私的研究会の報告@

第3回企業財務情報研究会を終えて

報告者 三馬忠夫

 
 平成21年7月3日(金)午後6時から大阪市立総合生涯学習センターを会場として企業財務情報研究会を開催しました。
 私たち公認会計士の有志が集い毎月自主的研究会(=「企業財務情報研究会」という)を行っています。この研究会開催の主な目的は、『企業・団体に係わる不祥事と監査問題などについての調査研究を行うこと』です。我々の日頃の研究活動の一端を広く公認会計士の皆さん方に情報提供することによって、皆さん方の会計・監査業務が有用に機能できる事を考えて今回の拡大研究会を計画し実施しました。この研究会は、十数年前の発足当時には、故熊野実夫先生を中心として進めておりましたことから、通称「熊野会」として運営されてきました。誠に残念なことでしたが、故熊野実夫先生が平成19年4月5日に逝去されましたので、その後は、この会のリーダーを前田武和先生にお願いして故人の意志を継いだ研究会として進めております。現在では、企業財務情報研究会を通称「前田会」と言っております。
 

 企業財務情報研究会では、その研究活動の中から提供できる情報を広く公認会計士へ公開する目的で拡大研究会に参加いただく機会をこれまで設けました。平成16年8月5日(第1回研究会)と、平成17年11月22日(第2回研究会)の2回の拡大研究会を開催してきました。
  今回3回目の拡大研究会の内容としては、先ず第一に、これまで公認会計士業界に多大な貢献をされた故熊野実夫先生を偲ぶ趣旨で、故熊野先生の業績の報告がありました。その一つである1972年に刊行された小冊子「市民と会計」を参加者に配布しました。この本に記された故熊野実夫先生の観点や考え方、さらには自身を拘束する(アンガーシュ)することを学んで欲しいと思いました。 次に、弁護士加藤真郎先生から、粉飾決算による違法配当が行われた三洋電機に対する株主代表訴訟についての解説が行われました。
 次に、醍醐聡東京大学大学院教授による講演「国の特別会計の監査について」が行われました。醍醐教授は、これまでにも様々なところで故熊野実夫先生との交流があったことから、今回の研究会は、「故熊野実夫先生の追悼の趣旨で行うから」と申し上げたところ喜んで講師をお引受け頂いた次第です。
  次の発表では、最近の監査活動の結果を検証した時には、絶えることの無い粉飾決算や不正会計が少なからず発生している問題を考える意味で、最近の事例(ビッグ・カメラ、西松建設、IXI等など)を取上げて、その問題点を考える事で欠陥監査に至る原因を自らの問題として考える大切さを松山公認会計士が発表しました。講演者の発表後には、参加者と発表者との意見交換が行われました。
  研修会を通じて今日発生している粉飾決算監査を自らの問題として認識していただく事ができたのではないかと思っています。監査史に汚点を残す欠陥監査に公認会計士監査の問題点を探ることは、歴史的事実に学ぶ事と同じであるので、日常的に監査業務を行っている公認会計士達が目を大きく見開いて、汚い粉飾決算監査を解剖してくれる事を期待しています。
  最後に、枡田圭児氏より故熊野実夫先生と時同じく実務補習所で学ばれた時の思い出話などがありました。当時は公認会計士同士のエールの交換が行われて、それぞれが自らの実力を十分に発揮できた故熊野実夫先生達は、その後、協会の役職などを担いながら公認会計士業界の若手を育てる事にも大いに尽力されました。そのような故熊野実夫先生の意志・信念を引き継いで、小さな活動を続けている企業財務情報研究会であります。
 今日では、形式的なCPE制度や品質管理制度など、組織の論理が優先した公認会計士の管理監督が盛んに進められておりますが、果たしてその様な制度が故熊野実夫先生達が考えて来た方向であったのかと考えさせられるところです。故熊野実夫先生が思考されたインフォムドシティズンの概念にそった会計・監査の方向を求める必要性があることを考えさせられる第3回研究会でありました。当日の公認会計士の参加者は38名でしたが、一般会社員の方も2名参加されとても有意義な研究会だったと主宰者の一人として自賛しております。

 今回、故熊野実夫先生の追悼を兼ねた研究会を行う趣旨で先生の著書「市民と会計」を復刻いたしました。まだ少し残部がありますので、参加できなかった方々にもその本を提供できます。我々企業財務情報研究会のメンバーか私に連絡いただければ配付できると思いますのでどうぞ連絡をお願いします。
 複雑化している経済社会は、そのスピードがとても速く時流に流されてしまうような日々の活動の中にあって、少し時間を設けて粉飾決算事例に学ぶ機会を持つことは大切ではないでしょうか。

           『一日生きることは、  
                 一日進歩することでありたい』

 (湯川秀樹)

平成21年7月13日記
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