年頭所感

年頭所感

日本公認会計士協会 会長 増田 宏一

1.はじめに

 平成22年を迎え、近畿会の会員及び準会員の皆様に謹んで新春のお喜びを申し上げます。

  私が平成19年7月に会長に就任し、既に2年半が経過いたしました。この間、前執行部に引き続き公認会計士監査の信頼回復に全力で取り組んでまいりました。企業を取り巻く経済環境が相当に厳しい状況にありましたが、社会から監査の信頼が問われるような会計不祥事の発生もなく、これは、会員の皆様方のご努力の成果であると受け止めております。また、平成20年4月以後開始する事業年度から内部統制監査や四半期レビューがスタートし、本年は2年目を迎えております。内部統制監査については、企業におけるコスト問題や人材不足、監査人の不慣れ等、導入初年度特有の課題がありましたが、これらの課題も皆様方の精力的な取組みで乗り切ることができました。当該制度は円滑に定着してきており、そのご努力に深く敬意を表する次第であります。 

 他方、昨年は会員によるインサイダー取引や監査情報の漏えい等の法令違反事件が発覚しました。こうした事件は、公認会計士監査の原点であるモラルが問われるだけに、再発防止への取組みを引き続きお願いいたします。
 
2.国際財務報告基準(IFRS)の導入等の監査環境の変化
 さて、昨年6月30日に企業会計審議会から「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」が公表されました。本年3月期から、国際的な事業・財務活動を展開している上場会社の連結財務諸表を対象にIFRSが任意適用され、強制適用については、2012年に判断されることとなっており、本年は、IFRS導入元年を迎えます。また、民主党政権が誕生し、地方分権や財源の地方移譲等の方針が示され、地方公会計制度改革について、本格的な議論が展開できる環境になってまいりました。
  他方、米国では、オバマ政権が登場し環境政策に転換がみられ、我が国では鳩山内閣の下、2020年までに1990年に比し25%のCO2削減方針が公表され、地球温暖化問題は大きく前進する兆しがみえてきております。欧州等を中心に議論されてきた企業による環境情報の開示も、前向きな検討が行われる情勢となってきました。
 
3.会計・監査制度に対する提言や協会組織改革等の取組み

 協会は、激変する監査環境に適切に対応するため、次のとおり、会計・監査制度に関する提言や協会組織改革等について積極的に取り組んでまいりました。
  第1に、監査対象会社の経営者が監査人の選任議案の決定権限を有し、監査報酬を決定するという「インセンティブのねじれ」問題や会社法監査と金融商品取引法監査の重複等、制度面で検討されるべき課題があることから、新政権の民主党、自民党、あるいは、法務省や金融庁に対して、会社法改正の要請を行っております。
  第2に、現在、全国約1,800の地方公共団体では、「行政改革推進法」及び「地方公共団体財政健全化法」に基づき、貸借対照表を含む財務書類4表の作成が行われておりますが、本格的な財務書類を作成するための公会計基準が整備されていません。国際公会計基準との整合性を踏まえた本格的な公会計基準の必要性を訴えております。
  第3に、新試験制度の下で試験合格者が従来の倍程度に大幅に増加し、試験合格者が公認会計士になるために必要な2年間の実務経験を満たすことが困難な状況にあります。こうした課題や国際会計士連盟が公表している国際教育基準との整合性の観点から、現行試験制度の改善について積極的に意見発信しております。
 最後に、激変する監査環境等に公認会計士業界が適切に対応するには、協会の自主規制能力の強化が必要であり、そのため、前執行部に引き続き組織ガバナンス改革を推進しております。7割近くの会員が所属する東京会のあり方や、協会会務の執行を担う役員組織の見直し等について、その改革の方向性を昨年秋に協会会員に公表いたしました。また、協会活動の拡大・多様化に伴い財政支出が増加する中、必要な業務に適切に対応するために、業務会費と普通会費の関係や既存支出項目の見直し等、財政構造の検討にも着手しております。

 
4.おわりに
 残すところ6か月の任期となりましたが、現執行部は、会計・監査制度に関する見直し提言等を含め、公認会計士業界の発展のために全力を挙げて取り組んでまいります。今後とも引き続きご理解ご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。