年頭所感

年頭所感

金融庁総務企画局 開示業務参事官 土本一郎

 新年明けましておめでとうございます。  日本公認会計士協会近畿会会員の皆様におかれましては、日頃から企業開示行政や公認会計士制度に関しまして、深いご理解とご協力をいただき、厚く御礼申し上げます。

 はじめに昨今の企業会計を巡る動向について申し上げます。ご高承のとおり、企業会計審議会は、昨年6月、「我が国における国際会計基準の取扱い(中間報告)」を公表いたしました。
  今後、我が国がIFRSの強制適用についての具体的な検討を行うにあたっては、IFRSの基準改訂の内容や手続の状況が、我が国の取引慣行・経済実態を踏まえたものであるべきとの考え方を、今後も、積極的に働きかけていく必要があります。
 中間報告を踏まえ、国内の民間関係者において、IFRS対応会議が設置されるなど、IFRSの導入に向けた対応・検討が進められております。このような民間の取組みの中で、公認会計士あるいは日本公認会計士協会の方々が大変ご活躍をされており、金融庁としても大変心強く思っております。
  なお、上場企業のみならず、中小企業向けの中小指針についても、できるだけIFRSに合わせるべきとのご意見を時々お伺いします。中小指針は、事業規模などの特性を考慮して策定されることが適切であり、むやみにIFRSへの統一を進めると、我が国へのIFRSの導入の動き自体に影響が出るのではないかと懸念しております。この点についても、会員の皆様のご理解をいただければ幸いです。

 また、内部統制報告制度も2年目に入っております。昨年度に大きな混乱がなかったことは、皆様方のご努力、ご協力のおかげです。内部統制報告制度は、企業等に過度の負担をかけることなく、効率性と有効性のバランスをとりながら意味のある内部統制が整備されることを目指しております。内部統制報告制度の趣旨をご理解いただき、引き続き、適切な対応をお願いします。
  ところで、昨年6月、金融審議会金融分科会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」において、上場会社等のコーポレート・ガバナンスの強化についての取りまとめが行われました。昨年5月には日本公認会計士協会からも提言が出されていますが、コーポレート・ガバナンスの強化は金融・資本市場の競争力や投資家保護の観点からも重要な課題です。また、日本経済の健全な発展に資する課題でもあります。今後とも、コーポレート・ガバナンスの強化に向けて鋭意努力して参ります。

 次に、「公認会計士制度に関する懇談会」について申し上げます。
 公認会計士については、監査業界のみならず経済社会の幅広い分野で活躍することが期待されています。例えば、企業内にいても公認会計士が会計プロフェッションとしての高い専門知識と倫理観を持って、財務書類を作成することが大変重要です。今後、IFRS導入の動きが広まっていく中で、企業内の会計リテラシーと会計対応能力が高度化・充実することがますます必要となります。企業の内と外から財務情報の信頼性・透明性を確保することは、いわば車の両輪です。
  ところが、公認会計士試験の合格者は必ずしも十分に経済界に進出しておりません。多くの社会人が合格し、経済界で活躍することも期待されておりましたが、この点でも十分なものとなっておりません。一方、監査法人は合格者を採用・育成した後、経験を積んだ公認会計士を経済界等の幅広い分野に供給する機能を果たしていましたが、最近、このメカニズムが停滞し、これが新人の採用方針に影響を与えているとの指摘もあります。
  こうした状況を踏まえ、公認会計士試験・資格制度などのあり方について検討するため、「公認会計士制度に関する懇談会」が開催されることとなりました。  昨年12月10日に開催された1回目の懇談会では、日本公認会計士協会から大学教育との連携強化や国際教育基準との整合性についての問題提起がありました。そのほか、企業における会計専門家に対するニーズは高いが、試験制度がそうしたニーズを満たす人材を供給しきれていないとの意見などがありました。自由闊達で大変有意義な議論をしていただいたと思います。次回は1月20日を予定しており、日本公認会計士協会からプレゼンテーションをしていただく予定です。2月頃まで、論点の洗い出し作業を行い、3月以降論点を絞りこんで、深堀った議論を進め、今年央を目途に一定の取りまとめを行う予定です。
  公認会計士制度は、会員の皆様にとっても大変重要なものです。若者や社会人を含めた多様な人材が公認会計士試験に多数チャレンジし、優秀な人材が会計専門家として、経済社会のあらゆる分野に供給される魅力的な制度となるよう、大塚副大臣と田村大臣政務官のイニシアチブのもと、金融庁としても最大限努力して参ります。

 さて、ご案内のとおり、日本の会計士業界は、少数の大手監査法人と多数の中堅・中小法人や個人事務所から成り立っております。金商法監査・会社法監査・学校法人監査などの様々な監査があり、事業規模や業態も多種多様です。また、コンサルティングなど業務も多岐に渡っております。公認会計士制度に関する懇談会にも共通する問題意識ですが、この多様なニーズに的確に応えていくためには、中堅・中小法人や個人事務所が健全に発展していくことが不可欠です。日本公認会計士協会において、中堅・中小法人や個人事務所を支援するための様々な活動がされていることは、大変有意義です。金融庁としましても微力ながらできる限りのご協力をさせていただきたいと考えております。
  このような問題意識のもと、昨年3月に貴会と「6千人アンケート結果報告」をテーマに意見交換をさせていただきました。今年も、貴会との意見交換の場をぜひ設けたいと考えておりますので、ご理解とご協力をよろしくお願いします。

 一昨年のサブプライムローンに端を発した金融危機が一段落したかと思えば、中東発の金融不安、これを端緒とした円高、さらにはデフレなど息つくひまのない経済情勢が続いています。また、IFRSの世界的な広がりなど、日本経済や会計士業界を取巻く環境は、ダイナミックかつ急速に変化しております。いつにも増して難しい年になろうかと思われますが、是非とも、市場の番人あるいは日本経済の良きアドバイザーとして、強いリーダーシップを発揮して難局を乗り切っていただきたいと考えております。皆様方のご理解とご協力をいただきながら、金融庁としても、一丸となって頑張っていきます。
 最後になりましたが、貴会のますますのご発展と会員の皆様のご健勝とご活躍を心よりお祈りして念頭のご挨拶といたします。