寄稿
 

友田和彦[著]「「キャッシュ・フロー計算書の
理論と作成実務」完全解説第2版」

会報部 山添清昭

 
1. 今回は、友田和彦氏の「キャッシュ・フロー計算書の理論と作成実務」(財務詳報社)を取り上げることとしました。この本は、平成10年11月に初版が出版され、平成19年5月に完全解説第2版が出版されています。
今回この本を取り上げた理由としては、1つは、わが国でキャッシュ・フロー計算書が導入された当時に非常に参考になった本であることがあげられます。キャッシュ・フロー計算書の作成の仕方・表示の仕方をどうすればいいか困った時、わかりやすい説明でキャッシュ・フロー計算書の理解が深まった記憶があります。本書は、平成19年5月において、改訂版が出されており、平成20年4月1日以降導入の四半期キャッシュ・フロー計算書の作成開示等にも対応されています。四半期開示の最近の状況にも役立つものであり、監査の現場で非常に役立つものであるとの考えから紹介することとしました。
会計関係の本は、A5判サイズが多いですが、本書は、A4判となっています。キャッシュ・フロー計算書を実際に作成するためのワークシートを見やくすくするための工夫がされているものと考えます。また、キャッシュ・フロー計算書の作成という特殊な分野の本であるにもかかわらず、非常に読みやすくわかりやすい解説で、キャッシュ・フロー計算書固有の仕訳の解説から、キャッシュ・フロー計算書の実際の作り方まで詳細な記載があります。
 本書の頁数は、全体で、226頁です。なお、著書は、略歴に記載されているように平成7年9月より平成10年7月まで会計制度委員会キャッシュ・フロー計算書専門委員会専門委員長を担当されていました。
 
2. 本書発刊のねらいは、本書の平成10年11月初版の際の「はしがき」に、「日本公認会計士協会が6月に公表した「連結におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」について、その内容を分かりやすく解説するとともに、企業の実務担当者や公認会計士、公認会計士試験を目指している受験生の方々の参考になるよう、キャッシュ・フロー計算書の作成に関する基礎的な事項から、実務上直面すると思われる問題点まで幅広く取り上げ、設例や例示により具体的な説明を試みました。我が国のキャッシュ・フロー計算書導入期における実務書として本書を活用していただければ幸いです。」と記載されています。また、平成19年5月第2版のまえがき「完全解説第2版の刊行にあたって」では、「これらの新基準に対応すべく内容の大幅な見直しを行っていいます。」と会計ビッグバン後の改正や四半期キャッシュ・フロー計算書の導入を反映した見直しがされている旨が記載されています。
 
3. 本書の目次は、全部で11章あり、各章別の内容について、以下にまとめていますので、参考にしてください。
 
第1章 資金情報に関する開示の変遷
 我が国における資金情報の開示制度、海外での資金情報の開示、資金情報開示の制度化を巡る論点について記載がある。過去我が国で公表されていた「資金繰表」、「資金収支表」からキャッシュ・フロー計算書導入までの過去の変遷をつかんでおくことに役立つ。

第2章 キャッシュ・フロー計算書の意義
 キャッシュ・フロー計算書の作成目的、キャッシュ・フロー計算書の位置づけと種類、キャッシュ・フローの定義、キャッシュ・フロー計算書の表示の特徴についての記載がある。最低限知っておく必要のあるルールについて記載がされている。

第3章 資金の範囲
 キャッシュ・フロー計算書の1つの特徴は、キャッシュ・フロー計算書に適用される資金の範囲が決まっている点にある。第3章では、キャッシュ・フロー計算書に適用される資金の概念や資金管理活動と短期の投資活動の違いを示したうえで、現金及び現金同等物の具体例や現金及び現金同等物に係る注記のルールについても示している。キャッシュ・フロー計算書の資金の範囲で質問を受けた時は、この章が参考になる。

第4章 キャッシュ・フローの表示区分、第5章 キャッシュ・フローの表示方法
 キャッシュ・フロー計算書は、ご存知のように「営業活動によるキャッシュ・フロー」、「投資活動によるキャッシュ・フロー」、「財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つの区分にキャッシュ・フローを分類し、表示することが求められる。第4章と第5章は、これら各キャッシュ・フローの区分の意義や例示を示すとともに、キャッシュ・フローの表示区分の判定の考え方についても示している。さらに、「法人税等に係るキャッシュ・フロー」、「消費税等に係るキャッシュ・フロー」、「利息及び配当に係るキャッシュ・フロー」、「企業結合等に係るキャッシュ・フロー」、「リース取引に係るキャッシュ・フロー」のそれぞれのテーマに区分し、表示の方法を解説している。さらに、「表示区分の変更等」についても事例を紹介している。また、資金収支計算書の作り方についても様式とともに示されている。ひな型や個別論点や留意点が示されており実務に役立つ。

第6章 事例による表示区分の判定と表示方法
特殊な取引である「国庫補助金等による固定資産の取得」、「デリバティブ取引に係るキャッシュ・フロー」、「割賦取引」、「交換取引」について、表示区分の判定と表示方法について解説がある。これら特殊な取引についてのキャッシュ・フロー計算書での取扱いについて明快な説明がある。

第7章 非資金取引等の注記
非資金取引については、キャッシュ・フロー計算書で注記を求められる。非資金取引の開示のルールを示すとともに、非資金取引の注記の記載例が示されている。

第8章 設例によるキャッシュ・フロー計算書の作成
 第8章では、直接法、間接法等のキャッシュ・フロー計算書の作成方法について、具体的に説明がされている。直接法、間接法の両方の作り方が、ワークシートや仕訳も合わせ示されており参考になる。また、準備作業、分析作業、確認作業のそれぞれにおける留意点も合わせて示されていることから、実際にキャッシュ・フロー計算書を作成される方には有用である。

第9章 在外子会社のキャッシュ・フロー
 第9章では、在外子会社のキャッシュ・フローの換算、円換算後の財務諸表を利用する場合の留意点が示されるとともに、設例による在外子会社のキャッシュ・フロー計算書の作成と換算をワークシートを用いて説明されている。

第10章 キャッシュ・フロー計算書の連結
 第10章では、連結キャッシュ・フロー計算書の作成手続を具体的に説明がされている。原則法、簡便法の両方の作り方が、ワークシートや仕訳も合わせ示されており参考になる。また、特殊領域として、連結固有の処理について、キャッシュ・フロー計算書での取扱いの仕方について、詳細に解説がある。

第11章 連結キャッシュ・フロー計算書作成手順
 この章では、連結キャッシュ・フロー計算書の作成手順について説明がある。作成方針の決定、作成手順、各社が準備すべき資料、将来的なキャッシュ・フロー情報の入手についてまとめられている。
 
4. 最後に、本書の特徴点をまとめると、本書は「完全解説」とされているだけあって、キャッシュ・フロー計算書に関連する規則や取扱いの解説は充実している。また、設例が多用され、仕訳まで具体的に示されており分かりやすいこと。実際の作成のためのワークシート、様式が多用されていること。理解するにむずかしいキャッシュ・フロー計算書の仕組みが平易に分かりやすく解説されているなどが挙げられる。連結キャッシュ・フロー計算書の監査の実務に役立つ内容であり、これから連結キャッシュ・フロー計算書の監査を行う方、キャッシュ・フロー計算書の会計処理を確認する方にお勧めします。