報告

第231回 企業財務研究会報告

監査会計委員会

平成19年9月14日(金)午前10時より、近畿財務局8階 大会議室において第231回企業財務研究会が開催された。
出席者
近畿財務局  瀬戸統括証券監査官   他8名
近 畿 会  中務会長      他4名
京 滋 会  長谷川会長      他3名
兵 庫 会  中津会長        他5名
  今回は兵庫会が発表の当番会であり、今回取り上げたテーマは「引当金に係わる追加情報と会計方針の変更の事例分析」である。このテーマを取り上げた背景は前回兵庫会が当番会の時に「引当金の開示事例分析」を取り上げたのであるが、その際、同じような引当金を設定した場合の会計上の取り扱いが会社によって会計方針の変更でとしていたり、追加情報としていたりという具合にその扱いに混乱が見られた。前回はこのことに深く係わることはなかったのであるが、今回はこの取り扱いの違いにフォーカスして引当金別に事例分析を試みることとした。
(1)ポイント引当金及び製品保証引当金

ポイント引当金
  平成17年4月期から平成19年3月期までの間に会計方針の変更としての事例20社、追加情報としての事例が24社あった。

製品保証引当金
  平成17年4月期から平成19年3月期までの間に会計方針の変更としての事例が13社、追加情報としての事例が20社あった。
  これらの事例のほとんどが新たに引当金を計上するケースであり、また、その多くは、@重要性が増加したため、ないしは、A見積もりが可能となったことが理由(@及びAを理由とするケースも多数ある)として開示されている。ただし、その開示方法として会計方針の変更としているケースと追加情報としているケースが混在している。ただし、監査委員会報告第77号及び同第78号に照らせば、会計方針の変更ではなく追加情報として記載すべきケースが殆どではなかったのではないかと考えられる。
(2)利息返還損失引当金
 平成18年10月13日付の「消費者金融会社等の利息返還請求による損失にかかる引当金の計上に関する監査上の取扱い」(日本公認会計士協会業種別委員会報告第37号)の公表に伴い、20社が損失見込額を初めて引当計上している。そのうち会計方針の変更とした 会社は7社で、追加情報とした会社は13社であるが、それぞれの記載内容を比較すると、以下のような取扱いの違いがある。
会計方針の変更とした6社と追加情報とした4社は、業種別委員会報告第37号の適用に伴い計上とだけ記載しており、理由は記載されていない。
会計方針の変更とした1社は、貸金業規制法の改正及び重要性の増加を理由としているがそれならば本来追加情報となるのではないかと思われる。
 ・ 追加情報とした会社のうち5社は、業種別委員会報告第37号により引当金の算定方法等が整理されたこと又は合理的な見積りが可能となったことを記載しているが、会計方針の変更の理由として記載される内容ではないかと思われる。
 業種別委員会報告第37号の公表をもって会計基準等の改正があったと判断したか、業種別委員会報告第37号の適用をもって見積り方法の変更と判断したかの違いにより、取扱いの違いが生じたものと考えられる。
(3)返品調整引当金
 過去2年間に返品調整引当金につき会計方針の変更を行っている会社は11社、追加情報を記載している会社は4社あるが、会計方針の変更としているものの中に、見積り方法の変更に当たる事例、その理由として重要性の増加を挙げている事例等追加情報にすべきと思われるものがある。
(4)閉店損失引当金
 過去2年間に閉店損失引当金につき会計方針の変更を行っている会社は2社、追加情報として記載している会社は3社ある。会計方針の変更としているもので、採算店舗対策の抜本的な見直しにより相当数の店舗を閉鎖する意思決定をしたことを理由として記載している事例があるが、事実の変更又は重要性の増加ということであれば、追加情報とすべきではないかと思われる。
(5)修繕引当金
 修繕引当金を新たに設定するにあたり、会計方針の変更とした事例は2社、追加情報とした記載事例は3社である。
 会計方針変更の理由の記載は「四半期報告制度等を踏まえ・・期間損益のより一層の適正化及び財政状態の健全化を図る・・」「当社連結グループの会計方針に合わせることを目的として・・」とされていたが、なぜ当期になって会計方針を変更しなければならなかったのかについての記載はなされていなかった。重要性が増したため簡便な会計処理方法から本来の会計処理に変更したのであれば本来追加情報とすべきものではないかと思われるが、親子会社間の会計処理の統一を目的にした変更は、より適切な会計処理の適用を容易にするために正当な理由に基づく変更として認められている。
 追加情報の記載については、新たな会計事実の発生にもとづくもの、合理的な見積が可能となったとするものがあったが、後者については、重要性があれば過年度においても合理的な見積を行い引当金の計上をすべきであると考えられる。
補論〈米国会計基準と本邦論点整理〉

 最後に、今回の事例分析に別の角度から光を当てるべく、補論として、
「会計上の変更」をめぐる米国の今日とわが国の明日に触れておきたい。
 米国会計基準は、現行SFAS154号〈会計上の変更と誤謬訂正〉において、
会計原則の変更の影響は原則として遡及適用の方法で報告するものと定めている。
換言すれば、「会計方針の変更」と「追加情報」の選択問題は、わが国の場合と異なり、
開示内容の実質的な違いに帰着することとなる。
 翻って、わが国企業会計基準委員会は、平成19年7月9日に〈過年度遡
及修正に関する論点の整理〉を公表し、本邦会計基準にも財務諸表の過年
度遡及修正を取り入れるための環境整備に乗り出した。ならば、現に開示の現場において「会計方針の変更」と「追加情報」との混乱がみられる状況に鑑みて、両者の選
択問題に明確なガイドラインを示すべく、いま一度引当金会計の本質を検討する必
要があるように思われる。

次回は、近畿会の発表当番となり、平成20年1月17日(木)の開催と決定した。

以上