報告

IASB&ASBJ特別セミナーの開催を振り返って

近畿会副会長 遠藤尚秀

(監査会計委員会担当)

 
3月度の監査繁忙期を目前に控えた2008年(平成20年)4月10日に、国際会計基準審議会(IASB)と企業会計基準委員会(ASBJ)が合同で、『会計基準のコンバージェンス〜その成果と展望』と題し、以下のプログラムで特別セミナーをホテル阪急インターナショナルにおいて盛大に開催されました(近畿会後援)。
 
10:00  挨拶   遠藤 博志 氏
(財務会計基準機構(FASF) 常務理事)
【第1部】
10:05  「世界規模で広がるIFRSの採用」
 デビッド・トゥイーディー 氏  (Sir.David TweedieIASB議長)
10:25  「IASBの最近の活動状況」山田 辰巳 氏(IASB理事)
【第2部】
11:00 「コンバージェンスに向けた企業会計基準委員会の取組み」
西川 郁生 氏(ASBJ委員長)
11:20 「企業会計基準委員会の最近の活動状況
逆瀬 重郎 氏(ASBJ副委員長)
11:40 質疑応答
11:45   終了
 
 まず、第1部では、IASBのDavid Tweedie議長と日本から唯一の理事としてIASBに参加しておられる山田辰巳理事から、資本市場のグローバル化が進行する中、IASBが作成する国際財務報告基準(IFRS。日本人はアイファース又はイファースと呼ぶ人が多いですが、Sir.Davidはアイエフアールエスと言っていました。)を軸として、EU、米国を含む世界の主要国における会計基準の統一化(IFRSの採用またはIFRSとのコンバージェンス)の動きが加速化し、国際的な規模で会計基準のインフラ整備が急ピッチで行われている点とIASBにおける会計基準設定プロジェクトの計画と進捗状況について具体的な説明がなされました。概略すると以下のような動向が見受けられます。
 
・EU
 域内経済統合の基盤整備として、IFRSの前身の国際会計基準(IAS)を採用することとして、2002年7月に「IAS適用に関する規則」を採択した。当該採択により域内企業には2005年以降、域外企業には2007年以降IFRSまたはこれと同等な基準の適用を義務付け。(いわゆる同等性評価)
 
・米国
2002年10月に米国の会計基準設定主体である財務会計基準機構(FASB)とIASBとの間でコンバージェンスの必要性が確認され(ノーウォーク合意)、2006年2月には2008年までにコンバージェンスの完了等を織り込んだ作業計画(MOU)が合意。
 他方、米国の証券取引委員会(SEC)とEUの間において、2005年4月に「ロードマップ」が発表されて、2009年を目標としてIFRSによる財務諸表を数値調整なくして使用する道筋が示された。これを受けて、昨年11月から域外企業には米国基準とIFRSの調整表なしでIFRS使用を容認した。また米国企業についても、IFRSと米国基準の選択適用を容認することについて、コンセプト・リリースを公表し、広く意見を求めています。
  このような国際的な動向を踏まえて、第2部においてASBJの最近の活動状況についてASBJ側から説明がなされました。
  概略すると、上記の2005年7月のEU(具体的には欧州証券規制当局委員会:CESR(シーザーと呼びます)。)により、日本基準を含む三ヶ国(米、加)の会計基準は全体としてIFRSと同等と評価される一方、日本基準については26項目について補正措置(追加開示)が必要と助言されました。
  また、昨年の8月にASBJがIASBとの間で「会計基準のコンバージェンスの加速化に向けた取組みの合意(いわゆる東京合意)」が公表され、2011年6月30日までに日本基準と国際財務報告基準(IFRS)とのコンバージェンスを達成するという期限を明確にされました。このことは、現在、100カ国以上の国がIFRSの導入(アドプション)を表明し、また米国とIASBのコンバージェンスが進行している中、わが国のみが独立独歩で会計基準を設定し運営することの限界を明確に認識した上での対応と評価できます。
  この東京合意を受け、以下のような会計基準の設定作業に関するアクションプランが公表されています。
 
・東京合意による3段階のコンバージェンス計画
@2008年末までの検討項目(短期:EUによる同等性評価の関連)
・工事契約 ・資産除去債務 ・金融商品(時価開示)
・企業結合(持分プーリング法他) ・会計方針の統一(関連会社) 
・研究費と開発費 ・棚卸資産(後入先出法) 
・退職給付 ・投資不動産
 
A2011年末までの検討事項(中期)
 ・セグメント情報 ・過年度遡及修正 ・企業結合(のれんの償却他)
 
BISAB/FASBのMOUに関連するプロジェクト項目
・連結の範囲 ・財務諸表の表示 ・収益認識 
・負債と資本の区分
・金融商品
 
 最後に、発表後の質疑応答では、IFRSと国内法についての関係や「包括利益」のみの表示で「当期純利益」はなくなるのかとのご質問があり、実務界における会計基準のコンバージェンスに対する関心の高さがうかがえました。

  今回のセミナーを拝聴し、わが国で最近公表された様々な新会計基準や現在日本公認会計士協会(筆者は本部理事も兼任)で議論されている新会計基準についての背景や意図が“会計基準のコンバージェンス”という国際的な大きな文脈の中で整理できたことは非常に有意義でした。さらにこの半年間でコンバージェンスからアドプションに流れが大きく進んでいることがよくわかりました。
  また、当セミナー開催に際して、前日の9日夕方に大阪のKKRホテルにて歓迎会が開催されました。IASB議長Sir.David Tweedie氏、IASB理事山田辰巳氏、FASF理事長荻原敏孝氏、常務理事遠藤博志氏、ASBJ委員長西川郁生氏、昨年CAPA大会でお世話になったASBJ委員(元関西学院大学学長)平松一夫氏他委員等4名、大阪証券取引所社長米田道生氏、日本公認会計士協会京滋会会長長谷川佐喜男氏、同兵庫会会長中津幸信氏、同近畿会会長中務裕之氏、同副会長蔵口康裕氏そして私と通訳者の総勢17名で、満開のサクラの木々とライトアップされた大阪城をバックに、関西文化の紹介と様々な会話を楽しみました。特に、Sir.David Tweedie氏とは様々な日本文化論で盛り上がったことや、またASBJの方とは本音で会計基準に関する実務レベルの会話ができたことは、会計基準というツールの議論の前に人間的なふれあいができ大きな喜びを感じました。
 以上、今回のセミナーは、私にとってこれからも会計基準のコンバージェンスに関して今後も十分にフォローしていかねばならないと実感したよい機会となりました。