報 告

第10回金融会計研究会議事録

日 時:平成19年6月14日午前10時〜12時
出席者:近畿財務局  安藤検査監理官 他9名
    近畿会 遠藤副会長 他7名
    京滋会 山口会員
    兵庫会 岡本会員 他1名

 

 
 まず、安藤検査監理官及び蔭山副会長よりそれぞれ開会の挨拶があり、その後以下の2点について意見交換会が実施された。
 
課題1.保証子会社における会計処理について
課題2.その他の複合金融商品の会計処理について
 
議題1.保証子会社における会計処理について

 金融機関が、住宅ローンについて100%子会社に保証を行わせている場合、バブル期の貸出や景気後退に伴う不良債権の増加に適切に対応してこなかったことのほか、貸出競争の激化により信用コストに見合った保証料の確保が困難なため、財務内容が悪化している保証子会社が見受けられる。加えて、100%子会社で実質一体であるにもかかわらず、単体では保証により信用リスクが遮断されているかのような処理により、リスクが適切に反映されているかの懸念がある。住宅ローンは、金融機関にとって重点推進分野であり、貸出資産に占める割合が高い金融機関があり、今後の金利上昇に伴い不良債権が増加する懸念もあることから、以下の検討課題となった。

 
検討課題@
住宅ローンを取り扱う保証会社の場合、保証期間が長期に及ぶことから、一般的に行われている正常先・要注意先1年分、要管理先・破綻懸念先3年分の毀損実績により予想損失率を算定することに妥当性があるのか。また、ローン残高が急増している場合に、上記方法(1-3年ルール)による予想損失の算定に妥当性があるのか。
意見交換の内容
財務局からは、「銀行等金融機関の自己査定に係る内部統制の検証並びに貸倒償却及び貸倒引当金の監査に関する実務指針」(銀行等監査特別委員会報告第四号)にも記載されているように、当面の取扱いとして認められているいわゆる「1-3年ルール」について、住宅ローンのような貸出期間の長い債権に対しても適用することの妥当性について質問が出された。会計士からは、「グルーピングが正しく行われることが可能であれば、データの蓄積が行われることを前提に、将来的には債権の特質に応じた貸出期間及び貸倒実績率の算定も可能になるのではないか。」という意見があった。また、財務局側から、「住宅ローンの残存期間について、6年〜7年程度を見積もり、金融機関との意見相違もなく引き当てた事例があったと聞いているが、同様の事例はご存知か」という質問があり、それに対しては、「確かに、6年〜7年以降において、債務者の生活設計上返済が不能になるケースがあるかもしれないが、それは融資形態が例えばステップアップ金利になっている等、融資の方法にも一定の傾向があるのかもしれない。」という意見があり、また「個人的な感想として、住宅ローンが6年目、7年目になって急速に毀損率があがってきているという実感はない」という意見もあった。

検討課題A

保証料を支払っている場合があるが、親会社における予想損失率の算定子会社の受取る保証料のみでは子会社として採算があわず、親会社が追加上、追加保証料を毀損としてとらえる必要は無いのか。(顧客から徴求している保証料ではまかなえず、親会社が追加保証料を支払っている場合は、実質、住宅ローンから毀損しているのではないか。)また、連結決算においては、一般貸出(親会社)の貸倒実績率を再算定する必要は無いのか。
 
意見交換の内容:


 

 

 

財務局からは「子会社の損失を補填することを目的として親会社が追加保証料を支払うのであれば、実質的には親会社に毀損が発生しており、当該毀損分を親会社で計上する必要は無いのか?」という質問呈示があった。それに対して会計士側からは、「まず追加保証料の性質の把握をする必要があると思う。その追加保証料の性質が明らかに損失補填であるならば、何らかの手当ては必要になるかもしれない。一方で、一般的に保証会社が予め取り決めた保証料率では採算が合わない場合、追加請求や次回の料率に反映させることは経済合理性のある行為である。」という意見があった。それに関連して、「外部の保証会社と比較して、明らかに乖離した料率を支払っているのかどうかが一つの判断基準になるのではないか。」という意見もあった。財務局からの「連結決算における再算定の要否」の質問については、まず「連結決算においても住宅ローンのグルーピングの課題が大きくあり、そのグルーピングができない現状では、簡便的な方法として、どこまでが許容範囲かが問題なのではないか」という意見があった。また、「信用金庫等は、連結計算書類を作成していないので、単体の計算書類に保証子会社の保証がある住宅ローンの実態が充分反映されないおそれはある」という新たな問題提起もあった。
 
   
課題2.その他の複合金融商品の会計処理について
 

多くの金融機関において仕組債が購入されている。通常の債券では、信用リスクに応じてクーポンが決まるが、高クーポンを望むのであれば、格付けの低い発行体を選ぶ必要がある。しかし、仕組債の場合は、発行体の格付けが高いにもかかわらず高クーポン(通常1年目のみ)であるのは、複雑なリスクを抱えることの見返りであり、典型的なハイリスク・ハイリターン商品である。また、最近、仕組商品として、仕組債ではなく仕組預金、仕組ローンを購入する傾向がある。仕組商品については、その複雑なリスクを有する特性から、会計処理においても留意が必要であることから、以下の検討課題となった。

検討課題@:
  複合金融商品(仕組商品)については、原則区分せず、一体処理することとされている。しかしながら、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産や金融負債に及ぶ可能性がある場合、もしくはその可能性がない場合であっても、損益を調整する複合金融商品については区分処理されることとされている。どのような場合に時価評価が必要か。
   
意見交換の内容:
  財務局からは個別複合金融商品の事例もあげて時価評価の要否について質問があった。会計士側からは、「どの商品を評価する際も、金融商品会計にしたがって処理することになるが、実務的には当該金融商品が「損益を調整する」ものであるかどうかを判定するのが難しい」という意見があった。財務局側からも「どの複合金融商品をみても、広い意味では「損益を調整する」商品であるようにもみえる」という意見がだされたが、個別商品について要否の議論とはならなかった。
 
 
検討課題A:
  繰延税金資産の回収可能性を判断するに当たって、収益計画の妥当性を判断するとき、仕組債の保有が多い金融機関においては、将来予測をするときに過去の実績を利用することが可能か。(仕組債において、高いクーポンを獲得できている状況は、コールがかかることが通常であり、高いクーポンを維持できるかについては疑義がある。)
   
意見交換内容:
  この点については、会計士側から「この点については、過去における仕組債の保有状況や仕組債の種類、金融機関の資産に占める割合等、全く各金融機関の個別の状況により判断されると思う。」という意見がだされた。
   
検討課題B:
  満期保有目的有価証券の満期まで所有するとは、「企業が償還期限まで所有するという積極的な意図と能力に基づいて保有することをいう」とされているが、仕組債について、意思と能力はどのように確認すればよいのか。
   
意見交換内容:
  会計士側からは「実務的に、仕組債が20年や30年等の長期にわたる場合、満期まで所有する初期の意図は確かめられるとしても、所有する能力を確かめるのは難しい。例えば、30年満期までの資金繰計画等を作成していることは通常ないので、満期まで所有する能力は確かめられない。」という意見があった。また、「これらの長期の仕組債については、本来的には満期保有というような観点で保有するのは困難かもしれない。また、別の問題として、会計上は時価評価するということになるが、このような金融商品は資金運用に困っている地域中小金融機関に販売されているケースが多いが、金融機関のリスク管理上は重要な問題であり、このような金融商品については、もっと販売規制をするべきではないか」という疑問提起もなされた。
   

 以上の議論の後、吉武審査業務課長により閉会の挨拶がなされ、定刻に意見交換会は終了した。

 
(感想)
 いずれの問題も、現在特に地域金融機関に共通している問題であり、意見交換をすることは有意義であったと思う。ただ、約2年半ぶりに開催されたということであり、双方どこまで意見を言えばよいか少し遠慮があったかもしれない。住宅ローンの予想損失等の問題は長期的な議論が必要なので、今後も継続的な議論ができればなお有意義になると思う。

(文責:河津)