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第239回 企業財務研究会報告 |
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京滋会 監査・会計委員長 水野訓康 |
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T.テーマ選定の背景 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
日本の会計慣行における収益認識については、実現主義及びその解釈として(1)財貨の移転又は役務の提供の完了(2)対価の成立の2要件を充足することとされてきた。 しかし、これらの基準は極めて基本的なことを定めているのみで、具体的な適用に当たってはかなり幅をもって解釈されてきた実態があるのではないかと思われる。 このような状況下において、日本では今般、IFRSとのコンバージェンスが急ピッチで進められ、さらに平成27年又は平成28年からのアドプションが予想されているが、日本では収益認識に関する包括的な会計基準が存在しないこともあり、IFRS導入により実務がどのように影響を受けるのかが大きな関心となっている。 これらの状況を踏まえて、現在の有価証券報告書において収益認識についてどのような開示が行われているのかをまず把握し、次に、日本の実現主義とIFRSにおける収益認識の基準との比較を行った日本公認会計士協会会計制度委員会研究報告第13号「我が国の収益認識に関する研究報告−IAS第18号「収益」に照らした考察−」を概観した。 さらに、現在、IASBとFASBは、平成23年上半期中に新たな収益認識基準を公表することを目途として、現行の収益認識基準に関する会計基準の見直しを進めており、平成20年12月には、その見直しの方向性に関する提案をディスカッション・ペーパー「顧客との契約における収益認識についての予備的見解」(以下、DPとする。)として公表している。 今後、我が国においても収益認識に関する会計基準の見直しの整備が進められていくことになるが、その一環として、DPの議論を踏まえ企業会計基準委員会から「収益認識に関する論点の整理」(平成21年9月8日)が公表されたため、この内容も概観することとした。 また、最近のIASB、IASBとFASBの合同会議における議論の状況、ASBJにおける議論の状況等についてもフォローアップを試みた。 |
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U.有価証券報告書における収益認識に関する開示分析 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2.分析結果 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1)分析対象会社数 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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研究報告の以下の各項目に従って、研究報告を概観した。 当該研究報告は、実現主議が拡大解釈されている実務があるのではないかとの懸念を基に、実現主義を厳格に解釈した場合のあるべき考え方を示すことにより、より一歩進んだ会計処理の適用を促すことが、当該研究報告公表の目的ではないかと思われる。 また、処理の変更に当たって、当該研究報告の公表を契機とすることも期待されているのではないかと思われる。 |
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1.公表の経緯 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1)我が国における収益認識に係る会計基準 (2)実現主義の下での収益認識要件 (3)最近公表された収益認識に関する個別の会計基準 (4)本研究報告の目的 |
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2.本研究報告の位置付け | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3.本研究報告の構成(1)総論 (2)付録 |
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4.本研究報告の要点 (1)我が国の実現主義とIAS18「収益」との比較 (2)収益の表示方法(総額主義と純額主義) (3)収益の測定 (4)取引の識別(複合取引) (5)物品の販売 (6)役務の提供 (7)企業資産の第三者の利用 (8)契約内容(権利義務関係)の明確化とそれに応じた会計処理 (9)収益の認識基準に関する開示 |
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「論点整理」はIASB及びFASBから公表されたDPを契機として、これまでの検討を整理し、今後の収益認識のあり方を考える際に対象となる論点について、広く一般から意見を求めることを目的として公表されたものである。当該「論点整理」について、以下の項目に従って内容を概観した。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.提案モデルによる収益認識の仕組み (1)契約に基づく収益認識原則 (2)履行義務の定義と識別 (3)履行義務の充足 (4)履行義務の測定 |
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2.提案モデルの特徴と現行実務への影響の可能性 (1)総論 (2)各論 |
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現在、IASB会議及びIASBとFASBの合同会議において収益認識にかかる新たな会計基準の検討が行われているとともに、日本においてもASBJにおいて収益認識基準の設定の議論が行われている。 これら各種会議の議事録を閲覧することにより、議論の方向性を概観した。 |
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Y.まとめ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
有価証券報告書における国内企業の収益認識に係る開示は、事例分析のとおり、若干の例を除いてほとんど行われていない状況であるが、各企業においては、将来、収益認識に係る開示が不可避となることを前提として、開示に耐えられるような基準を採用しているかどうか、実現主義を厳格に解釈した場合の取り扱いから逸脱した処理基準を採用していないかを今一度点検する必要があるものと考える。 |