寄稿

奮闘する“企業内会計士”第8回

「経営実行支援という取り組み」

西谷 剛史

ご挨拶
 この度、本リレー随筆の機会を頂戴しました西谷と申します。

 皆さまは「企業内会計士」という言葉を耳にされた時どのようなイメージをお持ちでしょうか?一般事業会社の経理部門や経営企画部門に属し、財務会計その他の専門性を活かして活躍される、そのようなイメージを持たれる方が多いのではと拝察します。
 後に詳しく述べさせて頂きますが、私は昨年小さな会社を立ち上げ、現在は顧客企業様の経営支援を手掛けさせて頂いております。従って前述のような会計士像を期待されて本稿に目を通された方には、これから述べる内容には期待外れな点もあるかも知れません。このような事例もあるということで、多少なりとも興味をお持ちになり、お目通し頂けますと幸いです。

自己紹介
 私は1999年に当時の試験制度における公認会計士二次試験に合格し、朝日監査法人(現・有限責任あずさ監査法人)の東京事務所に入所し、以後7年間に渡り法定監査、任意監査を中心に製造業から金融機関、国内系から外資系に至る迄、幅広いクライアントにおいて経験を積ませて頂きました。その後、会計士協会における国際会計人養成基金制度(川島基金)のご支援を頂き、米国の経営大学院(MBA)に2年間留学しました。またその途中で欧州(フィンランド)の大学院にも交換留学で学ばせて頂きました。
 2008年夏に卒業、帰国し、株式会社経営共創基盤に入社致しました。この会社は、カネボウ、ダイエー等の再生を手がけた産業再生機構の中核メンバーが2007年に立ち上げた会社であり、様々な段階・規模の企業に対し、企業活動全般における経営の実行支援を行っております。入社から約3年間に渡り、多種多様な企業に対して、事業戦略及び財務戦略の立案、中期経営計画策定支援、財務デューデリジェンス、金融機関交渉支援、新規資金調達支援、資金繰り管理支援等の業務に従事して参りました。
 その後、昨年(2011年春)に故郷の関西に戻り、同社の同僚と現在の活動基盤であるプライムムーバーという会社を設立いたしました。現在は大阪と東京の二拠点体制で活動を行っております。
現在の活動について
 弊社プライムムーバーは、中小・中堅規模の会社様を中心に「経営の実行支援」を主たるサービスとして提供しております。経営者の皆さまが、これまでやりたくてもできなかった経営課題の解決を、単なるアドバイスに止まらず、経営者や現場社員の方々を巻き込んで進める「協働スタイル」で行う点を特色としております。より具体的には、クライアント企業の例えば経営企画部、財務部との一員としての名刺を受領し、会社組織の中に入り、従業員の方々と連携をとって物事を進め、他方、対外的にも会社を代表して折衝を行うなど、現場で共に汗を流し経営における各種課題に取り組むというスタイルで物事を進めています。
監査業務との比較
 例えば監査の目的は、法定監査や任意監査等で判断の拠り所となる基準、法令等は異なりますが、基本的には何らかの基準への準拠性を確認する、という点では共通しています。この大目的に対して、大手の監査法人においては、監査意見形成のプロセスが監査手続、審査体制として組織的に整備されており、組織のメンバーがそれぞれの役割を完遂することで、目的の達成が図られるように設計されています。
 しかし、現在のように個々の会社の幅広い経営上の課題に向き合う際に、会社の置かれている状況、経営者の方々の資質は千差万別であり、会社の数だけ異なる課題が存在し、目指すべきゴールも当然異なっています。また、経営者の方においても「なんとなく伸び悩んでいる」「なんとなく困っている」といった漠然とした問題意識はあるものの、具体的には何が課題なのか、また複数の課題の優先順位づけができていないことも数多くあります。
 このように、当事者が明瞭に整理も言語化もできていない課題に対して、先ず「要は取り組むべき課題は何なのか」を短時間で把握し、到達すべきゴールを定め、そこに対する解を想定し、限られた期間とリソースの中で優先順位の高いものから順次実行していくこととなります。上記は理想的な初期診断の流れを述べていますが、必ずしも上手く行かないことも多く、難解な課題に直面し、その都度自分の能力不足に直面することが日常的です。また、小規模な会社ですので、常に顧客企業の皆さまのお力を活用しつつ、他の専門家の方々のお知恵もお借りして、課題に取り組むこととなります。そのような力を集積し、ある程度の成果に結びついた際には大きな喜びを感じます。
 もちろん会計士という立場から、財務会計面での課題について助力を求められることも多いのですが、新規事業立ち上げのお手伝い、金融機関との折衝、新製品の販路構築等、これまで取り組んだ課題は多岐に渡っております。まだまだ至らない点は多いのですが、自身もお客様とともに成長できるよう、今後も研鑽に努めて参りたいと思います。
終わりに
 私が二次試験に合格した頃は、合格者の殆どはその進路を監査法人に定めていたと記憶しています。その頃から既に13年が経過し、会計士の進路は多様化し、企業内会計士の存在感も徐々に高まって来ています。私の前職の経営共創基盤においても、会計士資格取得者が多く在籍しており、その財務会計の専門性を活かして活躍していました。
 須らく仕事というものはその成果を測定する必要があり、測定のためにはパフォーマンスが定量化されている必要があります。そして企業のパフォーマンスを示す代表的なアウトプットが財務諸表です。その財務諸表に関連して、専門知識を有する会計士資格保持者の活躍するフィールドは今後もますます広がりを見せて行くものと思われます。私自身もそのような活躍の場の拡大に微力ながら一臂のお力添えをできればと感じております。この長文にお目通し頂いた方(特に若手の方)の、ほんの少しでも何らかのご参考になれば望外の喜びです。
 最後まで拙文にお付き合い頂き、末筆ながら御礼を申し上げるとともに、皆様のご多幸を祈念致します。