報告

日本公認会計士協会近畿会(国際委員会)
上海市注冊会計師協会訪問等報告

国際委員会 委員長 塩尻 明夫 
副委員長 田中 久美子

 
1. 訪問の目的
 日本公認会計士協会近畿会は、平成17年11月2日に上海市注冊会計師協会との間で「交流に関する基本合意書」を締結し、お互いの公認会計士業務に関する理解と制度等についての情報・意見交換を実施し、相互の会務の充実・発展を期するとともに、両会の交流を通じてそれぞれの所属会員によるさらなる相互理解と交流の発展を期待しておりました。その後、近畿会の執行部の交代、日中関係の変化等により交流が一時中断しておりました。
 今回は、過去締結した基本合意書の内容について相互に再確認するとともに、今後の交流についての方向性を協議することを目的として、小川会長、白井担当副会長、塩尻国際委員会委員長、田中国際委員会副委員長で平成23年11月16日に上海市注冊公認会計師協会を訪問しました。
 さらに、上海で監査・会計アドバイザリー等のサービス提供を行う日本人の公認会計士を同年11月17日に訪ね、中国ビジネスの現状を把握するとともに中国で日系企業が直面する会計・税務上の問題点等の傾向についてお話を伺ました。
 
2. 上海市注冊会計師協会訪問
@KPMG上海事務所
 上海浦東国際空港からホテルに移動後、まずはKPMGの上海事務所を訪問しました。ここで高部一郎パートナーにお会いし、上海注冊会計師協会にご案内頂くMaureen Moパートナー、Natalie Heマネージャー(通訳担当)をご紹介頂きました。またここでは、上海における経済状況や、ビジネス環境についてのお話がありました。
A上海注冊会計師協会

 その後、車で上海注冊会計師協会へ移動しました。協会においては、周有道会長、Zhang Youmo副事務局長、Ma Lingping総合部副主任他の皆様とお会いすることができました。
 会談においては、まず平成17年11月2日に締結された、上海注冊会計師協会と日本公認会計士協会近畿会との基本合意書について、これが引き続き有効であることの確認がなされました。
 その後、周有道会長、Zhang Youmo副事務局長からは上海注冊会計師協会における協会運営や業務のあらましなどについて、以下のようなお話がありました。
監査法人274社、個人会員19000が参加。うち開業会計師は6000人、非開業会計師が13000人。うち12000人は企業などで財務担当などとして働いている
監査法人は有限責任が176社、パートナーシップ形式が78社、その他20社は他地域事務所の支店となっている
監査法人の収入はトータルで約70億人民元
中国会計師の必要CPEは年間40単位、倫理単位は、日本と違い年間通常単位とは別に2年で4時間受講という方式
日本のように、会計士が税理士登録を行うことでそのまま税務申告を行えるようにする制度の導入を進めているところである
 次に、今後さまざまな活動や、共同セミナーなどを進めるに当たっての窓口として、中国側はMa Lingping総合部副主任、日本側は事務局(井上さん)と国際委員長が担当することになりました。
 最後に、上海注冊会計師協会から近畿会会長へ、中国の文化などに関する様々な書籍、及び協会の会誌を頂戴しました。また近畿会会長からは各人に訪問の記念品として扇子が手渡されました。
 上記の会談後は上海料理のレストランに場所を移動し、協会の呉恩秘書長が加わって夕食となりました。大変おいしい上海料理を囲み、中国風に頻繁な乾杯を楽しむ中、終始和やかな会食となりました。
 
3. 上海望月瑞盛会計師事務所訪問
 望月一央氏は、平成5年より上海で中国法定監査、国際会計基準監査に従事され、また、国家税務総局反避税処を含む多くの課税当局との折衝をこなし、上場企業を中心とした多くの企業プロジェクトに関与されてきました。オフィスは日系企業が集中している地域の商業ビルに位置し、クライアントにとっては利便性の高いオフィスとなっています。
 望月氏は十数年前から日本の公認会計士を採用しており、「日本で業務を行うことがリスク」と考える日本の公認会計士の育成に尽力しておられます。また、M&Aアドバイザリー業務拡大のため、日系のファイナンシャルアドバイザーと提携し、相互の得意分野を生かした活動も行っておられます。
 中国においてM&Aを展開する場合、特にデューデリジェンスにおいて散見される問題点としては、簿外債務の存在、資料不足、二重帳簿の存在等をあげておられ、中国における内部統制の脆弱性について強調されていました。
 中国の会計師のレベルに関しては、その能力の向上について言及されておられました。しかし、その品質については依然ばらつきがあり、一般的に大手監査法人の3分の1程度の報酬で中堅監査法人がサービスを提供し、さらにその3分の1程度の報酬でローカル会計師がサービスを提供している現状であるとご説明いただきました。中国に進出する日系企業にとっては、品質とコストのバランスと重要性を勘案してどの事務所にサービスを依頼するのか検討されているということです。
 インタビューの後、中華料理でランチをご一緒させていただきながら、望月氏の経営に関する確固たる理念をお伺いさせていただきました。
 
4. 上海邁伊茲(マイツ)咨詢有限公司訪問
 池田博義氏は、平成5年に上海に出張で訪れた際にその熱気に触発され、即上海に単身で渡られ、平成6年中国上海事務所を開設、平成11年に上海邁伊茲咨詢有限公司を設立されました。当時44歳であった池田氏は、記帳代行、個人所得税申告等の業務を提供されていましたが、増値税還付について多数の日系企業が大きな問題に直面した際、自らが夜を徹して問題解決に尽力され、その結果多数のクライアントから信頼を得たとお話しされていました。
 ビジネスに対するアイディアも斬新で、会計・税務・内部統制等のアドバイザリー業務のみではなく、日系企業が直面する従業員に対する健康予防に関するサービスまで事業展開されていらっしゃるようです。これはもともと、京都大学を卒業された中国人医師が中国において仕事の機会がないという話から発展し、それならば日系企業が抱える健康予防問題についてもソリューションを提供しようという発想から生まれたものだそうです。池田氏の自由な発想で、現在では中国7都市に事業拠点を構える会計事務所として、平成23年会計士事務所総合評価100社にランクインされていました。今後はタイ、ベトナムに進出している会計士とコラボレーションを行い、業務拡大を考えておられるようです。
 現在、日本の公認会計士28名、積極的に若い合格者を採用されているようです。海外での実務従事について、任意監査であれば2社担当すれば要件を満たすはずであり、日本での未就職者問題解決に寄与されています。
 インタビュー後は他の日本の公認会計士の方とも夕食をご一緒させていただき、有意義な中国でのビジネス展開について熱くお話しさせていただきました。
 
5. 訪問を終えて
 様々な事情で交流がいったん途絶えていた両会の関係ですが、今後の協力体制についてしっかりと再確認ができました。また、上海を中心に中国における会計や、会計師の業界における事情について生で知ることができた点については極めて有意義であったと思います。また、上海望月瑞盛会計師事務所、上海邁伊茲(マイツ)咨詢有限公司訪問においては、日本という枠にとらわれず未知の世界に挑戦・活躍する公認会計士の姿をつぶさに感じることができました。現在の日本は政治・経済を中心に良いとは言えない環境下にありますが、これを憂えるのではなく、若い世代の方を中心に、海外への挑戦をもっと考えても良いのではないかという印象を受けました。
 最後になりましたが、今回の上海訪問の全行程において、ガイド及び通訳に携わって頂いた池嶋一惠様には大変お世話になりました。参加者全員を代表して御礼を申し上げます。