報告

社会・公会計委員会研修会報告

社会・公会計委員会委員 大川 裕介

 
1. 地方自治体監査研修について
 現在、総務省では、地方自治法の抜本改正が検討されており、その項目の一つとして地方自治体監査制度の大幅な改正が予定されています。改正案によれば、現状は監査委員等の内部監査人が担っている多くの監査制度を、公認会計士等の外部監査人に委ねる検討がなされています。
 このような状況を踏まえ、社会公会計委員会では、「シリーズ地方自治体監査研修〜来るべき地方自治体監査制度に向けて」と題して、地方自治体の監査及び会計制度について、本年3月の第1回研修会を皮切りに、連続シリーズで研修会を開催しています。
 
2. 第2回研修の概要
 平成23年10月27日、近畿会・京滋会・兵庫会三会共催にて、「地方自治体監査研修」の第2回目となる研修会が開催されました。今回は、地方自治体の中でも複式簿記・発生主義会計の導入が進んでいる東京都と大阪府の新公会計制度の担当者の方々と、平成16年から平成18年まで国際会計士連盟公会計委員会(IFAC-PSC)の委員を務められたほか、大阪府の「公会計制度アドバイザー」なども歴任された、関西大学大学院会計研究科の清水教授の、計3名の講師の方々をお招きして、地方自治体における公会計制度改革の現状とその目指す方向、また今後の活用方策などについて、非常に有意義なお話を頂きました。
 
3. 東京都の新公会計制度導入の経緯とその活用の状況等
 最初に、公会計改革の先駆者である東京都における新公会計制度導入の経緯と活用状況について、東京都会計管理局の小菅課長様にお話を頂きました。東京都では平成11年に就任した石原都知事のリーダーシップのもと、他の自治体に先駆けて本格的な複式簿記・発生主義会計の導入が進められ、平成18年4月に新システムによる新公会計制度の運用を開始しました。
 東京都では企業会計に出来るだけ準拠した形での財務諸表の作成を目指すとともに、局別、事業別等の財務諸表を作成することで、説明責任の充実とともに、事業評価への活用や債権管理、財産管理の適正化など、マネジメントへの活用を進めてこられました。また導入に際しては、会計実務上の対応可能性も重視されたということで、従来の官庁会計との整合性や、職員の負担を軽減するようなインターフェイスなどにも留意されたということです。さらに、制度を導入したことによる成果として、個々の職員レベルでのコスト意識の醸成や、債権や資産の管理の重要性の認識などが進んだことなどもご紹介いただきました。
 また、「会計基準委員会」を設置し、今後も継続的に会計基準を見直していくことや、台帳などの精度向上、新公会計制度に習熟した人材の育成などに引き続き取り組んでおられることなどもご報告いただきました。
 
4. 大阪府の新公会計制度の概要と導入の状況
 大阪府からは、会計局の林参事様にお越しいただき、大阪府の新公会計制度の導入状況等についてお話を頂きました。大阪府では、これまで幾度も財政再建の取り組みを行ってきてもなお発生する財源不足への対応として、見えにくい負担の先送りを行ってきたという経緯を踏まえて、平成20年に就任した橋下前知事のもとで進められる財政構造改革において、「持続可能性の確保」と「経営の視点、マネジメントの重視」という重要な要素を担うものとして、新公会計制度の導入が進められてきたということです。
 大阪府の新公会計制度は、東京都の新公会計制度をモデルとして、東京都の全面的な協力のもと、平成23年度に試験運用開始、平成24年度から本格運用というスケジュールで導入が進められています。その中でも大阪府独自の工夫も行われており、「管理責任」と「説明責任」の両方に対応した財務諸表の作成のため、事業の「成果」と事業遂行の「権限と責任」に合致した事業単位を設定した上で、それぞれの事業単位ごとの世代間負担の状況や人件費等を含めたコストなどについて、正確な情報を提供することにより、事業・組織のマネジメント機能をより重視した、「管理会計」と「財務会計」の機能を併せ持つ財務報告制度の構築を目指されていることなどをご紹介いただきました。その他にも、新たな取り組みとして、減損会計の導入や、出納整理期間を除く財務諸表の公表なども進められているということです。
 
5. 新公会計制度の導入の意義と望まれる活用のあり方
 清水教授からは、新公会計制度の導入の意義として、まず地方自治体における「説明責任」の意味の変化についてご説明いただきました。これまでは予算・法規への準拠性が最も重視されていたのが、今や、経済性・効率性・有効性といった観点から、地方自治体の財政運営の適切性についての説明責任が重要になってきているため、従来の単式簿記だけでは対応できず、発生主義会計の導入の必要が高まってきているということです。
 次に、韓国での事例を詳しくご紹介いただきました。韓国では、政府主導による周到な準備と確固たる法的な位置づけのもと、国際公会計基準などをモデルとした新たな会計基準の導入が進められているということです。また監査の位置づけも明確化され、大統領直属の組織により、会計検査機能と行政監察機能を併せ持った監査制度が導入されていることもご紹介いただきました。
 さらに、東京都の事例をもとに、新公会計制度はマクロ=地方自治体全体レベルの財政状況の管理と、個別事業のミクロ=個別事業レベルの目標管理の双方に有効であるとのご説明がありました。前者の具体例としては、中長期的な財政運営の計画や、財政の持続可能性の分析など、後者の具体例としては、フルコスト情報による事業の効率性検証や、ストック情報を用いた施設等の活用方法の検討などが挙げられる、ということです。また、大阪府の監査委員意見においても、新公会計制度を活用した事業・施設の適切なマネジメント等が期待されていることもご紹介いただきました。
 この他、大阪府など一部の自治体で導入されている「部局長マニフェスト」などによる目標管理も、現時点では財務的な内容にはあまり言及されておらず、例えばコストの抑制など、経済性・効率性を目標に加えてアカウンタビリティを果たしていくことが望ましいことや、発生主義に基づく信頼できる財務諸表があれば、より多面的な財務指標を導くことができ、現在地方自治体で用いられている「健全化判断比率」を代替し、より発展させる新たな指標の設定も可能ではないか、というご意見も頂きました。
 
6. おわりに
 今回の研修会には90名程の会員の皆様にご出席いただき、終了後も活発にご質問をしていただくなど、盛況に終えることができました。冒頭で述べましたとおり、社会・公会計委員会では、地方自治体監査・会計制度についての理解を深めるよう研修会を続けて参りますので、今後とも皆様のご参加を宜しくお願い申し上げます。