特集

「地方自治体の会計」

北陸会 柴 義公

 
1. はじめに
 地方自治体における財務情報の開示制度および開示状況についての調査に基づき、あるべき財務情報の開示について検討した発表が行われた。
2. 地方自治体の特徴と求められる開示情報
 地方自治体の特徴として、その役割は住民サービスの提供によって住民福祉の向上に資することであり、サービス提供に必要な支出に対してそれに見合った収入額を調達するという財務構造になっているということが言える。そして、資金の調達源泉は強制的に徴収される税金であって、納税者が直接その使途を決定することができないという特徴もある。
 このため、地方自治体に求められる開示情報は、住民サービスの評価を行うことができる情報であることが重要であり、具体的には提供されたサービスとそれに要したコストおよび財源のほか、サービス提供を継続する能力や他の自治体との比較情報などが必要となる。また、税金が強制的に徴収されるものであり、一般的に税金の使途や住民サービスの内容に対して納税者の関与が低いということを考えると、地方自治体の説明責任というのは企業以上に重いものであると言うことができる。
 
3. 地方財政の状況
 今日の国と地方を合わせた債務の合計額は1,000兆円を超えており、地方自治体全体での借入金残高は平成23年度末で約200兆円と見込まれている。
 減税による減収の補填、景気対策等のための地方債の増発等により、バブル経済崩壊後に借入金残高が急増しており、平成3年度から2.9倍、130兆円の増加となっている。
 総務省のホームページでは、各地方公共団体が住民等の理解と協力を得ながら財政の健全化を推進していくために、総合的な財政情報について、一覧性をもった開示が求められている中で、一般会計等に加え企業会計などの特別会計の状況や第三セクター等の経営状況及び財政援助の状況も含め、各地方公共団体の総合的な財政状況を開示する方途の一つとして、「財政状況等一覧表」を作成・公表している。
 
4. 現状の開示情報
 総務省のホームページでは、地方財政白書にはじまり、15種類の地方公共団体の財政や決算に関するさまざまな統計資料・分析資料が公表されている。
 地方自治体の借入金が増大しているなか、平成21年4月に財政健全化法が施行され、地方公共団体の財政状況を統一的な指標で明らかにし、財政の健全化や再生が必要な場合に迅速な対応を取ろうとしているが、健全化判断比率や一時借入金の仕組みなど、疑問が残る点も少なくない。
 現在の開示情報への評価としては、
支出及びコスト面では、発生ベースのコスト情報がない
収入財源面では、形態別の収入情報はあるが借入金(地方債)による収入も税収も同じように扱われている
将来負担面では、一時借入金制度の問題がある
関連団体の情報では、資産や負債の情報がない
資産価値の側面に至っては、積立金(預金)情報のみで、動産、不動産、投資資産といった情報がまったくない
などの問題がある。
 
5. 公会計制度の整備
 総務省が中心となって、地方公共団体のバランスシートづくりが平成12年3月よりスタートしているが、平成19年6月に公表された「新地方公会計制度実務研究会報告書」では「基準モデル」と「総務省方式改訂モデル」の2つのモデルが提案されている。
 基準モデルは、財務書類の作成にあたり複式簿記を採用しており、固定資産について台帳を整備し、棚卸を行って、公正価値による評価を取り入れているが、一方の総務省方式改訂モデルは複式簿記を採用せず、従来からある決算統計資料を利用して作成しようとするものであり、固定資産の評価は建設事業費の累計をもって資産価額とする方法をとっている。
 どちらの基準で作成するかは任意であり、地方公共団体のほとんどが、より簡便な総務省方式改訂モデルを採用している。
 ちなみに、東京都はさらに詳細な独自モデルを作成している。
 
6. 今後の展望
 より望ましい情報提供ができ、比較可能であるためには、会計基準の統一化が必要であり、実務担当者を育成していくことも重要である。
 また、作成された財務情報の信頼性のためには監査制度が必要であるが、税金の無駄遣いを指摘してくれるのではないかというような期待ギャップの問題、監査人の地方自治に関する知識の問題が課題として挙げられる。
 監査の問題については自治体監査士という案も出ているらしいが、全国知事会では会計基準の統一と監査制度の導入には反対との意見であるらしく、話は進んでいないというのが現状である。
 最後に、地方自治体のアウトプットは住民サービスや社会インフラであって、そのアウトカムは住民満足ということであるため、財務情報の開示には限界があり、非貨幣情報と財務情報との組み合わせが有用であると考える。

(報告:北垣栄一)