報告

第236回企業財務研究会報告

京滋会 監査・会計委員会

平成21年4月3日(金)午前10時より12時まで、近畿財務局8階大会議室において第236回企業財務研究会が開催された。
出席者
近畿財務局 樋口理財部次長 他10名
近 畿 会 中務会長    他6名
兵 庫 会 中津会長    他3名
京 滋 会 長谷川会長   他6名
テーマ

 「経営破綻企業に係る継続企業の前提の開示に関する事例分析」

発表者(京滋会)
深井和巳 副会長
水野訓康 監査・会計委員長
岩淵貴史、今井康好、川崎覚史、
 田中正志 監査・会計副委員長
T.テーマ選定の背景
  平成15年3月1日以後終了する事業年度に係る財務諸表から、企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提(以下「継続企業の前提」という。)に関する開示が必要となってから6年が経過し、近時の経済環境の著しい悪化の影響もあり、継続企業の前提に関する開示が行われた会社が約200社に達するまでになった。当初はこのような開示を行うことの企業経営への影響が懸念されたが、実務の中で定着し、四半期報告書と相まってタイムリーに開示が行われるようになり、有効に機能するようになったと考えられる。
  しかし、一方で平成20年に破綻した上場会社が33社ある中で、破綻直前の財務諸表において継続企業の前提に関する開示が行われていたのはわずか9社しかなく、7割を超える会社が開示されていなかったという現状に疑問を抱き、検討課題として着目した。
 未曾有の経済環境のさなかであり、予期できないスピードで悪化しているということは否めないが、監査委員会報告第74号に、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況として、例示されている項目に該当しているのではないかと思われるものもある。
 最終的には重要性や業種の特殊性等を勘案して、総合的に判断する必要があるとされているので、開示されている資料に基づく外観的な判断だけでは不十分なことも想定できるが、開示がなかった24社の統計をとるとともに、うち4社を抽出して個別に分析することとした。
U.経営破綻企業に係る継続企業の前提に関する開示状況
1.調査方法
(1) 調査範囲
    平成20年1月1日〜平成20年12月31日に法的破綻申請を行った上場企業にかかる、法的破綻申請の前直近に提出された有価証券報告書、半期報告書、四半期報告書(必要に応じて、法的破綻後に提出されたものも含む)。
   
(2) 抽出項目
  (1)の破綻企業にかかる下記A、Bの報告書より、各項目を抽出した。
 
A: 法的破綻申請の前直近に提出された有価証券報告書
B: 法的破綻申請日とAの提出日の間に四半期報告書又は半期報告書が提出されている場合は当該報告書
(A及びBについて)
監査報告書日(レビュー報告書日、中間監査報告書日)
監査報告書(レビュー報告書、中間監査報告書)における継続企業に係る追記情報の記載の有無
当期純利益(四半期純利益、中間純利益)
純資産
2.全体分析
(1) 法的破綻申請直前の有価証券報告書(又は四半期報告書、半期報告書)におけるGC情報の開示(監査報告書)の状況
    平成20年中に破綻申請した上場企業のうち、破綻申請直前に開示された有価証券報告書(直近が四半期報告書や半期報告書の場合は当該書類)における監査報告書にてGCの追記情報の記載が行われていたのは9件(27%)にとどまり、24件(73%)は、GCに係る開示が行われていなかった。
  破綻しているにも関わらず、直前にGCの開示が行われていなかったケースが多かった背景としては、金融危機を発端とした世界的な景気の悪化が、従来の感覚を超えてすばやくかつ急激なものとして広がったことによるところが大きいのではないかと思われる。
   
(2)  業種別の状況
    不動産業が全体の約45%を占め、最も多く、ついで建設業が占めている。
  また不動産業は、ついで破綻件数が多い建設業・サービス業と比べて、破綻前にGCが付されなかった割合が高い(87%)。これは、特に不動産市況の悪化が極めて急激であったことを示すものと思われる。
   
(3) 上場市場別の状況
   破綻企業はジャスダックが最も多く、36%(12件)を占めた。
 続いて東証2部27%(9件)、東証1部21%(7件)となった。
 各市場に上場している会社数を考慮すると、ジャスダック、東証2部の割合が多い。
 マザーズ、ヘラクレス、セントレックスの新興市場は各1件ずつであり、意外と少なかった。
   
(4)  監査人別の状況(破綻直前の開示書類の監査(四半期レビュー・中間監査)を担当した監査人を集計した。)
   結果として破綻した企業を担当していた監査法人は、大手監査法人から中小監査法人まで分散しているが、上場企業を担当している大手監査法人のシェアを考慮すると、若干中小監査法人が担当している割合が多いように思われる。
  一方、破綻直前の開示書類におけるGC開示割合は、中小監査法人のほうが多いようにも思われる。
   
(5) 法的破綻申請月別の状況
   9月に7社、10月に8社であり、秋以降に破綻件数が急増している。9月に米リーマンブラザーズが破綻し、世界経済の悪化がより一層明確となった時期と重なっている。
   
(6) 法的破綻申請直前年度の当期利益の状況
   黒字の企業が17社あったが、いずれもGC開示は行われていない。また、赤字額が大きい企業については、GCの開示が行われている割合が高い傾向が見られる。
  黒字である場合にGC開示を行うことの判断の難しさが伺える。
   
(7) 法的破綻申請直前年度の純資産の状況
     債務超過のケースは1件しかないが、GC開示は行われていた。
   また、純資産が潤沢にあっても破綻しているケースがあり、しかもGCの開示が無い割合が大きいが、純資産が潤沢にあることのみをもって、GC開示不要と判断することはできず、その他の要因を十分検討することが必要であることがわかる。
V.個別分析
   平成20年に法的破綻となった企業のうち、直近の開示書類(四半期報告書・半期報告書含む)にてGCに係る開示が無かった企業から、業種のバランス、話題性を考慮して4社(潟_イナシティ、太洋興業梶A潟vロデュース、潟Aーバンコーポレイション)を抽出し、GC開示が必要ではなかったか(なぜGC開示が行われなかったのか)という疑問を元に個別分析を実施した。
  個別分析に当たっては、破綻前後の有価証券報告書、四半期報告書、半期報告書を主に参照し、次のような項目について詳細な分析を実施した。
会社の概要
提出書類の状況
株価の状況
破綻後最初に提出された有価証券報告書(又は四半期報告書、半期報告書)における開示(会社のGC注記、監査人の監査報告書(又はレビュー報告書、中間監査報告書))
財務の状況 ・資金調達の状況 ・リスク情報の開示
有価証券報告書におけるその他の開示事項の分析
監査委員会報告第74号例示項目への該当状況の検討
W.まとめ
  平成20年の1年間に破綻した上場企業は33社であり、前年の6社から27社増加し、戦後最多の状況となった
  しかしその破綻した企業のうち、破綻前の開示書類でGCの開示を行っていた企業が9社、27%であり、投資家に対して破綻リスクを注意喚起するというGC開示制度の役割が十分に果たせていたとはいえない状況ではないかと思われる。
   一方、平成20年にGC開示を行っていた企業は201社あり(平成21年1月27日 日経新聞記事)、かなりの数にのぼっているにも関わらず、結果として、破綻した企業の27%しかGC開示が行われていなかったことは、いかに適切にGC開示を行うことが困難であるかを示していることと思われる。
   しかし、景気悪化が続く中、経営破綻にいたる企業が今後もかなりの数で発生することは不可避ではないかと思われ、経営破綻リスクを投資家に対して注意喚起するというGC開示制度の目的、社会的ニーズの達成のため、経営者及び監査人としては以下について真摯に対応していく必要があると考える。
@継続企業の前提に疑義があるとされる財務指標等の客観的事象の重視
  監査人は、企業実態や企業を取り巻く経営環境について、十分に把握したうえで、全体として継続企業の前提に疑義が生じているかどうかを判断することは当然ではあるものの、企業の存続は市況、金融機関の対応等、あまりにも不確実要素が多く、主観的判断によって開示の要否の判断が大きく左右されている状況である。
  主観的判断によるGC開示の要否の判断のぶれを小さくする必要がある。
   監査委員会報告第74号例示列挙の項目に該当する場合は、基本的にはその事実を重視してGC開示を行うことが必要と考える。
A企業の粉飾を見逃さない監査

  GC開示がないまま、破綻に至ったケースとして、粉飾の発覚により金融機関が一斉に資金の引き上げを行ったことがきっかけになる場合も多く見られる。
  GC開示の要否を検討するにあたっては、適切な財務諸表が作成されていることが大前提であり、加えて、企業の実態について監査人が適切に把握していることが必要となる。
  これらの観点から、監査人は、企業実態を十分に把握するとともに、粉飾を見逃さない監査を行うことが重要であることを再認識する必要がある。
  
以上の発表の後、研究会の直前(3月24日)の金融庁・企業会計審議会において検討されたGC開示制度の見直しに関して意見交換がなされた。

次回は、兵庫会の発表当番であり、平成21年9月9日(水)と決定された。