編集後記

編 集 後 記

 
 2月11日にIASBアジア支部が日本に決定という記事が出ました。これは喜ぶべきか、それとも憂うべきか、皆さんはどう思われたでしょうか。概して基準設定に日本がかかわれるということで歓迎の面が多いようです。しかし、私には夏目漱石の倫敦日記に登場する日本人同様、洋物かぶれの日本人会計人が日本の企業を売り渡す第一幕にならないかと危惧いたします。
 IFRS適用をにらみ、定率法から定額法への変更を検討している会社が増加しています。この変更によって、税務と会計の2重帳簿が必要となるか、あるいは会計に合わせて税務も定額法にすれば、早期償却により新規投資を行いやすくして競争力を保持してきた日本企業の設備投資意欲低下を招くのではないかと心配いたします。また、これは会計方針の変更になるので正当な理由が必要となるわけですが、もっぱらIFRS適用に伴う変更という理由は正当な理由にならないと噂されており、それらしい作文が必要とされていると耳にします。また、IFRS適用の2年前の変更であれば遡及義務がクリアされるが1年前では駄目であるという説も流れています。なんだか裸の王様を裸といえない日本人を見ているようでなりません。これが会計士業界のことでおさまるのであればそれでもいいのですが、JSOX導入によるコスト増によって新規上場が減少しているように、必ずや日本企業の競争力の高低にかかわる問題であると考えます。
 一方、2月12日には中国系の会計事務所が日本初進出という記事がでています。経営財務3002号の岡崎一浩愛知工業大学教授の記事でも、「中国政府の会計・監査への情熱には目を瞠るものがある」と紹介されています。欧米でも会計の重要性は重々承知しており、M&Aをする企業のためにのれんを償却しないでいいとした理屈の通らない会計基準を設定しました。いずれの国も会計が企業・国家に与える重要性を理解した戦略を持っているものと思います。
 翻って日本はどうでしょうか。八田進二青山学院大学大学院教授は経営財務3000号で今後の展望として会計士資格の相互承認によって日本の会計士資格は必要なくなると指摘されています。規則をヨーロッパに決められて優勝できなくなった柔道や、経済協力は求めながらいつまでも不当にロシアに占領されている北方領土のように、日本の会計士業界も他国の会計士に占領され、日本の企業は他国の株主の支配下になってしまうのでしょうか。
 田中弘著「国際会計基準はどこへ行くのか」で指摘されているとおり、国家的会計戦略が必要ではないかと思うこの頃です。

(会報部 熊木実)