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永遠の恋人

角屋 修平

 今回のリレー随筆では、全く興味のない方もおられるかもしれませんが、私の人生において約7割以上の情熱と悔し涙を注ぎ込んだ釣りのお話をさせていただきたいと思います。
 
 

 一口に釣りといってもスズキ、チヌ、イカの海釣りや、鯉や鮎、ブラックバス、ヘラブナといった川釣り等、ジャンルは様々でありますが、今回は私の専門分野であるブラックバス・フィッシングについて述べさせていただきます。
  まず、バス・フィッシングの基本的な戦略について説明させていただきます。ブラックバスという魚は琵琶湖のどこにでもいる魚ではありません。彼らは藻の密集地帯や岩場、沈船等の障害物といった、餌となる小魚が多く生息する変化の富んだ場所を好みます。また、彼らの餌となる生物も小魚やエビ、ザリガニ、虫など様々でルアー(疑似餌)に対して必ず反応を示すものではありません。ですので、まず釣り場に着くと、適当にルアーを投げてみてその釣り場の地形を大雑把に把握します。そしてその過程でアタリのあった所や、地形が複雑になっている所をあれこれとルアーを取り換え重点的に攻めて1匹を釣り上げるのです。もうお気づきの方もいらっしゃるでしょうか。そうです、会計監査におけるリスクアプローチの手法と同じです。環境の理解→リスク評価→実証手続という過程を経てボウズというリスクを最小限に抑える、これがバス・フィッシングの基本的思考なのです。どうでしょうか、興味を持っていただけたでしょうか。
 
 私とブラックバスとの運命の出会いはちょうど7年前、「沖島」という琵琶湖に浮かぶ小島でした。絵に描いたような釣りバカの友人に無理やり連れられ、手とり足とり叩き込まれてようやく手にした1匹で、かつて経験したことのない快感を得たことを今でも覚えています。この瞬間から私とブラックバスとの永遠ともいえる長い付き合いが始まりました。 その後、しばらくバス・フィッシングに没頭していましたが、公認会計士試験の受験勉強のため、彼らと距離を置くことを決意し、泣く泣く愛竿も手放しました。いわゆる釣禁です。「試験勉強が終わったら思う存分釣りをしてやる!」という動機のおかげで勉強を続けられてきたのだと思います。

 そして昨年、公認会計士試験の論文式試験を終え、9月に訪れた琵琶湖で奇跡は起こったのです。それはよく晴れた日の午後、素人の友人2人と手漕ぎボートを借り、早朝から琵琶湖に浮いていました。私はルアーが着底するのを確かめてから、友人が絡ませたリールの糸を解いていました。そして糸を解き終えて自分の竿を手にしたその瞬間から、私は未体験ゾーンへと一歩、足を踏み入れていたのです。それからは興奮でよく覚えていません。我に返ると私の目の前には1匹の巨大なブラックバスが横たわっていました。それが写真のブラックバスです。
 
 この時、私はふとあるバスプロが千利休の「一期一会」という言葉について言及していたことを思い出しました。  〜出会いは偶然であれ、それが例え一瞬の間であっても、その一瞬の魚との出会いを大切にする〜この言葉はブラックバスにも人にも通じるものです。まして様々な人とその場限りの出会いの多い会計士という職業人にとって、「一期一会」という言葉は大変重要なことであると私は考えます。そして私はこの時、常にこの言葉を胸に抱き、釣りにおいても仕事においてもその場の出会いを大切にできる人間になろうと固く心に誓ったのでした。