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ドラマ『監査法人』塚本高史氏へのインタビュー

会報部 中村 文子

 
(会報部中村) 
   塚本さんが俳優になられたきっかけを教えて下さい。
(塚本)
   僕が中学2年生の時に母親が勝手にオーディションに応募したんです。自分も目立てればいいやぐらいに考えていたので、オーディションに行きました。そしたら、受かったので、そのまま俳優になったという感じですね。
(会報部中村)
   じゃあ、14歳とか15歳の時から、今のお仕事をされているのですね。キャリア10年くらいだからすっかり、ベテラン俳優ですね。
(塚本) 
   そうですね。はい。
(会報部中村) 
 今回、『監査法人』のドラマの出演の依頼が来るまで、監査法人とか公認会計士という職業は、ご存知でしたか?

(塚本) 

 全然、知らなかったですね。資格を持った職業の方では、弁護士さんとか、税理士さんとかというのは、良く耳にしたことはありました。でも、会計士さんは、名前の通り、お金に関する業種で、何かそういう計算をする人なんだっていうのは、何となくわかってたんですが具体的にどんなことしているのかな、まあ、会計っていうぐらいだから、数字を扱って、何かするのかなっていうぐらいのイメージしかなかったですね。
(会報部中村) 
 ドラマ『監査法人』の若杉健司役というのは、今まで塚本さんが演じてこられた役柄に比べて、社会派の堅い雰囲気の役柄だったと思うのですが、役づくりで苦労されたところを教えていただけますか?
(塚本) 
 そうですね、自分の中で想像もつかないような職業の人たちだったので、まず、それを知る準備をしました。それでも結局、こんな感じなんだろうなというものぐらいしかイメージできなかったですね。

 

(会報部中村)

 準備というのは、台本を見られて、だいたい、こういう仕事なのかなとかというイメージをするという方法ですか?

(塚本) 

 事前に監督から会計士や監査法人に関する資料をいただいて、あと、漫画もいただいたんです、会計士の。でも、あんまりよくわかんなかったですね。結局、わかんないまんまで逆にいいよなって考えたんです。僕の役の若杉健司っていう役は、そんなに何かこう、仕組みをわかってて、会計士を目指した人じゃないので、ただ、ジャパン監査法人の理事長(篠原勇蔵)にあこがれて、難関な世界だけど勉強して会計士になったという役なので、会計士とはみたいなことを、そこまで事前に知っておかなくても良いんじゃないかなと思って現場に行きました。そしたら周りもあんまりわかってなくて(笑)。やっていくなかで、みんなでわかっていこうよという雰囲気でしたね。 もちろん、監督とかは、会計士さんのところに行って、いろんな話を聞いたりとかして、勉強されてましたよ。
  題材にしているお話とかもある程度、現実的なものをデフォルメして描いていたので、ドラマの中で会計士とは?とか監査とは?ということについて考える要素はあったと思うのですが、それ以前に、そこに生きている人たちの、人間ドラマみたいな、監査にかける気持ちだったりとか、相手に対する思いやり、そういうものを描ければいいなと思ってやっていたので、会計士とは何ぞやといういうことをそこまで深く知ったかと言われれば、そこを優先したわけではないんです。僕自身、若杉健司に共感して彼の役を演じていたので、彼の人間的な考え方や監査に対する気持ちは伝えられたかなと思います。だから、会計士とか監査とかを知らない方にも共感して楽しんでいただけたと思います。
(会報部中村) 
 そうですね、会計士や監査と全然関係の無い職業の友達や知り合いの大学生のお嬢さんも毎週欠かさず見てたって聞いて、難しい話抜きでも十分楽しめたと思います。 (塚本) そうですね。だから、ドラマの放映で、監査法人という存在が一般の方々にも少しは身近になったかなと思います。
(会報部中村) 
 出演されるドラマによって様々な役を演じてこられて、その時々の役柄の雰囲気だとか、考え方というのを踏まえて演じられると思うんですけれども、今回は若杉健司役っていうのを演じる上で、どのように若杉健司を模索されましたか?
(塚本)
 そうですね。どの役でも、なんだろな、アプローチの仕方は同じだと思うんですよ。一人の人間だし。
  それをリアルに描くのが、僕らの仕事であって、自分に近づけるわけではないんですけど、やっぱり日常的な言動だったり、行動だったりというものをどこかに織り交ぜないと、やっぱり見ている人も共感しないので、ただ会計士というものを演じればいいというよりは、自分の仕事での人間関係を監査法人での上司との関係に投影したり、僕は娘がいますので、彼の子供に対する愛情については良く理解できたので、リアルにやろうと思いながら、やってましたね、今回。
(会報部中村)
 覚えにくかったセリフとか、何回も撮り直しされたセリフとかを教えてください。
(塚本)

 撮り直ししたのはないですけど、撮って使われなかったっていうのはあります。なんで、カットされたかって、あとで聞いたんですけど、別にそういう説明のセリフがなくても伝わったから、そのシーンはいらなかったんじゃないのかって言われて、ああ、そうだと。だったらいいやっていう感じだったんですけど。   結構撮ったんですよ。稟議書とはどういうものだとか、あるいは領収書、見積書、請求書とか、そういった専門的な用語の説明を始めは入れていたんですが、カットされましたね。

(会報部中村)
 ドラマの中で専門用語が結構登場していましたが、覚えるのが大変じゃなかったですか?
(塚本) 
 呪文ですね。
(会報部中村) 
 えっ?呪文ですか?
(塚本)

 意味を理解してしゃべるというのは、役者の仕事だったりすると思うんですけど、僕はそういう専門用語にしていたら、全然意味がわかんないんで、もう、呪文ですね(笑)。

(会報部中村) 
 『監査法人』のドラマでは、緊迫感とか、怒っている気持ち、感情が、すごくよく伝わってきていたので、ご自身で一人で練習とかされるんですか?
(塚本) 

 そういうのはいつもしないですね。 セリフの練習よりも、大事なのは、やっぱり現場に行っての雰囲気ですね。そういう気持ちにならなかったら、そういう演技にはならないし、いくら台本にそう書かれていても、そういう何か言葉をしゃべる気持ちにならなければしゃべらないし、それはやっぱり、リアルなものをデフォルメしてやってるわけですけど、リアルなものだと思いながらやってないと、やっぱり共感してくれないと思うので。 「言わねえよ、こんなセリフ」って書いてあるものを「言わねえよな」って思いながらしゃべってたら伝わらないわけじゃないですか。「言わねえよ、こんなセリフ」と思ったら言わなければいいし、変えてもらえばいいし。 それは何か、普通に何かこう、日常的な気持ちを忘れない良さというのもありますよね。

(会報部中村) 

 じゃあ、今回も塚本さんがセリフのなかで、修正をお願いした部分はあったんですか。

(塚本)
   ありますよ、結構。うん。数、数え切れないですね。 言い回しとか、語尾というのはやっぱり台本のとおりにはいかない作品もあったりしますから。時代劇とかじゃない限り。
(会報部中村) 
 ドラマに出演されて、公認会計士とか監査法人について、どういうイメージを持たれましたか?
(塚本) 
 監査法人に限らず、どこの世界でも対人というか、人の気持ちを考えて仕事をしていたり、人のことを思って人は動いているんだなと思いました。 ただ、監査をして承認するとか、承認しないということだけじゃなくて、どういう思いで、その人はいま、そこまでの経緯をつくり上げてきたとか、どうしたいとかということが、どこの世界でも同じなんだなということを感じましたし、いろんな葛藤があって、みんなの監査をしているんだなということはわかりました。
(会報部中村)
 もし、会計士になる機会があったら、なってみたいなと思われますか?
(塚本) 

 そうですね。僕自身、責任があることから逃れて生きてきた面があるので(笑)、あんまり一つの企業を、「NO」の一言でつぶせるようなことはできないなと思いますけどね。 まあ、いろいろ計算した上で承認できないという、もちろんそうなんですけども、何かそれを言っちゃったことによって、その人たちが路頭に迷うということを考えたら、簡単にそういうことはできないなっていう思いですね。だから、もっと楽な仕事がいい。人を傷つけない仕事がいいですね。

(会報部中村) 
 若杉健司という役は、ドラマの中では、実直で、まじめで、仕事熱心で優秀というような設定でしたが、仕事を完結するために、例えば会社の人の反対を押し切って調査に行ったりだとか、あと上司に対してでも、きつい言葉を浴びせかけたりとか、そういう行動があったかと思うんですけれども、そういう若杉健司の役柄とか、人柄というのについて、塚本さんは共感される部分とかありますか。
(塚本)
  そうですね。理事長のことを「アンタ」とかって呼んじゃうのが第一話ぐらいに出てきたんですけど、何でかなっていうのが始めはわかんなかったんですよ。でも、それは理事長にあこがれて会計士になったわけで、その人を何で目指していたんだろうなって、一回壁にぶつかった時に、自然にそういう言葉が出てくるのが逆にリアルだから、本当に気持ちで動いていたと思いますね。僕も若杉健司も。だから、どっかに調査に勝手に行っちゃうとかというのも、やっぱり自分の目で確かめたりとかしたいからこそだと思うんで、その代わり、現実にそういうことが、もし起きたりしたら、やっぱり自分の目でどっかに行って確かめたいと思うから、僕はすごいリアルだと思いますね。
(会報部中村) 
 じゃあ、塚本さん自身も、自分が公認会計士で、ドラマの設定のようにクライアントの粉飾を感じてしまったら、ああいう言動をされているだろうなと…。
(塚本) 
 そうですね。で、そこに何だろう…。キャリアとか実績とかと関係なくて、仕事に取り組んで、成果を挙げるということに関して言えば、スタートラインはみんな同じなわけですから、上も下もないんだなっていう印象です。
(会報部中村)
 ドラマの中で言ったら、いろんな会計士が出ていたと思うんですけれども、若杉の他には小野寺さんと、あと吉野さんですね。若杉はさっき言ったみたいに実直で、素直といった感じだと思うんですけど、まあ、小野寺さんは野心家なタイプで、吉野さんはどっちかっていったら、協調性を重視するような会計士だったかと思うんですけども、塚本さんは、ご自身がもし会計士になられたら、若杉のような会計士になると思いますか?
(塚本)
 どうだろうな…。いろんな何かこう、会社とのかかわりとかを知っていれば、やっぱり、ここをつぶしたらどうなるとかっていうのをわかっているからこそ、ちょっと粉飾があっても承認はしたいと思うんですよ。 やっぱりそれは、そういう日本の経済で成り立ってきているからこそ、みんなもそうしてきただろうし、たぶん僕は従っちゃうと思いますね。 若杉健司みたいに今までそうしてきたけれども、ここにある数字は違うんだから承認できないっていうふうには、たぶん言えないと思いますね。それをしたら、どうなるかっていうことをわかっているから。だから、理事長みたいな感じじゃないですか、なれ合い監査を重んじるような。
(会報部中村)
 ドラマの後半でプレシャスドーナツの事件がありましたが、もし、自分が会計士という職業だった場合、友人が経営する会社が「粉飾する側」と「粉飾を摘発する側」という立場になったときに、そのお友達をどういう形で説得されますか。
(塚本)
 普通に考えたら、それをしたらお金は稼げるけど、いつかばれるということがわかっているんで、友だちであろうが何であろうが、たぶん手は貸さないと思いますし、やりたいんだったらやればという感じですね、僕は。 そうしたいんだったら、何があっても、そうしたいんだったらやればっていう。僕は一応、だめだよとは言うけれども、それでも曲がらないんだったら、じゃあ、一人でやってくださいっていう、友だちでも。
(会報部中村) 
 ちょっと話がずれるんですけれども、松下奈緒さんと共演されていらっしゃって、松下奈緒さん、すごいきれいな方だなと思って拝見していたんですけれども、差し支えなかったら、松下さんの性格とか、どんな方だったのかというのを、ちょっと教えていただけますか?男性の会計士でファンが多いので。
(塚本)
 すごくいい子ですよ。 僕は会う前のイメージは、結構凛としている大人の女性で、僕よりも歳上なのかなと思ってたんですけど、僕より3つぐらい下で、若くて、だけどやっぱり何だろう、結構自分というものをしっかり持っている人で、それは役にも反映されているもので、すごい何かこう、気持ちのいい女性というか、かっこいい女性というか、それは思いましたね。すごくいい子でした。
(会報部中村) 
 ドラマがどちらかと言えば、重い話だったと思うのですが、ドラマではみなさん、そういう重い雰囲気で演技をされて、休憩時間の雰囲気なども、どちらかと言えば、重かったり、みんな無口になりがちだったとか、そういうことはなかったですか?
(塚本)
 いや、もう、和気あいあいでしたね。出張でずっと名古屋にいたので、スタッフと共演者と過ごす時間が多く、家族のような雰囲気でした。
(会報部中村) 

それはやっぱり、みなさん、プロの役者さんだから、さっきまで争っていた感じでも、急に終わったら切り替えができるんですか?

(塚本)
 今回のこの『監査法人』では、そういう人が多かったですね。本番5秒前でも、バカ笑いしてましたよ。
(会報部中村)
 最後に、日本経済のために日夜、頑張っている公認会計士のためにメッセージをいただけますか。
(塚本)
 本当に『監査法人』っていうドラマに携わらせてもらって、会計士ってすごい仕事なんだというのがわかりました。見てくれていた視聴者の人たちも、まあ、僕らがやったのは本当にリアルかっていったら、僕は他の監査法人というか会計士の人たちも見てないのでわかんないですけども、真に受ける部分と、真に受けてほしくない部分とあるんですけど、かっこいい仕事だなって思いました。 責任の大きい仕事だなと思うので、これからも会計士を続けていく人たちは、誇りを持って、仕事をしてほしいなと思います。僕が言うのも変ですけど、自信と誇りを持って、仕事、監査に取り組んでほしいなと思います。
(会報部中村) 
 本日はお忙しい中、ありがとうございました。
(塚本) 
 こちらこそ、ありがとうございました。

塚本高史 information

生年月日:1982年10月27日
サイズ:身長175cm 体重54kg
出身地:東京都 
信条:現場を楽しむ
●ドラマ
2008.09.28.(日) 22:00〜O.AWOWOWドラマW『6時間後に君は死ぬ』
2007.TBS 『特急田中3号』EX『菊次郎とさき』TBS『ハタチの恋人』
2006.CX 『結婚できない男』TBS『鉄板少女アカネ!!』
2005.TBS 『タイガー&ドラゴン』ANB『菊次郎とさき』
●映画
2008.11.01.公開 『イエスタディズ』/監督:窪田崇
2008.09.28.公開 『イキガミ』/監督:瀧本智行
2007.09.22.公開 『夜の上海』/監督:チャン・イーバイ
2007.06.02.公開 『そのときは彼によろしく』/監督:平川雄一朗
 2006.10.28.公開 『木更津キャッツアイワールドシリーズ』 /監督:金子文紀
2006.09.30.公開 『涙そうそう』/監督:土井裕泰
2006.06.17.公開 『タイヨウのうた』監督:小泉徳宏