寄稿

奮闘する“企業内会計士” 第7回
「企業で働き、今思うこと」

フジ住宅株式会社 内部監査室 前田 純志

はじめに
 フジ住宅株式会社で勤務している準会員の前田と申します。企業内会計士NW小委員会に参加させていただいたご縁で、今回執筆の依頼をいただきました。この会報を読まれる方々を想定すると、若手の自分が執筆することに力不足の感は否めませんが、数年前は会計・監査とは無縁の全くの畑違いの仕事をしていた自分がこのような機会に恵まれたと考えると、これはこれで中々面白い展開だと感じ、興味が勝って引き受けさせていただきました。駄文の羅列ではありますが、お手すきの時などに目を通していただければ幸いです。
悔しさから生まれた会社
 フジ住宅株式会社は、住まいのトータルクリエイターとして、顧客満足度日本一を目指している会社です。創業は昭和48年1月で、当時の住宅業界は品質責任についての意識が非常に低く、販売後のトラブルが発生しても、なかなか無償修理を受け付けてくれませんでした。そのような時代の背景の中で不動産会社の営業マンとして働いていた創業者である現在の会長は、販売後のトラブルに対し、自分を信頼して下さったお客様へ売った者としての責任があると考え、修理費用を自らの給料から出していました。しかしながら、それが何十万円ともなれば、到底払えるはずもなく、結局は信頼を裏切ってしまうこととなり、その悔しさから、顧客満足度日本一を目指すフジ住宅が生まれました。
 顧客満足度はそう簡単に測定できるものではありませんが、創業当初より現在に至るまで愚直にその考えを貫き続け、結果として、リピート率やお客様からの紹介率は非常に高い数字をいただいております。また、おかげさまで先日の決算発表では過去最高益をたたき出す結果となりました。過去最高益そのものはもちろん非常にうれしいことですが、住宅をご購入いただいたお客様とはこれから長いお付き合いをさせていただくことになりますので、安心いただける1つの結果を出せたのではと大変喜びを感じております。

内部監査という仕事
 入社後は内部監査室の配属となり、現在も内部監査室の一員として多事多端な日々を送る中、監査役監査、公認会計士監査、そして内部監査、所謂三様監査を構成する一つとして監査に携わっております。もう少し具体的に申しますと、企業には事業活動の目標達成を阻害する要因を持つ様々なリスクがあり、例えばそれは、事業リスク、業務リスク、財務リスク、財務報告リスク、不正リスク、市場リスク、法務リスク、情報技術リスク、環境リスク、災害リスクなどが挙げられます。このようなリスクについて、企業の状況に応じ、計画や依頼に基づき内部監査人として監査を実施するのが私の現在の主たる業務です。
 試験合格者として比較的馴染みがあるのでは、とご配慮いただき、入社後の最初に担当させていただいたのは、内部統制監査の中で主に業務プロセスについての監査でした。馴染みがあったとはいえ、入社して間もない自分は会社のことについて当然無知だったわけで、さらに会社の業務プロセスとなるとそのボリュームはなかなかのものでして、規程を読んではフローチャートを眺め、ヒアリングを実施したりキーコントロールを考えたりと四苦八苦しながら業務にあたっていました。ようやく各部署を一通り回った頃には、監査をしたというよりも会社・組織を知ることで精一杯だったなぁと感じたことを憶えています。このような経験をさせてもらえたおかげで、今ではどの部署で誰がどのような仕事をしているのか、ということがある程度わかっていますし、情報はどこにあって誰に聞くと入手できるのか予想をつけることもできます。基本中の基本といえばそうでしょうが、横断的な業務をしている関係からも、A部署にあるこの手の情報はB部署のCさん辺りにこのタイミングで伝わっているべき、というようなことも見えてくるので、コンサルティング業務を実施する上でも役立っています。
 現在は、会計と離れた監査にも携わり、他の分野について勉強しつつ、監査というものの難しさと奥深さを噛み締めながら、日々の業務に勤しんでおります。
他社を知らない会計士
 企業内で会計士が働くということは、自らをどのように企業価値へと変換させているのでしょうか。現在、企業内で活躍する会計士の先輩方の成功例を目の当たりにすると、会計士は企業人として十分に機能し活躍できるのは明らかですが、その理由として、監査法人で沢山のクライアントを見た経験が生きている、という話をよく耳にします。昨今の会計士を取り巻く環境の1つとして未就職問題があり、監査法人を経験することなく企業へと就職する方が増加しています。このため、監査法人での監査経験のない、他社を知らない会計士が今後誕生してくる予定です。他社を知らないよりは知っている方がもちろん良いと思いますが、知らないことはハンディキャップであったとしても、直ちに会計士として致命的とは私は思いません。というのも、企業における稟議などの制度を考えると、日本的経営では組織内で企画等を進める場合、社内調整という能力が必要となります。いくら優れた案件であっても、社内調整を失敗してしまえば通らない、ということは企業人にはよく知る事実です。もちろん全ての企業でこのような事象が当てはまるわけではありませんが、社内調整という能力は企業で働く上では非常に重要で、企業にいるからこそ育まれる能力だと思います。試験合格後、監査法人を経験せずに企業へ就職される方は、ある意味でその手の能力を掴むチャンスに真っ先に恵まれます。
 監査法人で、或いは監査法人から転職してご活躍されている先輩に続き、自らの有する資源について一企業を選択した上で集中的に投資し続ける、そのような新しいタイプの会計士が今後世間に認知されることを願い、祈っております。もちろん、私自身もそのために到達点のない極みを目指し続けるつもりです。