『ポスト2011−国際財務報告基準(IFRS)を巡る検討課題』

発表者 ASBJ副委員長、公認会計士 新井武広氏
FASB国際研究員、公認会計士 川西安喜氏
公益社団法人日本証券アナリスト協会理事、
IFRS諮問会議メンバー 金子誠一氏
富士通株式会社 財務経理本部IFRS推進室
室長 湯浅一生氏
日本公認会計士協会監査・保証実務委員会委員長、
公認会計士 布施伸章氏

 冒頭に、現在IFRSを適用している会社は4社であること、金融担当大臣の発言より、適用時期等については、今後の企業会計審議会の動きを注視していくことになる。また、適用される会社については、米国の対応が我が国に影響を与えることになるとの説明があった。
 
IASBの基準開発の動向
 ヘッジ会計は、年内にレビュー・ドラフトを公表予定、リースは引き続き審議中であり、2012年に再公開草案を公表予定、収益認識は2011年に再公開草案を公表予定であるとのこと。その他の包括利益の表示では2計算書方式が容認され、退職後給付は退職給付の見直しがなされた。
 
ASBJのプロジェクト進捗状況【2011年8月末現在】
 公開草案がディスカッション・ペーパーと大きく異なるケースがあるので、IASBのデュープロセスでは市場関係者の意見を聞くべきであるとの意見が、また我が国の制度としてガイドライン程度のものを示しては良いのではとの意見があった。既存のプロジェクトは達成しており、今後のASBJとしては、企業会計審議会で示される方向性を踏まえて対応する。公正価値測定・開示は審議を継続中であり、開示の拡充が主な論点となっている。収益認識・リースはIASBの再公開草案を踏まえて検討する。企業結合におけるのれんの非償却を日本でどのように対応するか、また退職給付における未認識項目のオンバランス化について個別財務諸表上どのように対応するかが論点となっている。
 
IASB/FASBの収益認識プロジェクトと我が国への影響
 日本では、実現主義の原則のみでガイダンスが不足していた。「役務の提供の完了」では受領した対価に対応する契約の内容・条件をより厳格に解釈し、何に対する対価であるかをよく検討する必要がある。実現主義とIAS18「収益」の収益認識の要件との間には、本質的な差異はない。ただし、収益の表示方法(総額と純額)、複合取引の会計処理、収益の認識基準に関する開示では、IAS18を適用した場合と同様の結果が得られるとは限らない。また、IAS18では、物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値が買手に移転することが要件となっているので、物品出荷だけではこの要件を満たしたことにならないと考えられる。
 
IASB/FASBの収益認識プロジェクトの方向性
 IFRSと米国会計基準の収益認識基準には、いずれも改善の余地がある。収益認識を5つのステップに分けて審議中である。「顧客との契約の識別」ステップが重要視されているので、実務で見直す必要が出てくるかもしれない。「履行義務の充足時の収益認識」ステップでは、特定の期間で充足される履行義務の場合、工事進行基準的な会計処理が認められる場合がある。
 
ポスト2011年−IASBの取り組むべき課題−
 Agendaコンサルテーションを公表し、今後3年間の戦略的優先課題として意見を求めている。主な領域として、概念フレームワーク及び開示フレームワーク、IFRS適用後レビューの実施、会計基準適用上のニーズへの対応等がある。我が国としても、国際的な会計人材の育成に努め、日本の存在感を高める必要がある。

(報告:古野康和)