特集
企業会計基準第13号
「リース取引に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第16号
「リース取引に関する会計基準の適用指針」について

借手の会計処理を中心に

前企業会計基準委員会・専門研究員
出田吉孝

1はじめに
 企業会計基準委員会は、平成19年3月30日に、企業会計基準第13号「リース取引に関
する会計基準」(以下「会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第16号「リース取
引に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という。)を公表した。
 会計基準は、平成5年6月に旧大蔵省(現在の金融庁)企業会計審議会第一部会から公
表された「リース取引に係る会計基準」(以下「改正前会計基準」という。)を改正したも
のであり、適用指針は、平成6年1月に日本公認会計士協会から公表された「リース取引
の会計処理及び開示に関する実務指針」(以下「改正前指針」という。)を改正したもので
ある。
 この改正に伴い、従来、所有権移転外ファイナンス・リース取引に関しては、一定の注
記を条件として、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理(以下「賃貸借処理」と
いう。)を行うことができたが、今後は、当該処理が廃止され、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理(以下「売買処理」という。)に統一されることとなった。
 ここでは、所有権移転外ファイナンス・リース取引の借手の会計処理を中心に述べてみ
たい。なお、本稿の意見にわたる部分は私見であることをあらかじめお断りしたい。
 
2リース取引の定義及び分類
 
(1)リース取引の定義
  「ファイナンス・リース取引」
  「ファイナンス・リース取引」とは、次の@、Aいずれも満たすリース取引をいうとし
ている(会計基準5)。
@「解約不能のリース取引」
   「解約不能のリース取引」とは、「リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引」又は「これに準ずるリース取引」をいう。
 このうち、「解約不能のリース取引に準ずるリース取引」とは、法的形式上は解約可能であるとしても、解約に際し、相当の違約金(以下「規定損害金」という。)を支払わなければならない等の理由から、事実上解約不能と認められるリース取引をいう(会計基準36)。
事実上解約不能と認められるリース取引とは、例えば、次のようなリース取引である。
   解約時に、未経過のリース期間に係るリース料の概ね全額を、規定損害金として支払うこととされ ているリース取引
  解約時に、未経過のリース期間に係るリース料から、借手の負担に帰属しない未経過のリース期間に係る利息等として、一定の算式により算出した額を差し引いたものの概ね全額を、規定損害金として支払うこととされているリース取引
  A「フルペイアウトのリース取引」
     「フルペイアウトのリース取引」とは、「借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的利益を実質的に享受する」ことができ、かつ、「当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担する」こととなるリース取引をいう。
 「借手が、リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受する」とは、当該リース物件を自己所有するとするならば得られると期待されるほとんどすべての経済的利益を享受することである(会計基準36)。
 「リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担する」とは、当該リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担することである(会計基準36)。
    「オペレーティング・リース取引」
     「オペレーティング・リース取引」とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいう(会計基準6)。
  (2)ファイナンス・リース取引の分類
     ファイナンス・リース取引は、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの(以下「所有権移転ファイナンス・リース取引」という。)
と、それ以外の取引(以下「所有権移転外ファイナンス・リース取引」という。)に分類する(会計基準8)。
 
3ファイナンス・リース取引の判定
  (1)ファイナンス・リース取引の判定
    ファイナンス・リース取引に該当するかどうかについて、その経済的実質に基づいて判断すべきものとされ、@又はAのいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定される(適用指針9)。
  @現在価値基準
     解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額(見積現金購入価額)の概ね90パーセント以上であること(判定の際、リース料総額に含まれる維持管理費用相当額を原則として控除する。)
  A 経済的耐用年数基準
     解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であること(ただし、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、リース物件の中古市場の存在等を勘案すると、上記@の判定結果が90パーセントを大きく下回ることが明らかな場合を除く。)
  (2)所有権移転ファイナンス・リース取引の判定
     ファイナンス・リース取引と判定されたもののうち、次の@、A、Bのいずれかに該当する場合に所有権移転ファイナンス・リース取引とされ、それ以外を所有権移転外ファイナンス・リースとされる(適用指針10)。
  @所有権移転条項付リース
    リース契約上、リース期間終了後又はリース期間の中途で、リース物件の所有権が借手に移転することとされているリース取引
  A割安購入選択権付リース
    リース契約上、借手に対して、リース期間終了後又はリース期間の中途で、名目的価額又はその行使時点のリース物件の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利が与えられており、その行使が確実に予想されるリース取引
   B特別仕様物件のリース
    リース物件が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたものであって、当該リース物件の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース取引
  【留意点】
    改正前は、所有権移転ファイナンス・リース取引に該当しないリース取引のうち、現在価値基準又は経済的耐用年数基準を満たすものを所有権移転外ファイナンス・リース取引としていたが、改正後は、まず、ファイナンス・リース取引の判定を行い、ファイナンス・リース取引と判定されたもののうちで、所有権移転ファイナンス・リース取引に該当するかどうかの判定を行い、該当しないリース取引が所有権移転外ファイナンス・リース取引となる。
 
4 所有権移転外ファイナンス・リース取引の借手の会計処理
  (1)リース取引開始日の会計処理
  @リース資産及びリース債務の計上
    ファイナンス・リース取引の借手は、リース取引開始日に、売買処理により、リース物件とこれに係る債務をリース資産及びリース債務として計上することとされる(会計基準10)。
   
仕訳

(借方)リース資産×××                   (貸方)リース債務×××
借手側の表示(会計基準16、17)

リース資産
原則として、有形固定資産、無形固定資産の別に、一括してリース資産として表示する。
ただし、有形固定資産又は無形固定資産に属する各科目に含めることもできる。

リース債務
貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するもの
流動負債に属する。
貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するもの
固定負債に属する。
  Aリース資産及びリース債務の計上額
     リース資産及びリース債務の計上額は、原則として、リース契約締結時に合意されたリース料総額からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によるとされている(会計基準11)。この場合のリース資産とリース債務の計上額は、次のとおりとなる(適用指針22)。
  借手において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合
     リース料総額(残価保証がある場合は、残価保証額を含む。)の割引現在価値と貸手の購入価額等とのいずれか低い額による。
  借手において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかでない場合
     リース料総額(残価保証がある場合は、残価保証額を含む。)の割引現在価値と見積現金購入価額とのいずれか低い額による。
     
   
割引現在価値の算定に用いる割引率
(適用指針17、22)
貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率を用いる。
貸手の計算利子率を知り得ない場合は借手の追加借
入に適用されると合理的に見積られる利率を用いる。
     
  (2)支払いリース料の処理
     リース料総額は、原則として、利息相当額部分とリース債務の元本返済額部分とに区分計算し、前者は支払利息として処理し、後者はリース債務の元本返済として処理する。全リース期間にわたる利息相当額の総額は、リース取引開始日におけるリース料総額とリース資産(リース債務)の計上価額との差額になる(適用指針23)。リース料支払時には、次のように会計処理されると考えられる。
   
仕訳

(借方)リース債務×××     (貸方)現金及び預金×××

    支払利息×××
 
     
  (3)利息相当額の各期への配分
     利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法は、原則として、利息法による(会計基準11)。利息法とは、各期の支払利息相当額をリース債務の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定する方法である。当該利率は、リース料総額の現在価値が、リース取引開始日におけるリース資産(リース債務)の計上価額と等しくなる利率として求められる。
   
  (4)維持管理費用相当額
     現在価値基準の判定上、維持管理費用相当額をリース料総額から控除する場合は、リース料総額から維持管理費用相当額の合理的見積額を差し引いた額により、リース資産及びリース債務の計上額を計算することとされている(適用指針25)。
     
  (5)リース資産の減価償却
  @減価償却の方法
    所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産では、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により減価償却を行うこととなるが、所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る資産は、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により減価償却費を算定する必要はなく、定額法、級数法、生産高比例法等の中から企業の実態に応じたものを選択適用することとなる(会計基準12、適用指針28)。なお、残存価額を10%とした場合のいわゆる9分の10定率法も認められている(適用指針112)。
  A償却年数
     所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の償却年数については、原則として、リース期間を耐用年数とするが、リース期間終了後の再リース期間をファイナンス・リース取引の判定においてリース期間に含めている場合は、再リース期間を当該耐用年数に含める(会計基準12、適用指針27)。
  B残存価額
     所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の残存価額については、ゼロとするが、リース契約上に残価保証の取決めがある場合は、原則として、当該残価保証額を残存価額とする(会計基準12、適用指針27)。
  (6)借手のリース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い
  @会計処理
    リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は、次のいずれかの方法を適用することができることとされている(適用指針31)。
   リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができる。
この場合、リース資産及びリース債務は、リース料総額で計上され、支払利息は計上されず、減価償却費のみが計上される。
   利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法として、定額法を採用することができる。
  (3)の設例の数値で示すと、
    (リース料総額60,000千円−リース資産計上額48,000千円)×1か月/60か月=200千円が毎月支払利息として計上される。
  A判断基準
     リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、次の割合が10パーセント未満である場合とされている(適用指針32)。
   
    前記の未経過リース料の期末残高からは、次のものは除くこととされている。
  「少額リース資産及び短期のリース取引に関する簡便的な取扱い」により賃貸借処理を行うこととしたもの
  利息相当額を利息法により各期に配分しているリース資産に係るもの(これによって、上記の割合が、期末に急に10%以上になったとしても一部の リース取引を利息法で処理することにより、当該 割合を10%未満に抑えることが可能である。)
  【留意点】
     所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の期末残高は、「未経過リース料の期末残高」と二重になる場合には、分母の「有形固定資産及び無形固定資産の期末残高」から、除くことが適当であると考えられる。
     
  (7)少額リース資産及び短期のリース取引に関する簡便的な取扱い
  @会計処理
     
    個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合は、オペレーティング・リース取引の会計処理に準じて、賃貸借処理を行うことができる(運用指針34)とされている。
  A判断基準
    個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合とは、次のいずれかを満たす場合とする(適用指針35)。
  重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料総額が当該基準額以下のリース取引
 この場合の基準額は、通常取引される単位ごとに適用されるため、リース契約に複数の単位のリース物件が含まれる場合は、当該契約に含まれる 物件の単位ごとに適用できる。
  リース期間が1年以内のリース取引
  企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース 取引で、リース契約1件当たりのリース料総額(維持管理費用相当額又は通常の保守等の役務提供相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理的見積額を除くことができる。)が300万円以下のリース取引
    なお、この場合、1つのリース契約に科目の異なる有形固定資産又は無形固定資産が含まれている場合は、異なる科目ごとに、その合計金額により判定することができるとされている。
 
5 年度の財務諸表におけるファイナンス・リース取引の注記(借手)
 リース資産について、その内容(主な資産の種類等)及び減価償却の方法を注記する。
 なお、前記の注記については、重要性が乏しい場合には要しないものとされる(会計基
準19)
 
6 適用時期等
  (1)年度財務諸表への適用
  @原則的な適用時期
    会計基準は、平成20年4月1日以後開始する年度から適用する(会計基準23)。
  A早期適用
    年度の財務諸表について、平成19年4月1日以後開始する年度から、早期適用することができるとされている(会計基準23)。
 また、年度で早期適用を行う場合、中間期には適用しないことができる(会計基準25)。 中間期に適用しない場合の取扱いは、以下のとおりとなる。
 
年度財務諸表に係る早期適用年度の中間財務諸表(会計基準を適用しない場合) 
改正前基準で必要とされていたリース取引に係る注記を継続する。なお、ファイナンス・リース取引の判定及び会計処理は、改正前基準に従うことに留意が必要である。
 
年度財務諸表に係る早期適用年度の年度財務諸表(中間期で会計基準を適用していない場合)
下期だけの適用ではなく、年度の期首から会計基準を適用する必要がある。
 中間・年度の会計処理の首尾一貫性の注記は要せず、中間連結財務諸表及び中間財務諸表に会計基準が適用されておらず、改正前会計基準で必要とされていた注記がなされている旨を記載する。
     
  (2)四半期財務諸表への適用
  @原則的な適用時期
    四半期財務諸表に関しては、年度の財務諸表より一期遅れて、平成21年4月1日以後開始する年度に係る四半期財務諸表から適用することとされている(会計基準24)。
  A早期適用
    四半期財務諸表について、平成20年4月1日以後開始する年度に係る四半期財務諸表から早期適用することができるとされている(会計基準24)。この四半期財務諸表に係る早期適用年度の取扱いは以下のとおりとなる。
  四半期財務諸表に係る早期適用年度の四半期財務諸表
(早期適用しない場合)
     所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る残高(賃貸借処理による場合)が前年度末と比較して著しく変動しているときには、改正前基準で必要とされていた注記(オペレーティング・リース取引に係る注記を除く。)を記載する。なお、ファイナンス・リース取引の判定等は、改正前基準に従うことに留意が必要である。
  四半期財務諸表に係る早期適用年度の年度財務諸表(四 半期財務諸表で適用していない場合) 下期だけの適用ではなく、年度の期首から会計基準を適用する必要がある。
     
    図表 適用時期
   
平成20年3月期中間期 年度早期適用の場合に、
適用しないことができる
平成20年3月期 年度−早期適用可能
平成21年3月期、第1四半期
第2四半期、第3四半期
四半期−早期適用可能
平成21年3月期 年度−原則的な適用時期
平成22年3月期第1四半期、 四半期−原則的な適用時期
 
7 適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い
この取扱いについては、紙幅の関係上、該当項を記させて頂いた。ご参照頂きたい。

 
借  手 結論の背景
原則的な取扱い 適用指針77   適用指針130、
132、[設例9]
簡便的な取扱い 適用指針78 @、A
賃貸借処理+注記 適用指針79 B
【留意点】
@ この簡便的な取扱いを利用する場合であっても、既存分のファイナンス・リース取引の判定及び会計処理は、会計基準及び適用指針に従う。
A 未経過リース料期末残高相当額(利息相当額控除後) を取得価額とした場合、会計基準適用後の残存期間における利息相当額については、定額法で配分することができる(利息法もある)。 
B この注記処理による場合であっても、ファイナンス・ リース取引の判定及び注記すべき金額の算定は、会計基準及び適用指針に従う必要がある。したがって、従来と注記の対象となるリース取引が変動する場合がある。
 
8 四半期財務諸表における取扱い(適用指針84)
 既存分のリース取引について注記方式を採用した場合(適用指針79)、一定の場合において四半期財務諸表に注記が必要となることを定めている(適用指針84)。
 
9 適用初年度のリース取引の取扱い(適用指針86)
 会計基準を平成20年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用する場合、原則的には、リース取引開始日が平成20年4月1日以降であれば、会計基準が適用されるが、リース取引開始日が平成20年4月1日以降であっても、平成20年4月1日前に契約
を締結したリース取引については、会計基準適用初年度開始前のリース取引として取り扱うことができるとされており、3月31日決算会社については、税務との調整が図られてい
る。
 
10 中小企業への適用
 会計基準及び適用指針は、全ての会社に適用されるが、会計基準等を中小企業に適用する際の取扱いについては、「中小企業の会計に関する指針」(日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所、企業会計基準委員会の4団体により公表)の平成20年改正に係る公開草案が平成20年1月18日に公表されている。平成20年2月1日までコメントを受け付けた後、公表されることになると思われる。詳細は、各団体のホームページを御覧頂きたい。