委員会(Financial Supervisory Commission, FSC)
  97年の金融危機を契機に、98年に財政経済部(日本の財務省に相当)から金融監督政策部門を分離する形で設立されました。金融監督の政策面を担当し、主に金融機関に対する監督、証券・先物指標の管理・監督を行います。
A証券先物委員会(Securities and Future Commission, SFC)
  FSC内部に設置された機関であり、主に証券・先物市場におけるFSCの業務を補完しますが、FSCとは独立して業務を遂行する関係にあります。
 B金融監督院(Financial Supervisory Service, FSS)
  FSC傘下の、FSC及びSFC決定事項に関する執行機関。
C証券取引所 
  証券取引法に基づいて課された法人の開示義務に対し、上場企業の場合はKSE(Korea Stock Exchange)が、登録企業である場合は韓国証券業協会(Korea Securities Dealers Association, KSDA)が監督します。 
D韓国会計基準院(韓国会計研究院)(Korea Accounting Institute, KAI)
  1998年9月の韓国政府と世界銀行の間での合意事項に基づき、1999年に設立された独立の民間会計基準設定機構。2006年より韓国会計研究院から韓国会計基準院に改称。2000年1月には外監法第13条第4項が新設され、金融監督委員会は会計処理基準に関する業務を、専門性を持つ民間法人または団体に委託することができるようになり、これに基づいて、韓国会計研究院に会計基準の設定権が委譲されました。 
 
 なお、本稿の作成にあたりましては、関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科教授の杉本徳栄氏に多大なご協力を頂き、また、同氏の著書『国際会計』(2006年、同文館出版)及び翻訳論文「国際会計基準に基づいた韓国の会計教育と公認会計士選抜および教育制度の改善方案」(2007年3月、『ビジネス&アカウンティングレビュー』第2号)を参考とさせて頂きました。この場を借りて、感謝の意を表します。
 
近畿会では、CAPA大阪大会の事前準備及び当日ボランティアを募集しております。この機会に海外の同業者と交流をしてみたい方、国際会議の運営に携わってみたい方、英語が好きな方、中国語や韓国語が出来る方、日常の業務から離れた空気を味わいたい方、単にお祭り騒ぎが好きな方、是非ご参加下さい。
  お申し込み、お問い合わせ等につきましては、下記までご連絡下さい。
 日本公認会計士協会近畿会 CAPA大阪大会事務局
 Tel:06-6271-0400 Fax:06-6271-0415
 E-mail:info@capaosaka.com
 

(文責: CAPA大阪大会実行特別委員会 正司素子)