特集
近畿会主催 公認会計士制度60周年記念セミナー

−激動の10年から信頼の未来へ−

次代を担う若手会計士からの発信

近畿会公認会計士制度60周年記念事業特別委員会
 記念講演会担当委員
 島田 牧子

☆若手会計士によるセミナーについて
  近畿会では、公認会計士制度60周年記念事業の一環として、2つの記念講演会を実施しました。一つは、外部向けに竹中平蔵氏特別講演会(平成20年9月8日実施・参加者785名)ですが、もう一つは、この表題の会員向けの若手会計士によるセミナーです(同10月3日実施・参加者420名(会員143名、準会員277名)、終了後懇親会を実施)。
   この若手会計士によるセミナーの目的は、最近の監査現場疲弊の状況から、会計士業界に対する夢と希望を失いがちな若手会計士に、同じ若手会計士がセミナーで発表することを通じて、未来への展望・仕事に対する自分の意識を見つめ直し、公認会計士という仕事の魅力を再認識し元気を取り戻してもらうことにあります。近畿会では初の試みとして、若手により企画・運営したセミナーです。
 ☆セミナーの企画・準備等について
  このセミナーを企画・準備・運営するため、大法人と中小法人から若手会計士(20〜30歳代)を横断的に集めました。コアメンバー7名と発表者4名、さらに協力者17名を加えた合計28名のメンバーで4月から10月までの約半年間をかけて準備しました。メンバーで準備検討ミーティングを10回以上実施し、何をどのように発表するかについて、徹底的に議論し合いました。さらに、リハーサルを含めた終盤の2回のミーティングでは、コメンテーターを引き受けてくださった関西学院大学の林隆敏教授も交え深度のある議論を経て発表に至りました。
  セミナーの構成は、前半はそれぞれ経験や活動分野の異なる4名の若手先輩会計士が発表し、後半は林教授を交えたディスカッション、聴講者からの質問も交えた質疑応答を行いました。
  セミナー冒頭で主題提起をするにあたり、自分たちで制作した映像に音楽をつけて効果的に用いるなど、若手ならではの発想と創意工夫で聴講者の心に響くセミナーになったと思います。 
   担当委員の統括方針としては、若手会計士のメンバーが「法人組織を越えて出会って」「自分たち自身で討論して決定し」「自分たちの手で実現する」過程を大切にし、こちらからは極力干渉を控え、若手メンバーの自由な発想を大切にする方針で実施しました。
   セミナー終了後の、成果のまとめ・検証作業についても若手メンバーで積極的に行っています。メンバー達の法人を越えた共同作業もすっかり板についてきたのをみるにつけ、このセミナーの意義・重要性を再認識しています。
 ☆このセミナーの記事について
  次頁以降にこのセミナーの内容や、皆さんから寄せられた反響、懇親会の模様などをかいつまんで掲載します。製作過程も含めた詳しい内容は後日発刊される近畿会の「公認会計士制度60周年記念誌」に掲載予定ですので是非そちらもご覧ください。(なお講演録全文は別途平成20年度の年次研究報告書に掲載する予定です。)この若手会計士たちの共同作業の成果をご覧になられた皆様からご意見、ご指導を頂ければ幸いです。近畿会では、今後もこのような若手会計士による活動を継続していく予定です。どうぞご理解・ご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
2.各発表内容の要旨
公江さん〜若手会計士へのメッセージ
  公江さんは監査法人の潜在力の高さについて、また個人のプロとしての成長を目指すことの重要性、そして早く成長して自分の力で組織を変えていく気持ちで前向きに仕事をして欲しいという趣旨の発表でした。監査法人はグローバルに多数の拠点を持ち、様々なサービスをワンストップで提供できる能力があります。説明を聴いて改めてこの事実に気づいた方は多いと思います。その潜在力の源泉は私たち個々人にあること、私たちがこの素晴らしい監査法人という組織に貢献するためには、監査と別の分野の経験をして視野を広げることが有用です。一方、監査法人の現状に不満がある方・監査法人で働くことが「ベストチョイス」だと思えない方に対するアドバイスとしては、不満な点をどうしたら変えることができるかを突き詰めて考え・提案していくことで自ら組織を変えていくように思考を切り替えること、そのためにも、「上に上がる」ことの重要さを説いておられました。公江さんの発表は、「伝えたい」という気持ちが全面に表れており、時折台本にはないであろうコメントを交えられていて、とても親近感のわくものとなっていました。
中尾さん〜内部統制構築支援のすすめ
  中尾さんは内部統制構築支援業務についてのポイントやアドバイスを、若手会計士である私たちに活躍してほしいという願いをこめて話していただきました。内部統制構築支援業務は「現状把握」と「改善」の大きく2つの段階に分けられ、「現状把握」の段階で内部統制の状況を適切に把握してその情報を会社と共有すること、「改善」においては監査チーム内で連携して継続的に支援を行なうことが重要だそうです。そして、なぜ今内部統制かということですが、まず新制度だから私たちに等しく「チャンス」があります。そして、会社に対してよりふさわしい内部統制の構築に貢献して会社の成長や企業価値の向上に貢献することができ、「やりがい」を感じることができます。そして更に、それは会社だけでなく我々自身の「スキルアップ」につながっていくのです。中尾さんのお話の中で「全社的な内部統制を担当者から感じ取る」という言葉がありました。現場にいて担当者とお話しする機会が一番多いのは私たちです。この現場にこそ「チャンス」や「やりがい」や「スキルアップ」の機会が多く潜んでいるのです。これからの業務の参考にしつつ、前向きに仕事をしていきたいと思いました。

小室さん〜あなたはどの街に住みますか?
  小室さんは現在パブリックセクター部に所属されているということで、そのご自分の経験やパブリックセクターの重要性・将来性について話されました。平成20年度の決算から、全国約1800の自治体に企業会計並みの連結ベース決算書作成が義務付けられています。しかし、自治体において会計知識の豊富な人材はあまりいらっしゃらないそうです。だからこそ、私たちの活躍する場がそこにあるのですが、現時点において今の自治体の会計監査や内部統制の研究や実務経験のある会計士は全国でも殆どいません。加えて、日本のパブリックセクター関連部門が占める割合は、外国に比べて低く、諸外国に比べてまだまだ伸びる余地があります。そこに私たちがこの部門で第一人者になれるかもしれないチャンスがあるのです。小室さんの発表を聞いて、パブリックセクターが実は自分たちに身近なもの、しかも直接自分たちの生活に影響する重要な分野なんだということを改めて感じました。また、今まであまり注目されていなかったからこそ、これからに期待が持てる分野なんだと思います。自分たちの住んでいる街の監査を通して地域を元気にできるって、夢のある仕事だと思いませんか?
濱田さん〜監査業務の積極的活用 To be professional
  濱田さんは比較的経験が浅い人向けに監査業務の有用性についてお話してくださいました。会社という生きた教材に直接触れる機会である監査業務は、他の業務の基本となっていきます。これは、監査業務が、会社の数字に関する事象、すなわち会社の経済活動全体について扱っているため、これらについて網羅的な経験ができるためです。また、監査マニュアルの重要性、有用性についても強調されていました。つまり、監査業務の指針となる監査マニュアルの中には知識やノウハウといったものがたくさん詰まっており、そのことを理解して考え、現場で議論しながらマニュアルを利用すれば、きっと自分の力になるはずです。そして、自分のスキルをアップさせるためには、知的好奇心を持つこと・得た情報を整理すること・積極的に新しいことにチャレンジすることが大事だと、濱田さんは仰っていました。私たちは日々何気なく仕事をこなしがちではありますが、適宜見つめなおして、いろいろ学んでいくことの大切さを感じました。このお話を聞いて監査マニュアルに対する印象が変わった方も多いのではないでしょうか。

林教授にセミナーの総括と メッセージをいただきました。
  問題意識は皆さん共有できているかと思います。監査の現場が疲弊していて、魅力的な仕事や職場でなくなりつつあるのではないか。そうすると優秀な人材が集まらない。せっかく今集まっている優秀な人材が逃げていく。それでこういうセミナーが開かれるわけです。
  今日示された対応策というのは二つあるのだろうと思います。一つは、個人レベルでの対応で、もう一つが組織レベルでの対応です。
  個人レベルでの対応策は、一つは、社会貢献で、もう一つは、自分自身のキャリア形成ということです。 それから組織的な対応としては、法人や協会が、プロフェッションとしての真の独立を獲得するということが今求められているのではないでしょうか。
  もう一つ、これは学者としてのメッセージですが、ぜひ理論と実践のバランスというもの、そして研究の重要性・必要性というものを分かっていただいて、いろいろな形で協働ができたらなと思っています。これは学界人が共通して持っている意見だと思います。社会科学というのはそういう世界ですので、このメッセージが一つのきっかけになればと思っています。
4.コメント・感想の紹介
   このセミナーに関わられた皆さん(発表者、コメンテーター、企画・制作コアメンバー及び協力者の皆さん)と、聴講者から寄せられたコメントや感想の一部を要約してご紹介します。多くの方に意識の変革をもたらしたこのセミナーの意義を改めてご理解いただけると思います。
コメンテーター 林隆敏教授
  セミナーの企画を初めて聞いたときには具体的な内容はよくわかっていませんでしたが、業界を覆っている閉塞感を何とかしたい、若手を元気づけたいという趣旨に賛同し、少しでもお役に立てればと思い、すぐにコーディネーターの役を引き受けました。私自身も多くの刺激を受けることができ、感謝しています。
  わが国の会計・監査を取り巻く環境の変化は激しく、公認会計士業界はきわめて厳しい状況に置かれています。このような時こそ、法人や事務所の垣根を越えたヨコのつながりが大切になってくると思います。今回のセミナーは、そのよい機会になったのではないでしょうか。この企画を契機に、近畿会に若手会計士の会を立ち上げると伺っていますので、次なる企画を楽しみにしています。
  最後に、セミナーでも申し上げましたが、社会科学の領域では理論と実践の相互作用が重要な意味を持っています。これを機会に、これまで以上に公認会計士の皆さんと研究者との交流が活発になり、深まることを願っています。
発表者 濱田善彦さん
  仕事でもプレゼンテーションをする機会は時々あるのですが、私も含めて普段、会計士が行う講演というのは『内部統制制度は○○となっています。』という風に、一定の事実、いわば他人事であって、客観的に説明することが多いと思います。だから、あまり緊張することは無いと思います。
  一方、今回のように『自分の考え、想い』について人前で話をするのは、(政治家にでもならない限り)あまり出来ない経験だと思います。なので、事前の練習で原稿を読み返して気恥ずかしくなることもありましたし、また、非常に緊張しましたが、人前で話をする経験も含め、非常に良い経験をすることが出来ました。また、知り合いが増えたという点でも役に立ちましたし、次もこのような機会があれば講演してみたいと思います。
コアメンバー 石川沙織さん
   セミナーの趣旨は聞いて参加したものの、自分自身が監査について消極的な気持ちでいるときに、作る側で関わっていいのかと懐疑的な気持ちがありました。しかし、ミーティングで、他法人の若手と話したり、発表者のコメントを聞いていくうちに、私自身が会計士や監査法人の優位性や特異性を再確認することができました。
  若手に対して、目前と長期的な希望やバリバリの会計士の熱を伝えるいいセミナーだったと感じています。
  今回のセミナーに関わり、会計士が誇りを持ち、発言力を強めていくためには、対外的にブランドを高めること、会計士自身が業界や監査業務について展望をもつようになることが必要であると強く感じました。今までは遠いものだと思っていましたが、協会活動にも目を向けていきたいと思っています。
コアメンバー 奥澤望さん
  セミナーのコアメンバーとして参加して、一番よかったと感じているのは、様々な法人の方々と一緒に作業できたことです。他法人の方と話をする機会は他にもあるかもしれませんが、一緒に作業を行える機会はめったにありません。一緒に作業を行うことによって、打ち解けた話も色々できるようになり、本当によかったと思っています。
  またこの様な機会に恵まれましたら、ぜひとも参加したいと思います。

協力者 山西基嗣さん
  私は60周年若手セミナーにおいて、協力者として参加させて頂きました。協力者として参加させて頂いた中で印象的だったことは、セミナーを運営している方々が、非常に前向きに取り組んでおられたことです。
  私も含めて、今の監査現場について否定したり、文句を言ったりする人は少なくありません。しかし、否定したり、文句を言ったりするだけで、自分で何とかしようとか、何が問題だからどうすれば改善されるのか、といったことに対して前向きに取り組んでいる人は多くはいません。しかし、今回セミナーを運営している方々は、どのようにすれば監査現場が良くなるのか、公認会計士という職業に喜びを感じることが出来るのかを真剣に考えておられました。
  このような方々と一緒に活動をさせて頂いた中で、私自身の考え方も明らかに変化しました。このセミナーを経験してからも、監査現場や仕事の内容等で、悩んだり、嫌になったりすることもあります。しかし、その時にどうすれば改善されるか、前向きに考えることは出来ないだろうかということを自分自身に問いかけるようになりました。
  このような変化が自分自身に生まれるきっかけとなったこのセミナーに参加できて、本当に良かったと思います。私以外にも多数の方々に今回のセミナーが良いきっかけになったことを願います。
聴講者会員・準会員の皆さん
マニュアルを理解習得や当面の目標にしていたが、マニュアルを使いこなせというのが目からウロコでした。
 ・ 公会計について住民の生活にかかわることながら会計的な視点が浸透していない状況に問題を感じました。まだまだ会計士が社会に貢献できるフィールドがあるんだなって感じました。
J-SOX導入に伴う内部統制監査の中にチャンスややりがいがあることを再認識しました。
周りからは「監査が面白くない」という意見と「監査が面白い」という意見と半分ずつ聞くような気がします。その半分の「監査が面白くない」と言っている若い会計士のみなさんにぜひこのセミナーを受けて欲しかったなと思います。同じ道を歩んでこられた先輩方がご自分の経験をもとに貴重なお話をして下さり、自分の監査人としての将来を具体的に浮かべる事ができるようになったと思います。これからの監査人としての将来が楽しみになりました。
若手が不安や不満を感じる原因として、我々自身が将来のあり方について、漠然としかイメージできていないのではないかということも挙げられていました。これについては私自身もその通りだと思います。まさに、将来がイメージできていないから、将来について不安を感じているのだと思います。   先ず、我々自身が将来どうありたいかをしっかり考えることが、現在の不安や不満を解消するために必要なことなのだと理解することができました。
 若手から協会に対してあるべき論を論ずる機会がもっとあればよいと思います。
セミナーに引き続き、ANAクラウンプラザホテル大阪で 懇親会を実施しました。
懇親会レポート(川野 兵馬さん)

  当日は、昼の部のセミナーが盛り上がり、夜の部の懇親会への出足が鈍く、一時はどうなることかとやきもきしていました。しかし、皆さんが徐々に集まりだし、懇親会は無事スタートすることが出来ました。
  懇親会は、打合せの効果及びアドリブで順調にテンポよく進みました。スライドを使った、懇親会内容も紹介者のアイデアと話術で無事に終わり、大きな混乱もなく、中締め後も皆さん歓談に夢中になられ非常に満足していただけたのではないかと思います。
  最後に、今回の懇親会運営メンバーに参加し、感じたことは、「やる前からやったことがないから出来ないとは言わない」ということです。やってみれば、何とかなるものです。今回は、非常にいい経験をさせていただき、またたくさんの方と出会え、刺激を受けました。この機会を与えてくださり、本当にありがとうございました。