報告
日本公認会計士協会近畿会・大阪弁護士会共催 シンポジウム
「公正なる会計慣行を考える」
―法ルールと会計基準の関係を探る―

日本公認会計士協会近畿会 監査会計委員会委員長 廣田 壽俊

 
1. シンポジウムの概要
開催日時:平成24年3月29日(木)14:00〜17:00
開催場所:大阪弁護士会館2階ホール
参 加 者:147名(公認会計士80名、弁護士67名)
登 壇 者:弁護士 山口利昭氏、筑波大学教授 弥永真生氏、
     関西大学教授 松本祥尚氏、近畿会会員 廣田壽俊、
     近畿会会員 渡部靖彦
テ ー マ:『公正なる会計慣行を考える』
 @基礎知識の解説
  ・公正なる会計慣行とは
  ・その法的側面
 A「公正なる会計慣行」を取り扱った判例事例
  ・長銀・日債銀事件
  ・三洋電機粉飾決算事件
  ・ビックカメラ課徴金審判事件
  ・キャッツ株価操縦事件
 Bパネルディスカッション
 
2. シンポジウム開催決定までの経緯
 近畿会監査現場再生特別委員会と大阪弁護士会が共催して平成22年10月25日に「会計不正事件判決の論点整理」とのテーマでシンポジウムを開催した。今年も大阪弁護士会との共催事業を継続して開催すべく、小川会長の一言で、常置委員会である監査会計委員会が2回目の共催事業としてシンポジウムを企画することになった。
 シンポジウムというイベントが増えたため、平成23年5月に監査会計委員会委員も追加募集した。
 
3. 準備から開催まで
 テーマを決めたのは平成23年8月。何をテーマにすべきか悩んでいて、山口利昭弁護士から助言をもらって一条の光明が差す気持ちで決めた。後から聞けば、そんなに深い考えで助言したのではなかったらしい。しかも、廣田個人としてはどちらかというと会計不正事件寄りに気持ちがあり、「公正なる会計慣行」のテーマをどのように扱うのか、また、判例というものにあまり接したこともなく、どのように処理していくのか、シンポジウムといってもどのように展開するものなのか全くビジョンがないまま、監査会計委員会の中で小委員会を編成し研究活動に突入した。
 長銀事件、日債銀事件(いずれも民事、刑事事件)、ライブドア刑事事件、キャッツ刑事事件、ビックカメラ課徴金審判事件や三洋電機粉飾決算事件に係る第三者委員会報告書を検討材料として例示された。そのうち、日債銀事件が平成23年8月末で結審したこともあり長銀・日債銀事件を商事法務から論文を探しだして、自分なりにまとめて小委員会で発表するところから始めた。
 上記の事例に触れた本を読んだり、監査法人事務所の商事法務資料版や旬刊商事法務をひっくり返し、福徳銀行・なにわ銀行有価証券報告書虚偽記載損害賠償請求事件まで範囲を広げたが、事件を個別に把握する以外に手段が見つからず、どのように俎上に乗せるか、年が明けてもいまだイメージがつかめなかった。しかし、さすがに小委員会もシンポジウム本番までに7回開催することになり、ここまで弁護士・会計士間で時間をかけて議論を重ねてくると、お互いの着眼点や発想の違いが分かり、シンポジウムで横断的に議論できる論点を見つけることが出来るようになってきた。人別・サブテーマ別にシナリオを作りはじめてから、一気にシンポジウム全体像を作り上げることができた気がする。
 
4. パネルディスカッションの内容
 討議対象にする事件を「長銀事件」「日債銀事件」「三洋電機粉飾決算事件」「ビックカメラ課徴金審判事件」「キャッツ株価操縦事件」の5つに絞った。その類似性から「長銀事件」「日債銀事件」を「長銀・日債銀事件」として一つに捉え、新ルール適用初年度という類似する状況や“慣行としての他社例”の有無という点で対象的であることから「三洋電機粉飾決算事件」をそれに対比させた。
 次に「公正妥当な企業会計の基準」よりも「公正なる会計慣行」の範囲が広いことに関連付けて、事件当時に非上場会社であった「ビックカメラ課徴金審判事件」を俎上に乗せた。ここまでで判断主体が出揃ったので、裁判所や行政、第三者委員会そして我々会計士のうちだれが「公正なる会計慣行」を判断するのか、との議論を展開させた。最後の事例として、会計処理ではなく会計事実で決着をつける法曹の傾向が端的に出た事件として、「キャッツ事件」を議論し、今後の争点として、@第三者委員会メンバーA中小企業の会計ルールBIFRS導入に対する警鐘で収束させた。
 詳細は後日作成される会議録に任せたい。
 弁士に不足はないので、上記の流れに合せてパネラーに十分に話してもらった。特に視点の高さ、例えの絶妙さから弥永真生教授の話は出色だったと思っている。
 
5. 感想
 平成24年3月29日本番が終了するまで大変だったが、本当に貴重な経験だったと思う。
 今回のシンポジウムであらためて「公正なる会計慣行」を真正面から議論し、その奥深さと広さを垣間見た気がしている。また、相対的真実性に終始する会計の世界は、妥当性よりも正当性で判断する弁護士からすると、なるべく踏み込みたくない世界であるのも今はわかる。しかし、昨今の企業不祥事への解明方法が第三者委員会形式であったり、性急にグローバルに合せようとするあまり、法曹がIFRSの原則主義を理解できない状況は、決してそれは我々公認会計士にプラスにならないと思っている。誰が「公正なる会計慣行」を判断するか、という点に関して議論する余地はまだまだあるようである。
 従って、近々、続編を企画しようと思っている次第である。