報告
女性会計士委員会セミナー

シリーズ女性リーダーに聞く 第7回

女性会計士委員会 玉置寿子 種田ゆみこ

日 時:2008年9月20日(土)15時〜17時 / 場所:日本公認会計士協会近畿会 会議室
第T部:パネルディスカッション 「組織における女性活用」
1)帝人クリエイティブスタッフ株式会社人財開発部女性活躍推進室長 黒瀬 友佳子 氏
百貨店勤務を経て、2002年に女性活躍推進室スタッフとして帝人株式会社に入社、2004年女性活躍推進室長、2007年4月より現職。
2)P&Gジャパン株式会社 生産統括本部 北野 美英 氏
1991年現P&Gジャパン入社、1998年購買グループマネージャー、2001年米国本社出向2003年アソシエートディレクター生産統括アジア化学品担当を経て現職。
第U部:各監査法人女性就業支援プロジェクトの紹介(あずさ、新日本、トーマツ、あらた、仰星)
 去る9月20日、「シリーズ女性リーダーに聞く」を開催しました(参加者34名、うち、男性10名)。
 今回、第T部は、外部講師による「組織における女性活用」をテーマにご講演いただきました。
 最初に、帝人グループ全体の人財開発を担う黒瀬氏から、日本的古い体質が残っている業界の中で、帝人が取り組んでいる「ダイバーシティ推進」という、「組織において、その構成員の多様性を認め、各自が生き生きと働くことができる環境を準備することで、組織への貢献意欲、モチベーションを高め、結果的に組織全体のパフォーマンスを上げる」という戦略をご説明いただきました。また、女性の活躍を支援する具体的施策として、

1)人数規模・職域拡大(数は力ゆえ、女性総合職の採用比率30%・女性管理職3倍増計画)

2)人事制度・仕組み@評価・配置・処遇について、定期申告以外に、上司を介さず人事ダイバーシティ推進室に直送自己申告A管理職360度評価に女性活躍推進項目追加B昇進要件において育児・介護休職前評価の保障

3)家庭責任への支援策@再雇用制度A育児休職期間拡大B介護休職期間拡大Cベビーシッター派遣・社外保育施設との法人契約D家族看護休暇E育児・介護に勤務時間配慮F男性の育児休職取得促進

4)啓発・風土改善@管理職対象ダイバーシティ研修Aダイバーシティ・フォーラムB女性一般職研修Cイントラネット・社内報・ダイバーシティハンドブック・社外メディア・講演での周知を挙げていただきました。

 次に、ご自身も現在二児の母として週1回の在宅勤務をする一方で、月1/4の海外出張をこなし、P&Gグループの国内外の部下60人を使う立場にある北野氏からは、家庭・育児と仕事との両立についてご自身の経験をお話いただきました。北野氏が仕事を続けられた理由は、プライベートでは、家族の理解や、完璧を目指さず家事の一部をアウトソースしたこと、趣味の時間を持つこと、仕事では、男女意識せず自然に働ける職場環境、国外ではあったが一歩半先ゆくロールモデルとなるママキャリアの存在、メンターによるキャリア両立のアドバイス、上司や部下からの支援、及び柔軟な勤務形態のお陰ということでした。実際、P&Gは、全社員のうち女性割合62%、総合職女性割合33%、課長職女性割合25%、部長職女性割合26%と、厚労省の調査の日本の事業会社の女性部長割合2.7%に比べて、各段と女性活用が進んでいる企業といえます。

第U部では、各監査法人の人事担当者に、今後の監査法人の発展に不可欠な女性活用の施策についてご説明いただきました。具体的な施策は、以下のとおりです。
 
女性職員が安心して利用できる相談窓口の設置
外部有識者による女性向けセミナー、ワークショップ
女性の立場から経営陣への提言や新規施策の検討
年1回の講演会・懇親会を含むビッグ・イベント
女性向けのリーダーシップ研修
メンタリングによる女性リーダーの育成
社員・管理職登用目標数値の設定
ワーキングマザー向け制度説明会・FAQ作成、ランチ交流会の開催
掲示板を通じた活動内容の情報発信、アンケートや提案箱による意見収集等の活動
育児・介護休業制度、フレキシブルワークプログラム、複線型キャリアパス 等

実際、各法人ともこの分野における意識は高く、以下の各法人のHPでも紹介されています。

あずさ WWN (Working Woman Network の略)
http://www.recruit.azsa.or.jp/OutLine.jsp?p=3

 「あずさ監査法人は、女性が生涯を通じて活躍しやすい環境づくりに積極的に取り組んでいます。
あずさで働く女性のネットワークである WWNでは、女性が働くための環境や制度の改善と、業界内外で活躍するトップ・プロフェッショナルの育成を目指して、セミナーの開催や意識調査の実施、法人内の様々な働き方についての紹介などの活動を行っています。」

新日本 WindS (Women’s Interactive Network for Dreams and Successの略)
http://www.shinnihon.or.jp/joinus2008/guide/winds.html
 「女性が働きやすい環境を整え、女性が生き生きと働ける場を提供することを目的としたネットワークWindSとは、女性がその夢と成功のために、お互いに影響し合いながら活動していこうという思いが込められています。女性が活躍できる職場環境づくりに向けて、@女性の長期的なキャリア形成A女性の昇格の機会の向上及び女性リーダーの育成B女性の離職率の低減C女性の入社率の向上D新日本有限責任監査法人卒業生(Alumni)ネットワークの構築EErnst&Young Americas Women’s Networkとの協力、といった理念と方針を策定しています。」
トーマツ Twin(トーマツに所属する個人が仕事とプライベートという2つ(Two)の成功(Win)=“TWin”を手にすることで、トーマツ(Tohmatsu)という組織が成功(Win)するの略)
http://recruit.tohmatsu.co.jp/women/index.html
 「トーマツでは、仕事を通じてプロフェッショナルとしての自己実現を達成するための支援(働きがいの支援)と一般事業会社とは違うプロフェッショナルの業務スタイルにあった、ワークライフバランスのための制度設計及び制度運用(働きやすさの支援)へ積極的に取り組んでおります。@キャリアアップの程度に関する選択A働く量に関する選択B働く時期と場所の選択C役割と責任の選択 と様々な選択肢を、自由にカスタマイズして生き生きと働けます。」
 
あらた (女性プロフェッショナルのネットワークは存在するが、HPでは未公表。)
「人事制度として、キャッチフレーズ“ a Great Place to Work”を合言葉に 『安心して働ける職場づくり』『仕事とプライベートの両立』を目指し、大手法人と比べて遜色ない女性支援制度が整備されています。」
 
 
仰星 (現在のところは、女性プロフェッショナルのネットワークは特になし。)
「女性プロフェッショナルが少ないので、今はまだ女性就業支援として別枠の制度はありませんが、対象者がでてきたら、柔軟に対応したいと思っています。」
 
また今回は、以下の参加者コメント抜粋からも有意義な内容をご推察下さい!
 
【講 師】
旧態依然とした業界でジタバタと活動している弊社の苦労含みの例を紹介。女性の活躍推進は古くて新しいテーマで、日本社会には永遠に定着しないのではないかとしばしば絶望感に襲われるが、実は、ある閾値を超えると、一気に変革が進むのではないかとも期待し、諦めずに今後も風土変革活動を進めて行くつもりである。会計士業界にも同じ志の方が多いとわかり心強い。
職場における多様性が高く、その多様性が尊重され活用されるほど、ビジネスに好影響がでるという結果もある。会計士の世界は現場により仕事のやり方や置かれる立場なども異なれども、女性をチームに入れることの利点を理解し、個々人の違いを尊重し活用できる組織こそ、女性や優秀な人材を引き付け、継続的に雇用し続けられるのではないか。
   

【女性参加者】

  〜監査法人勤務パートナー〜
今後は運用実績(管理職比率の向上、退職率比率の低下等)の調査を協会に期待する。
  〜監査法人勤務マネジャー〜
女性だけの集まりかと抵抗感も、当日は各法人男女交えて参加し非常に良い情報交換の場になった。
夫が稼ぐ既婚女性の昇進不要と勝手な解釈、同じ法人内に夫婦で社員は不可という理屈不明な話、子供や家庭をよりケアすべきという余計な非難等、男性の固定観念こそが昇進のハードルと思う。
社会的、家庭的な責任は男女ともあるはずなのに、なぜ、監査法人で女性の昇進が遅れるのか、女性だけ家庭と仕事の両立が必須なのか、残業できないと評価が低いのかと常に理不尽さを感じながら諦めてきたので、今回、各法人人事担当の方がそれを実感しただけでも一歩前進かと?!
休職明けが、フレッシュスタートでなく、休職前の評価のキャリーオーバーを保障する制度に感心。
「深夜までばりばり働くのが標準」ではない!(←男性の皆様、意識改革が必要ですね☆)
だから、本当はまだまだ男性社会である日本企業の男性諸氏にこそ聞いて欲しかった!!
女性自身の意識改革も必要と、世界中から集めての女性管理職向けの研修とは羨ましい。
事業会社のCSRでも、社員の働き方に関する事項は年々重要性が増加ゆえ、ご注目あれ。
人それぞれ、その時々で最適なワークライフバランスがあるはず。その実現を目指しましょう!
  〜監査法人勤務シニア〜
制度充実で「専門家は男女の別なく働くことが当り前」という意識が徐々に変化しているのを実感。
帝人の女性管理職増加方針の1つ「女性に経験を積ませ、育成するが、昇進の基準を甘くすることではない」というのが印象的。
「スタッフ業務に格下げして続けている女性がいる」と紹介されたが、両立とは単に続けることと思っているのでしょうか? 事例を作り、女性活用の存在意義を見出さないと皆の認識は変わらないのかも。
「困難を乗り越え、家庭を疎か(?)にしても仕事がしたいか」が今の個人的テーマであり、まだ答は出ないが、今回セミナーに出て私なりに仕事を続けていける道を探す活力にもなった。
〜監査法人勤務スタッフ〜
活躍する女性は輝いて素敵だと思ったので、できたら自分もそんな女性になりたいと思った。
『もっと自分のペースで仕事や私生活を楽しんでもいいんだ!』とファイトが湧いた。
「したい事はしたい!できない事はできない!」と自己主張しながら育児と仕事を両立しようと決意。
   
 
〜独立されている方〜
女性の育児と仕事の両立は、気持よく働ける環境を自ら作っていくパワーが必要な気がする。
両立には、家事のアウトソーシングもアリで、何より旦那を一番の理解者として巻き込むのがコツ。
少なくとも子供に関しては親である夫婦でまずなんとかしようとすることが大切かと思う。
女性一人で何もかも頑張りすぎないことがつぶれないポイント。これはホント!
【男性参加者】
〜監査法人勤務シニア〜
印象に残ったのは、以下の5つ。
@ 「出世したくとも、女性はしたいと言い辛い雰囲気」(P&G)
  ⇒男性目線の偏見を気にして口にしないだけで多数の女性が実は出世欲を秘めているのかも?と初認識。
A 「目的を問われない時短勤務制度」(トーマツ、仰星)
  ⇒プロ集団なら育児等以外に研究や出版や個人業務に時間を割けて当然で、正直羨ましい。
B 成果=質×量としたら、量が落ちる分、質を高めるには?」(女性質問)
  ⇒スーパーマンを目指さず、質一定を維持すれば量が減る分成果が減るのはアリとしたら?
C 女性が多い場所で男性少数・・・マイノリティーの立場は結構つらいことを理解。
  ⇒逆に、いっそ女性だけのチームで、居心地や全体としての生産性がアップに効果的かも。
D 「女性活用やワークライフバランス(WLB)推進が一人当たり売上や利益に貢献する」(帝人)
  ⇒「優良企業⇒女性活用&WLBの余裕有」と逆では?とつっこみたくなる。因果関係の紹介なく、女性活用&WLB⇒優良企業と言われても反感からスタートするかも。男性社員の「組織の3割は女性です。これからも7割の力で戦いますか。それに介護は男性もあるよね」発言の方が納得。
   
〜独立されている方〜
ディスカッション不足のせいか、「何かが足りない」というのが総括的な感想で、以下、気付き。
@ 自分:個人の視点から・・・◎
  ⇒自分が成長することで時間を捻出することが大切であること。
現状に満足するのではなく、成長したいと強く思わないといけないってことですね、きっと!
A 家族・仲間:個人の視点から・・・◎
  ⇒自分を支えてくれている人の理解に感謝を示すこと。
 上司に恵まれることも含め、自分自身の仲間を  増やすことが大切と実感。
B 会社:組織の視点から・・・△
  ⇒実際には、収益力というか、収益性の高い会社・組織でないとこういうことは難しいかと。
C 競合他社:組織の視点から・・・△
  ⇒とはいえ、競争相手が積極的に仕掛ける状況ではのんびり構えていられないのでは?
D お客様:両方の視点から・・・×
  ⇒この視点が全くなかったのは残念で、客が何を望んでいるかの視点で考えることも重要かと思う。
   
【監査法人人事担当者から】
人事担当の立場からは、他法人の同様の女性活用の取組みが聞け、非常に参考になり良かった。
「支持される法人」として中長期的な成長を成し遂げる大切な取組みの一つとして、女性就業支援制度は概ね整備されたといえる中、今後、その利用のより一層の促進が大事だと決意。
各自自分の人生のステージにあわせて「ワーク」だけではなく「ライフ」と上手くバランスを取りながらキャリアを築いていく時代。人事担当として、意欲のある人が自発的に主体的に仕事に取り組むにはどのようにしてゆけばよいか、という問に対して、職場環境の改善や仕事に対する意識改革等を進めていく上で、様々な考えに触発されるのを楽しみに、これからもできるだけ参加したい。
育児しつつ管理職としてバリバリと働く北野講師の話は、男性の私でも時間の使い方に感心した!
次回は、大手監査法人の制度を利用してみてどうだったかという近畿会会員の生の声を期待する。
女性の活躍の場は多く比較的実力主義の会計士業界でも、出産等を機に職場を離れた女性に対しては、職人的な日本の古い意識が業界に根強く横たわっているような気がする。再び活躍できる場を提供できるような風土や制度作りが必要と実感した。
   
【現女性会計士委員会委員長】
決して後悔しているとは思いたくはなかったけれど、もしも時計の針を20年前に戻せるものならば、私だって今度こそ会計士の仕事に全力を注いでみたかったと思うのです。同世代の会計士の仲間が、実力と経験を積んで活躍するカッコイイ姿にどうしようもない焦燥感を感じ、でも子育てがあるんだから・・と自分自身に言い訳をし続けてきた私には、今回のパネラーの方々の姿は正直ちょっとまぶしすぎました。後悔しているだなんて今でも言いたくはないんだけれど、これから仕事と子育てを両立していかなければならない若い女性会計士さん達には、私のような思いはしてほしくないのです。歯をくいしばってでも、頑張って頑張って、会計士の仕事にしがみついてください。
   
【初代女性会計士委員会委員長】
「弱きものよ 汝の名は女なり 」とシェ−クスピアがハムレットに言わせた言葉は、その真意とは違った意味で、女性の地位の低さを象徴する言葉として、私達戦前の男女の中で言われてきた言葉でした。今回のセミナ−では、結婚、出産、育児を見事に乗り切って、世界的に活躍しておられる帝人とP&Gのキャリアウーマンによる「ダイバ−シティ」制度の講演は、私にとっては「目からウロコ」の思いで聴かせて頂いた。また、監査法人でも「フレキシブル・ワ−キングプログラム制度」として産休、育児休業、介護休業などが除々に取り入れられている現状の報告には、今の私には、隔世の感を禁じ得ませんでした。女性にとってキャリアへの道の環境整備が除々に進み可能性に向かっての黎明を感じた一日でした。
   
【女性会計士委員会担当副会長】
   私は男性ですから、キャリアと結婚(育児)の両立について全く意識しませんでしたが、キャリアを求める女性には、結婚(特に出産・育児)が大きな障壁になっていましたし、これからもそうだと感じているのでしょう。特に、監査法人に勤務する女性会計士とってこの二択問題は切実なことであり、過去において、泣く泣く退職をした人が相当数いたものと推察されます。
公認会計士に占める女性の割合は2〜3割程度であり、この割合は年々増加すると思われますが、結婚(特に出産・育児)といった特別な事情でない平凡な理由で、女性の相当数が監査現場から流出する構造をとり続けるのであれば、我々業界は「片肺飛行」となり、継続可能な成長・発展は期待できないと思慮します。
今回のセミナーを聞いて、そのような杞憂は払拭されました。大手監査法人は、講師を務めて頂いた企業ほど先進的ではないにしろ、かなりな部分で「女性会計士の活用」を推進しているものと推察されました。
最後に、この問題はキャリアを積む女性とその職場及び夫や家族の理解だけで完結するものではなく、夫の職場の理解も大いに影響することを忘れてはならないと考えます。
   
   
では、まとめの一言。
せっかく制度があるなら、客寄せパンダ的PR用でも 「使ってみようホトトギス!」

なお、近畿会HP会員専用ページ 
https://www.jicpa-knk.ne.jp/entry/index.htmlの部・委員 会「女性会計士委員会」頁に全文掲載しています
(会員専用ページにはIDとパスワードが必要です)。

次回予告:シリーズ 女性リーダーに聞く〜第8回〜
あの有名な、経済評論家(兼公認会計士)勝間 和代 氏 を講師にお迎えします。
平成20年11月29日(土)15時00分〜17時00 近畿会研修室 費用無料
「インディにいこう! 〜勝間和代に学ぶワークライフバランスと効率性〜」