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歴史的事実から学ぶ大切さを |
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公認会計士 三馬忠夫 |
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昨年(2006年5月10日)金融庁は、みすず監査法人(旧中央青山監査法人)に対して公認会計士法に基づいて「二ヶ月間の業務停止の処分」を行った。 これまで、みすず監査法人は、わが国監査業界で四大監査法人の一角を占めていたが、その監査業務には処分を受けるべき重大な瑕疵があったということになったのである。 処分理由としては、「虚偽証明期間が長期に亘っていること、審査体制の不備が認められること、カネボウ粉飾事件が刑事問題になっていること」であった。 その他の大手監査法人の監査が、みすず監査法人と異なり不備が認められないほどの優秀なものであったわけではないだろうが、みすず監査法人においては、関与社員の逮捕という極めて厳しい状況であった事が金融庁処分の厳しさを物語っている。 この処分を受けて、その後、みすず監査法人は改革に取り組んできたが、その後に明らかになった日興コーディアルに関する不正会計問題によって窮地に立ったことから、2007年7月31日みすず監査法人は解散した。 大手監査法人であったみすず監査法人の消滅は、証券市場における「監査難民」を作り出す危険性もあったが、この問題は最小限で回避されることとなったようである。また、みすず監査法人に所属する多くの公認会計士・会計士補及び一般職員については、その他の監査法人へと移籍した。 新日本監査法人へは、約1,065人、監査法人トーマツへは約400人、あずさ監査法人へは約280人、みすず監査法人の一部京都事務所が約186人で独立し、中堅監査法人・太陽ASG監査法人へは約60人が移籍したと言われている。 |
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大手監査法人が消滅するという事態に対して、日本公認会計士協会はどれ程の会員支援が行えたかわからないが、ある意味、金融庁の庇護の基に成長してきた公認会計士業界は、何ら抵抗を示すことすら容易に出来なかったのではないかと思われる。 みすず監査法人に対する処分後における金融庁の公認会計士監査に対する対応は極めて厳しい状況になっている。これまで進められてきた行政改革、すなわち「官から民へ」と「事前指導から事後規制へ」と言う流れであったものが、こと公認会計士監査に関しては、官の必要な介入とその結果の処分が増加したように思われる。 このような状況を作ってしまったことは、これまでの監査業界(日本公認会計士協会を中心として)が、長年に亘る粉飾決算を真摯に受け止めてその再発に注力することを怠ってきたツケが回ってきたように思われるが。 |
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粉飾決算事例は、バブル経済崩壊後に多発したようにもおもわれるが、決してそうではなく、これまでも長年、監査不祥事は起こっていたものの右肩上がりの経済社会ではそれほど問題視されてこなかったことから、監査業界もその雰囲気に安住してきたからかもしれない。 日本公認会計士協会では、こうした粉飾決算事例が多発する監査フィールドの改善改革を進める目的で「CPE」継続的専門家教育制度の導入を図り、会員である公認会計士に義務化しているけれども、その効果の程は定かではない。 本来、職業専門家(=プロ)としての公認会計士に自らの実力増加の為に一定単位を義務づけることで果たしてどれ程の効果が望めるのであろうか。CPE制度が進められていく中において、公認会計士の専門雑誌と言われている「会計監査ジャーナル」の掲載文書で、「この記事は○○単位」と記載表現が付されている。なんと情けない状況にあることか、専門誌として誠に情けない状況に置かれているのである。そんな「○○単位」の記事を読むことよりは、もっと必要な事(監査力を磨く方法)があるのではないかと思われる。 |
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フランスの作家サン・テグジュペリが表した「星の王子さま」と言う童話の中に記されている文書『心で見なくちゃ、ものごとは良く見えないってことさ、肝心なことは、目に見えないんだよ』にあるように、監査を行っている一人一人の公認会計士が自らの見方をしっかりもっている事が大事だと思われるが、「星の王子さま」さえ読んでいないのではないかと思われる。 大手監査法人の解体消滅という歴史的事実とその原因にしっかりと立ち向かってみることと、学ぶべき教材(?)を自身で確認することこそ必要である。 私たちは、少人数で毎月定例の研究会を進める中で「これからの公認会計士に求められるもの」として纏めたものがあります。それらの文言を参考にして頂いて、これからの監査業務を進められ、監査力を高められる事を期待しています。 |
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これからの公認会計士に求められるもの |
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