特集

東日本大震災の開示マグニチュード
〜有価証券報告書に残された傷跡を検証する〜

兵庫会 多田 滋和

 
 自由論題の部(I)「東日本大震災の開示マグニチュード〜有価証券報告書に残された傷跡を検証する〜」では、兵庫会副会長 谷保廣氏のご挨拶にはじまり、同じく兵庫会 多田滋和氏により発表がなされました。以下、当日の主な発表内容を記載いたします。
1. テーマ選定
 3月11日の東日本大震災は、日本経済に未曽有の被害を与えた。企業の財務諸表が、「記録」と「慣習」と「判断」の総合的表現であるならば、被災した企業はその莫大な被害額をどのように「記録」したのか、際限の見極め難い惨禍の最中において現行の会計「慣行」はこれに有効に対応できたのか、経営者の「判断」はいかに適切にありえたのかを検証している。
 
2. 関係法令の震災対応
 金融商品取引法上の開示書類について、提出義務不履行の免責期限が3か月延長する制度や、震災に対応した税務上の取扱、会社法上の取扱等を震災の特別措置の概略解説がなされた。
 
3. 平成23年3月期決算会社の有価証券報告書分析
 災害損失等を計上した会社は1069社(有価証券報告書提出会社2906社。全体に占める割合37%)に上った。また、この1069社を、本店所在地別にみると東北地方以外の会社が幅広く存在しており(東北地方は32社)、直接、間接に影響を受けた会社は、かなり広範囲に及んでいるといえる。
 また、企業が災害損失等で損失計上した金額合計は2.5兆円を超え、企業への影響の大きさを物語っている(最大の計上先は、10億円の東京電力梶A以下2位 JXホールディングス梶@1億円とつづく)。 さらに、東日本大震災の発生が直接の原因となって、継続企業の前提に関する注記が新たに開示されたのは、東京電力鰍フ1社であった。
 上記、概況分析に続き、特に、影響の大きかった個社、東京電力鰍フ開示内容をより詳細に分析している。
 東京電力鰍ェ、災害損失として見積計上すべき内容のうち、原子力損害の賠償に係る費用又は損失については全く計上されていない。これは、その賠償額は原子力損害賠償紛争審査会が今後定める指針に基づき算定されるなどを理由に、現時点では、合理的に見積もることができないことによることを解説している。また、継続企業の注記および監査意見の記載方法については、見積できないとして引当計上しなかった損害賠償額は相当巨額に上るものと予想され、この未確定事項の重要性を考慮すれば、監査意見としては「意見差し控え」の結論でも良かったのではないかとの見解が示されている。
 最後に、具体的な注記等については各社によって個性が出ている点、及び東京電力鰍ノ見るように会計の限界が垣間見られる点があったとして締めくくっている。

(報告:西村 強)