取材

引当金に係る『会計方針の変更』と『追加情報』

〜将来の過年度遡及修正の適用をにらみながら〜

 

岡本 健一郎氏
谷 保廣氏

 自由論題の部(D)「引当金に係る『会計方針の変更』と『追加情報』〜将来の過年度遡及修正の適用をにらみながら〜」では、兵庫会の仲尾彰記副会長のご挨拶に始まり、兵庫会監査委員長の岡本健一郎会員及び兵庫会会計制度委員長の谷 保廣会員によりそれぞれ発表がなされました。
 主な発表内容及び論点を以下に記載します。
第1部 発表者:兵庫会 岡本健一郎会員

 1.会計基準・監査基準の確認

(1) 企業会計原則【注解】18
(2) 監査委員会報告第77号「追加情報の注記について」会計方針の記載に併せて注記すべき追加情報として、以下の事項が挙げられている。
@ 会計上の見積りの変更
A 重要性が増したことに伴う本来の会計処理への変更

B

新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の採用

(3)

監査委員会報告第78号「正当な理由による会計方 針の変更」
  上記(2)に記載した事項は、会計方針の変更に類似するが会計方針の変更には該当せず、追加情報の注記として取り扱う旨明記されている。
   
 2. 問題の所在
   引当金の新規設定や既に設定している引当金の計上方法の変更は、企業を取り巻く内外の環境変化に起因することが多い。引当金の計上方法が変更された場合、会計方針の変更に該当するのか、追加情報の開示が適切なのか迷うケースがあり、実務上の取り扱いが混乱していると思われる。
   
 3. 具体的事例分析
   JICPA有価証券報告書検索データベースを利用して抽出した過去2年間のデータを変更理由別に分類して、監査上の取り扱いの妥当性を分析した。
(筆者注:紙面の都合により【事例】の記載は省略)

(1)

ポイント引当金(会計方針の変更:20件、追加情 報:24件)
  【事例3】は、「会計慣行の定着」を理由とした会計方針変更の事例だが、当該変更による段階損益への影響はなく、変更理由の説明が不十分であると考える。
  【事例5-1、5-2】は、「合理的算定が可能になった」「ポイント残高の重要性が増した」という点で変更理由は同一だが、一方は会計方針変更、他方は追加情報としている。「重要性が増した結果、合理的に見積って引当計上した」というのが実態であり、本来は前者についても追加情報とすべきであったと思われる。
   

(2)

製品保証引当金(会計方針の変更:13件、追加情 報:20件)
  【事例2-1、2-2】は、「重要性が増した」ことが会計方針変更の理由であるが、本来は追加情報とすべきであったと思われる。
【事例3-1、3-2】は、ポイント引当金の【事例5】と同様の事例である。
   

(3)

修繕引当金(会計方針の変更:4件、追加情報:5 件)
   【事例2】は「重要性が増した」ことが会計方針変更の理由であるが、本来は追加情報とすべきであったと思われる。
   

(4)

返品調整引当金(会計方針の変更:19件、追加情 報:2件)
   【事例2-1、2-2】は、「合理的な返品実績の見込方法が確立された」「より精緻な見積りが可能になった」ことによる変更事例であるが、一方は会計方針変更、他方は追加情報としている。本来は前者についても追加情報とすべきであったと思われる。
   

(5)

利息返還損失引当金(会計方針の変更:7件、追   加情報:38件)
   
 4. 総括
   引当金に係る処理を変更した場合に、「何らかの形で開示されればいい」という感覚があるのではないか。実務が混乱している現状を踏まえた上で、取り扱いに関する今後の整理が望まれる。
   
第2部 発表者:兵庫会 谷 保廣会員
 1. 米国会計基準

(1)

総説
   「会計上の変更」について、APB20(1971年)では「原則として遡及適用は不要」であったが、SFAS154(2005年)においてAPB20が廃止され、「原則として遡及適用が必要」という取り扱いになった。また、減価償却方法の変更については、APB20では会計方針の変更という取り扱いであったが、SFAS154では会計見積りの変更という取り扱いになった。
   

(2)

米国における引当金会計の取扱い
   引当金の計上方法の変更は、専ら「会計見積の変更」や「新事実の発生」と考え、「見積りの問題」であるという考えが強い。従って、日本のように、会計方針の変更との実務上の混乱は見受けられない。
 この背景として、会計方針の変更として扱った場合、全開示年度について遡及修正が必要になってしまう点も多少影響しているかも知れない。
   
 2. 本邦論点整理
   会社法では過年度遡及修正を妨げない旨の条項が織り込まれている(会社計算規則第161条第・項)。また、「過年度遡及修正に関する論点整理」等が公表され、基準の適用に向けて準備が進められている。
   
3. 問題提起〜会計方針と会計見積
   減価償却に関しては、そもそも固定資産の費消パターンまで合理的に見積ることが困難であるため、方針を定めた上で一定のパターンで規則的に償却することとしているものであり、会計方針の問題として取り扱うのが適切であると考える。
 引当金の処理変更に関しても、減価償却方法の変更に係る取り扱いが参考になると思われる。
   
 4. 第2部まとめ
   現状は、会計方針の変更/追加情報のいずれも注記事項であるため、実務上混乱があったとしても著しい差異はないが、今後、過年度遡及修正に係る会計基準が適用されたら影響は大きくなるので、考え方を早期に整理する必要がある。

(文責:三浦 宏和)